求人詐欺の相談は年間1万件弱!?見分け方や法律の基準も紹介します!

近年は転職だけでなく、新卒採用でも求人詐欺の問い合わせが増えているようです。応募前に求人票をいくらチェックしても、求人詐欺をしている会社かどうかを見極めるのは難しいでしょう。そこで今回は、求人詐欺とは何か、どんな種類があるのか、被害に巻き込まれた時の相談窓口について解説します。

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この記事の監修者

キャリアカウンセラー|秋田 拓也

厚生労働省のキャリア形成事業にキャリアコンサルタントとして参画。
大手警備会社にて人事採用担当として7年間従事の後、現職にて延べ200名以上の企業内労働者へキャリアコンサルティングを実施。

■所持資格
国家資格キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)

求人詐欺とは

求人詐欺は、入社してから求人票や求人広告と実際の雇用条件が違うというものです。よく見られる求人詐欺のタイプには、以下の3つがあります。

  • おとり広告/応募者を集めるため、実際にない労働条件を広告に掲載する
  • 求人条件の不実行/求人に出した労働条件の一部は存在するものの、固定残業代といった詳細が記載されておらず応募者の誤解を招く
  • 労働条件の切り下げ/求人に出した労働条件は実在するものの、面接などで広告に掲載した条件を切り下げてから、労働契約を締結する

雇用契約書をきちんと確認して署名・捺印しないと、試用期間が終了してから求人詐欺に気がつく可能性があるので注意が必要です。

目次

求人詐欺の相談件数は非常に多い

厚生労働省が発表した「平成28年度ハローワークにおける求人票の記載内容と実際の労働条件の相違に係る申出等の件数」によると、求人詐欺の申し出は9,299件、苦情も含めると10,937件も寄せられています。その内容は、以下の通りです。

  • 賃金に関すること
  • 就業時間に関すること
  • 職種・仕事内容に関すること
  • 選考方法・応募書類に関すること
  • 休日に関すること
  • 雇用形態に関すること
  • 社会保険・労働保険に関すること

寄せられた申し出の39%である3,608件が「求人票の内容が実際と異なる」、25%である2,335件が「求人者の説明不足」でした。この数値を見る限り、企業が意図的に求人詐欺を行っているように感じられます。

2018年の法改正で罰則が強化された

2018年1月1日より、「改正職業安定法」が施行されました。これにより労働者の募集・求人における労働条件の明示義務に、以下の内容が加えられています。

  • 求人企業等の氏名または名称
  • 試用期間(試用期間の有無、試用期間の定めがある場合はその期間、業務内容)
  • 派遣労働者として雇用する場合は、その旨

さらに固定残業代制もしくは裁量労働制を採用している企業は、以下を明記しなければなりません。

  • 基本給の額
  • 固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法
  • 固定残業時間数を超える場合の時間外労働、休日労働及び深夜労働に対して割増賃金を追加で払う旨

これに違反した企業は、6ヶ月以上の懲役または30万円以下の罰金といった刑事罰が科されます。このように、罰則が強化されました。

よくある求人詐欺の事例

求人詐欺の申し出で多い内容については、前述しました。しかし具体的な事例がわからなければ、対処のしようがありません。

ここでは、よくある求人詐欺の事例をいくつか紹介します。

給与に関する求人詐欺

ハローワークに寄せられる求人詐欺の申し出の中でも、給与に関するものは多いです。以下のような具体例があります。

  • 基本給を固定残業代を含んで書くことで、実際より高く見せる
  • ボーナス込みの年収を提示するが、実際には支払われない
  • 営業手当や地域手当を支給するが、その金額を超える残業を強いる
  • 幹部候補生として採用することで管理職扱いし、残業代を支払わない

固定残業代とは、一定の時間分をあらかじめ給与として支払うもので、「みなし残業」といわれることもあります。この場合、想定された残業時間を超えても残業代を支払わない企業も多いようです。

新卒あるいは中途採用の説明会や面接時には、採用担当者は自社に都合のよいことを中心に話すのが現実です。求人広告で労働条件がよい会社には注意が必要だと、このコメントが警告してくれています。

雇用形態に関する求人詐欺

悪質なものの一つに、雇用形態に関する求人詐欺があります。具体的には、以下の通りです。

  • 試用期間はアルバイトまたは契約社員として有期雇用され、期間を過ぎると契約満了となる
  • 実は正社員ではなく、契約社員としての採用だった
  • 正社員としてではなく業務委託先としての契約となり、社会保険料を負担しない

こうした求人詐欺は、安定して働ける仕事を探している労働者の心理を悪用しているといっても過言ではないでしょう。

労働時間に関する求人詐欺

求人票や求人広告に労働時間の記載がありますが、これが実情と違うという求人詐欺も多いようです。具体例には、以下のものがあります。

  • 求人広告には残業なしと記載してあったのに、実際には毎日残業がある
  • 年間休日が110日と記載されていたにも関わらず、70日しかない
  • 掃除や朝礼を理由に就業時間30分前に出社させて、その分の手当を支給しない

他にも繁忙期に残業手当を支給することなく長時間働かせたり、有給休暇をとりにくくされるという手口もみられるようです。

休憩時間が長いあるいは回数が多ければ、労働時間が長くてもかまわないと考える労働者もいます。しかし実際には休憩をとるのが難しく、手当なしで残業しているのと変わらないこともあるとわかるコメントです。

業務内容に関する求人詐欺

労働者は採用選考に応募するにあたり、職種を選んでいるものです。それを理解したうえで行われる、業務内容に関する求人詐欺には以下のものがあります。

  • 求人票には事務職と書かれていたのに、営業職として配属された
  • 求人票にあった場所とは違う勤務地に配属された

入社してすぐであれば気づきやすいですが、ある程度勤続が長くなってから、意図的に配置転換や転勤を言い渡す会社もあるので注意が必要です。

求人詐欺として警戒すべきフレーズ

残念ながら、求人詐欺は誰でも引っかかる可能性があります。そのため、求人詐欺にありがちなフレーズを覚えておき、応募しないようにするのがおすすめです。具体例には、以下のものがあります。

  • アットホームな職場です
  • 仕事とプライベートを両立できます
  • 20代の若手社員が活躍しています
  • 未経験者でも大歓迎です

このような聞こえのよいフレーズが書かれている場合、募集時には知られたくない事情があることが予想されます。

職場の人間関係で悩みたくない就活生の中には、アットホームな職場に憧れる人がいるかもしれません。それが求人票に書かれていた場合の危険性について、以下の記事で詳しく紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。

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求人詐欺の見分け方

求人票や求人広告の表現までチェックしたとしても、絶対に求人詐欺にかからないとはいいきれません。しかし、そうした被害にあわないためにできることはあります。

ここでは求人詐欺を見分けるための方法を、いくつか紹介します。

①離職率・勤続年数をネットで調べる

まずインターネットを使って、応募を検討している企業の離職率や社員の平均勤続年数を調べてみましょう。離職率が高い、平均勤続年数が短い、社員の平均年齢が低い場合は、注意が必要です。

転職の口コミサイトやTwitterなどのSNSで検索するのもおすすめです。在職者の本音などは参考になります。

②転職エージェントに確認する

就活エージェントや転職エージェントを活用している場合は、直接確認してみることをおすすめします。エージェントなら社風や実際の勤務状況に関して、何らかの情報を持っていることが多いからです。

そこで芳しくない話を聞いた場合は、応募を見送る方がよいかもしれません。

③事前に現場社員と会って実態を確認する

知人・友人の紹介あるいは同じ大学のOBが在職している会社の場合は、応募を決める前に現場社員と会い、仕事の実態を確認してみましょう。

会社訪問の一環として時間をとってもらえば、求人票には書かれていない実情を知るチャンスになるはずです。

④面接時に社内の雰囲気を確認する

面接で応募企業を訪れた際に、自分の目で社内の雰囲気を確認するのは鉄則です。社内や社員の様子を観察することで、求人詐欺を見抜ける可能性があります。

会社の掃除が行き届いていなかったり、社員が疲れた顔をしたりしている企業は要注意です。

⑤労働条件通知書・就業規則をチェックする

内定が出ると、労働条件通知著が届くのが一般的です。その内容を細かくチェックしましょう。「基本給」「賃金の計算方法」「始業・終業時間」「仕事の内容」などです。

固定残業制・裁量労働制の場合は、みなし時間を必ず確認してください。また、手当の有無も要チェックです。就業規則でも、同じ内容が確認できるので、必ず目を通しましょう。

労働基準法に関する法律を確認する

日本では1947年から「労働基準法」が施行されています。そして「労働契約」「賃金」「労働時間、休息、休日及び年次有給休暇」などに関する法律があります。求人詐欺が疑われたら、労働基準法に準じているかを確認するのがセオリーです。

ここでは、労働基準法の中でも確認すべき事項について紹介します。

労働時間に関する法律を確認する

労働基準法では、労働時間や休日について法律を設けています。労働基準法では労働時間や休日について規定を設けていますが、変形労働時間制の場合は法律違反にならないこともあります。

年間休日が70日あるいは連続勤務が続くことが法律違反かどうかについて、以下の記事でわかりやすくまとめてあります。ぜひ一読してみてください。

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給与に関する法律を確認する

求人票や求人広告に「昇給年1回」と記載されていたにも関わらず、実際には昇給されないケースは珍しくありません。その際には、給与に関する法律を確認するのが先決でしょう。

しかし昇給がなかったからといって、求人詐欺と言い切るのは早計です。以下の記事では企業で昇給がないケースについて具体的に紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

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求人詐欺に遭った場合の対応

応募前に細心の注意を払ってチェックしたつもりでも、入社後に求人詐欺にあったことに気づく人は後を絶ちません。しかしそこで泣き寝入りするのではなく、すぐに行動を起こすべきです。

ここでは、求人詐欺に遭った場合の対応方法について説明します。

すぐに辞めて転職活動をする

試用期間中に求人詐欺だと気づいたなら、すぐにやめて転職活動を行うことをおすすめします。求人詐欺を行うような会社は、正当な手続きで退職しようとしても、妨害されるケースが少なくありません。

そんな時には、「退職代行サービスEXIT」に依頼するのもおすすめです。責任を持って退職手続きの交渉や代行を行ってくれます。

証拠書類を保管しておく

ハローワークに求人詐欺を申し出でる場合には、求人票や求人広告と実際の労働条件が異なることを証明しなければなりません。そのため、自分が見た求人票や求人広告の資料は、保管しておくことをおすすめします。

また雇用契約書は会社と労働者が1部ずつ保管するのが義務なので、必ずもらって手元に置いておきましょう。

相談窓口に相談する

もし自分が求人詐欺にあったと思ったら、まずは専門家に相談することをおすすめします。それにより、具体的な対応策を知ることができるはずです。主な曹参窓口は、以下の通りです。

  • ハローワーク求人ホットライン
  • 日本労働弁護団ホットライン
  • 都道府県労働局 需給調整事業関係業務担当窓口
  • NPO法人POSSE
  • 総合サポートユニオン
  • ブラック企業被害対策弁護団

各団体の問い合わせ先は、以下の通りです。

弁護士をたてて訴えることもできる

求人票や求人広告と実際の労働条件が異なり、会社側と話し合っても埒が明かない場合は、労働者個人が弁護士をたてて訴えることも可能です。

残業代の未払いや不当な給与天引き、長時間労働などといった問題があるなら、まず弁護士に相談してみましょう。

まとめ

今回は、求人詐欺とは何か、その手口や対処方法について解説しました。求人詐欺を行う会社は、「希望の業界や職種に就職できるなら、多少の我慢は仕方がない」という弱みにつけこむブラック企業です。努力しても労働条件が改善されない可能性が高いと考えられます。引っかからないように注意しつつ、被害にあった時には迅速に行動することをおすすめします。

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