【徹底解説】2020年の情報サービス業界|売上高・年収ランキングや業界の将来性を解説

情報サービス業界はおもにソフトウェア開発・情報処理・各種専門情報を発信する企業が属する業界です。この記事では情報サービス業界の基本情報・売上ランキング・職種・同業界で働くメリットやデメリットについて紹介します。非常に人気が高まっている業界なので、就職・転職を考えている方は、ぜひご一読下さい。

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この記事の監修者

キャリアカウンセラー|秋田 拓也

厚生労働省のキャリア形成事業にキャリアコンサルタントとして参画。
大手警備会社にて人事採用担当として7年間従事の後、現職にて延べ200名以上の企業内労働者へキャリアコンサルティングを実施。

■所持資格
国家資格キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)

情報サービス業界の基本情報

情報サービス業界は他業界に比べて年収が高く、世界的にも需要が高まっていることから、学生の就職活動や社会人の転職先としても人気業界の1つとなっています。

そんな情報サービス業界について、公的に発表される資料から業界の分類を押さえておきましょう。

目次

情報サービス業界は情報通信業界の一分類

「情報サービス業」と聞くとピンとこない方もいらっしゃるかも知れません。総務省が公表する日本標準産業分類の記載によると、情報通信業界に含まれる業界であり、情報サービス業の定義は下記のように書かれています。

この中分類には,受託開発ソフトウェア,組込みソフトウェア,パッケージソフトウェア,ゲームソフトウェアの作成及びその作成に関して,調査,分析,助言などを行う事業所,情報の処理,提供などのサービスを行う事業所が分類される。

参考:総務省「日本標準産業分類」

つまり、各種ソフトウェア開発や、開発にあたって必要な調査・分析を行ったり、情報処理・情報提供を行う企業をまとめた業界ということです。

具体的な企業のイメージとしては、マイクロソフト・オラクル・DeNA・マクロミル・富士通・NECのような企業が当てはまります。

情報サービス業界はさらに細かく分類される

総務省の日本標準産業分類では、情報通信業が「大分類」、情報サービス業が「中分類」とされており、情報サービス業は更に下記の4つの小分類に分けられます。

  • ソフトウェア業
  • 情報処理サービス業界
  • 情報提供サービス業界
  • その他の情報処理・提供サービス業

ここでは、上記のうちのソフトウェア業・情報処理サービス業界・情報提供サービス業界について、具体的な業界の特徴を紹介します。

ソフトウェア業界

小分類の1つ目の業界はソフトウェア業界です。総務省の経済構造実態調査実施事務局の記載によると、当業界の概要と、当てはまる業態は下記のように記載されています。

電子計算機等のプログラム,ソフトウェアの作成及びその作成に関して,調査,分析,助言などを行う事業(システムインテグレーションを含む)

参考:総務省「経済構造実態調査実施事務局」

  • 受託開発ソフトウェア業
  • 組込みソフトウェア業
  • パッケージソフトウェア業
  • ゲーム用ソフトウェア作成業

つまり、事業用やゲームの「ソフトウェアの開発」や、これに付随して必要な調査・分析・助言(コンサルティングなど)を行っている企業が該当する業界ということです。

また、ゲームについてはコンテンツを読み込ませるディスクや、遊ぶためのハードの開発を行う企業は該当しないとされています。

情報処理サービス業界

2つ目の業界は、情報処理サービスです。こちらも、総務省の経済構造実態調査実施事務局の記載によると、業界の概要と当てはまる業態は下記のように記載されています。

電子計算機などを用いて委託された情報処理サービス(顧客が自ら運転する場合を含む),データエントリーサービスなどを行う事業。

参考:総務省「経済構造実態調査実施事務局」

  • 受託計算サービス業
  • 計算センター
  • タイムシェアリングサービス業
  • データエントリー業
  • パンチサービス業

つまり、コンピューターを使って依頼を受けた情報処理を行ったり、複数の端末から同時にアクセスできるコンピューターなどを使って、情報をコンピューターに登録したり、処理する業務を行う企業が属する業界ということです。

情報提供サービス業界

3つ目の業界は、情報提供サービス業です。こちらも、総務省の経済構造実態調査実施事務局の記載を見ると、業界の概要と当てはまる業態は下記のように記載されています。

各種のデータを収集,加工,蓄積し,情報として提供する事業

参考:総務省「経済構造実態調査実施事務局」

具体的な業務内容としては「データベースサービス業」とされ、下記のような情報を提供する事業社が当業界に該当するとしています。

  • 不動産情報
  • 交通運輸情報
  • 気象情報
  • 科学技術情報

上記の他でも、様々な情報を収集・加工などをして顧客に対して発信する業務を行う企業が該当する業界です。ただし、世論調査などの公的期間の調査・ニュースの提供・興信所・観光案内は該当しないとされています。 

情報サービス業界の国内シェアTop3

情報サービス業界のシェアについて、公的機関などで公表されているデータはありません。

しかし、総務省・経済産業省の「平成29年情報通信業基本調査」に記載されている市場規模と、売上上位3社の売上から判断すると、2017年時点で売上トップ3社のシェアは、以下のようになります。

参考:総務省・経済産業省の「平成29年情報通信業基本調査」、各社の財務情報(NEC、富士通、日立製作所)

トップの富士通が17.4%で、2位の日立製作所に対して6.1ポイントの差をつけています。3社のシェアを合計すると37.7%となるので、上記の3社が市場の大部分を締めていることが分かります。

情報サービス業界の市場規模

総務省の平成30年度版情報通信白書の記載によると、情報サービス業の市場規模は下記のようになっています。

参考:総務省「平成30年度版情報通信白書」第2部基本データと政策動向

上記のデータは2015年から2016年にかけての情報サービス業の各業界の売上規模の推移ですが、この期間においては業界全体で3.1%売上規模が縮小しています。

しかし、上記の表に記載していない、「企業数」については、3,494社から3,501社に0.2%とわずかながら増加しています。

情報サービス業界のビジネスモデル

与信管理支援を行い東証2部にも上場している株式会社リスクモンスターが発表する、業界レポート情報サービス業(2項)の情報を基にすると、情報サービス業は大手SIerやそこから発注を受けて業務を行う下請け・2次下請け業界とされています。

業務の発注主として顧客企業や官公庁などが存在し、富士通・NECなどの大手SIer企業に発注が行われ、その下請け企業として情報サービス業界の企業が業務を受注、更にそこで抱えきれない業務を2次下請け企業が受注するモデルになっています。

情報サービス業界の概況

次は、情報サービス業界の概況について紹介します。

情報サービス業の歴史・2018〜2019年あたりの同業界の動向・今後の将来性などについて紹介します。

情報サービス業界の歴史

日本における情報サービス産業は、1960年代に登場した計算センターに始まり、個人が所有できないコンピューターで大規模な計算サービスを提供していました。

しかし1983年にソフトウェア開発が情報産業の主流となり、その後コンピューターとネットワークの連携によって、企業間の情報交換が可能となります。

さらに、顧客として計算センターを利用していた企業が、情報処理部門を分社化したことで「ユーザー系」と呼ばれる情報企業が誕生。さらに1990年代になるとSIerの誕生や2013年頃からはクラウド技術や情報セキュリティ企業が隆盛しています。

情報サービス業界の動向

経済産業省が公表する情報サービス業の動向というレポートによると、2018年末までは安定的な発注件数から業界全体の売上高は上昇していたものの、19年以降は伸び悩んでいます。

また、ソフトウェアの発注元業界を見ると、2019年にはそれまでソフトウェア需要が最も大きかった製造業の割合が、およそ24%水準から22.1%に減少しました。その一方で、2018年に17〜18%だった金融・保険業界の割合が21.1%に上昇しています。

しかし、非製造業全体のソフトウェア需要が減少している傾向から、2020年以降も需要は減少し続けると見込まれています。

情報サービス業界の将来性

情報サービス業の今後については、世界的に見て需要は高まるものの、日本国内で見ると足元(2020年)では需要が伸び悩み、エンジニア不足や労働環境の改善が急がれると考えられます。

2020年の業界動向については先述の内容と、平成28年に経済産業省が発表したニュースリリースでは、2020年には36.9万人、2030年には78.9万人のエンジニアが情報システム部門で不足すると言われています。

2020年|情報サービス業界の売上高ランキング

日系の上場企業各社について、2019年第3四半期のIT業界各社の有価証券報告書の記載を元に判断すると、売上高ランキングは下記のようになります。

参考:各社の財務情報(富士通、NTTデータ、日立製作所、NEC、大塚商会、野村総合研究所、伊藤忠テクノソリューションズ、TIS、SCSK、日本ユニシス)

富士通・日立製作所については、2019年度の情報サービス関連部門の四半期売上情報が無いため、2018年の情報を参考にしていますが、売上ランキングはNEC・富士通・日立製作所の3社がトップ3となっています。

ここではこの3社について各社の基本情報と企業の特徴を紹介します。

①NEC

NECは、現在の東大工学部の全身である工部大学校電信科を卒業した岩垂邦彦氏が創業した企業で、元は電子機器メーカーとしてラジオ放送機や国産のテレビ開発を行っていました。

ここでは、そんなNECの基本情報と企業の特徴を紹介します。

基本データ

NECの公式HPおよび最新の有価証券報告書を参考に作成した基本データが以下です。

参考:NECの有価証券報告書

NECの正式名称は日本電気株式会社で、創業1899年で2020年で121年目を迎える大企業です。

売上高は2.9兆円、従業員も2万人を超える規模で、日本を代表する大企業の1つとなっています。

特徴

NECはシステムインテグレーション・クラウドサービスの提供を行っており、対象業界も官公庁・製造業・サービス・金融・社会インフラなど多岐にわたります。

また海外企業や海外進出している企業にも、生体認証・ネットワークインフラ・蓄電システムの提供などを行っています。

事業の中では、人が抱える課題を自動的に検出・ソリューションの提示を行うコンピューティング技術を用いて、社会に不可欠なインフラシステムの開発を行う「社会ソリューション事業」に注力しています。

②富士通

富士通は、創業当初は交換機や電話機の開発を行い、戦後は電電公社の通信機器開発や日本初のデータ通信システムやスーパーコンピューターの開発を実現した会社です。

ここでは、そんな富士通の基本データと企業の特徴を紹介します。

基本データ

富士通の公式HPおよび最新の有価証券報告書を参考に作成した基本データが以下です。

参考:富士通の有価証券報告書

富士通は2020年で創業から85年を迎える老舗の企業で、情報サービス業の他にパソコンや半導体パッケージ・電池などの電子部品の販売も行っています。

また、米・英・オーストラリア・シンガポールなどにも拠点を持つ、グローバル企業でもあります。

特徴

富士通では2015年度から開始した「連結営業利益率10%以上」という目標を達成するために、下記の3つのポイントに焦点を絞った経営をしています。

  • 国内シェア拡大
  • グローバルパートナーとの連携や人材育成
  • グローバルな営業戦略実行に向けた組織再編

これらの実現のために、事業部門の集約と、欧州・中近東・インド・アフリカにおける製造業部門の廃止と販売機能への経営資源集中を行い、全社的な経営基盤の強化を行っています。

③日立製作所

日立製作所は日立鉱山にある鉱業会社の設備の修理会社として発足し、戦後には発電用のタービンポンプ・電気機関車・東海道新幹線の車両などの開発に携わり、現在は指紋認証やAIの開発なども行っています。

ここでは、その日立製作所の基本データと企業の特徴を紹介します。

基本データ

日立製作所の公式HPおよび最新の有価証券報告書を参考に作成した基本データが以下です。

参考:日立製作所の有価証券報告書

日立製作所も2020年で創業110年を迎える長寿企業であり、売上高は9.4兆円で従業員数も3.3万人で大企業として一般的にも知られる企業です

特徴

日立製作所は、ここまでに紹介した2社と比較して特に「持続可能な社会」の実現を重視しており、下記の3点を意識した事業を行っています。

  • 社会課題の解決
  • 温室効果ガス削減など
  • 業績向上など

これらの「社会イノベーション事業」への経営資源の集中のために、傘下の子会社株式の整理を行い、ビジネスモデルの変革を行っています。

更に海外主力事業の強化のため、台湾・サウジアラビア・イタリアなどの鉄道システム事業、インドの銀行と共同で会社を設立し電子決済サービス基盤の構築を行っています。 

2020年|情報サービス業界の年収ランキング

情報サービス業界各社の有価証券報告書などの記載を見ると、情報サービス業界の平均年収ランキングは以下のようになります。

参考:各社の有価証券報告書(野村総合研究所、三菱総合研究所、SRAホールディングス、電通国際情報サービス、大塚商会)

平均年収トップは野村総合研究所で1,222万円です。5位の大塚商会は807万円なので、415万円もの年収の差がついています。

ただし、どの企業も年収800万円以上であり、国税庁の平成30年分民間給与実態統計調査結果で発表されている平均年収の約441万円を大きく上回っています。

情報サービス業界の仕事内容・職種

次に、情報サービス業界の仕事内容や職種について紹介します。

主な職種としては、サービスやソフトウェアの開発を行うSE(エンジニア)と、その販売や取引先の課題の把握と開発業務のディレクションや管理を行う営業職の2つがあります。

職種①|SE(システムエンジニア)

情報サービス業界の1つ目の職種は、SE(システムエンジニア)です。

SEは販売用のパッケージソフトウェア、営業職がヒアリングした内容を元に取引祭のニーズに合ったソフトやシステム、電子機器内に搭載するシステム(組込みシステム)などの開発業務を行う仕事です。

下記の記事では、SEの具体的な仕事内容や、激務と言われる理由・SEに向いている人・SEとして働くことの魅力について紹介していますので、SEへの転職や就職を考えている方は、ぜひご一読下さい。

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職種②|営業・セールスエンジニア

情報サービス業界の2つ目の業種は、営業やセールスエンジニアです。

この業種はSEのように開発業務を行う一方で、クライアントのもとに向かって抱えている課題のヒアリングや、自社で販売しているパッケージソフトの提案やオーダーメイドシステム作成の提案を主に行う仕事です。 

情報サービス業界で働くメリット・デメリット

次は、情報サービス業界で働くことのメリット・デメリットを紹介します。

前の見出しで少し振れた通り、情報サービス業界はエンジニアによる開発業務が多く、この職種はクライアントからの要求や納期直前になると長時間労働・休日出勤が必要になることもあります。

ただその反面、直接的にクライアントの役に立つサービスの開発ができるという魅力もあります。

メリット

まずは情報サービス業界で働くメリットを2つ紹介します。

情報サービス業界で働くメリットは携わる仕事内容と給与面です。それぞれについて具体的に紹介します。

①大企業が多く大きなプロジェクトにも参加できる可能性がある

1つ目のメリットは、大企業が多く大きなプロジェクトに参加できる可能性があることです。

売上や平均年収ランキングでも紹介した通り、野村・三菱・伊藤忠・NTTなど、多くの大企業が携わる業界のため、こうした企業に就職できれば、ナショナルクライアントの仕事に関わる可能性もあります。

その分責任が大きな仕事になりますが、プロジェクトを完了した時には、中小企業では味わえない達成感を感じられます。

②他業界と比較して高収入な傾向

2つ目のメリットは、他業界と比較して高収入な傾向があることです。

先述した通り、日本の平均年収は441万円ですが、国税庁の民間給与実態統計調査のデータによれば、情報サービス業界を含む情報通信業界のの平均年収は567.3万円です。

なので、一般的な年収水準よりも126万円近く高い収入を得られる可能性があります。

デメリット

一方で、情報サービス業界で働くことには長時間労働・休日出勤・技術革新スピードの速さというデメリットがあります。

それぞれについて見てみましょう。

①長時間労働・休日出勤が多い傾向

1つ目のデメリットは、長時間労働・休日出勤が多い傾向があることです。

ソフトウェア開発を行うエンジニアでも、クライアントとの打ち合わせ業務が発生する営業職でも、顧客ありきの仕事です。なので、先方の要望を満たすサービスを納期までに確実に完成させる必要があります。

ソフトウェア開発では、完成後に動作確認を行います。その時点で異常が発覚すれば、原因究明と修正を行う必要があり、納期ギリギリではこうした作業から残業が長くなったり、休日出勤を余儀なくされることがあります。

②技術の移り変わりが速く継続的なインプットが必要

また、エンジニアが扱うプログラミング言語や開発したソフトを組み込むハード等は、常に最新の技術が開発されます。

もちろん取引先はより強固な経営基盤構築のために、最新の技術を使ったソフトウェアの購入や自前のソフトウェア開発を求めてくるので、その要求にキャッチアップするために、常に知識と技術のアップデートが必要です。

なので、1つの能力で長期的に稼ぎたい方にとっては向いていない仕事と言えます。

情報サービス業は就活生に人気の業界

下記の記事ではIT業界の分類や、業界別・企業単位で就職人気ランキングを紹介しています。人気な理由や人気企業の特徴も紹介していますので、情報サービス業への就職を考える方は、ぜひご一読下さい。

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まとめ

この記事では、情報サービス業界の基本情報・売上ランキング・同業界で就業できる職種や業務内容などについて紹介しました。

世界的にはIT業への需要が高まり続けることが見込まれる情報サービス業界ですが、その一方で人材不足・就業環境改善といった課題を抱えている現実もあります。

仕事では最先端の技術に触れる機会もあるので、刺激的な経験を積むことができ収入も平均以上を獲得できる可能性は高いです。ただし、就職先として考える場合は当記事でお伝えした内容を総合的に考えてからエントリーしましょう。

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