近年は新卒の就職が売り手市場ですが、所属する学部によって就職率が変わるといわれています。文系の中で文学部は就職に不利というイメージがあります。しかし、実際は文学部は就職に弱いわけではありません。今回は文学部が就職に有利理由のほか、初任給の目安、就活に役立つ資格などについて解説します。
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この記事の監修者
キャリアカウンセラー|秋田 拓也
厚生労働省のキャリア形成事業にキャリアコンサルタントとして参画。
大手警備会社にて人事採用担当として7年間従事の後、現職にて延べ200名以上の企業内労働者へキャリアコンサルティングを実施。
■所持資格
国家資格キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
文学部が就職に有利な理由
かつては文系の中でも、文学部は就職に不利だといわれていました。経済学部や経営学部のように職業に直結する知識を学ぶことがなく、出版など特定の業界でしか専門性を生かせないことがその理由だったようです。
しかし早稲田や慶應、上智、marchの文学部出身者が、特別に就職率が悪いという事実はありません。ここでは文学部が就職に有利な理由について、説明します。
理由①|採用選考に出身学部は関係ない
理系出身者が応募する技術職でない限り、新卒採用の選考で出身学部が影響することはほとんどありません。そして文学部に進学した時点で、国家資格が必要な仕事に就くことも想定していないはずです。
文学部で学んだことが仕事で生かせないとしても、学生生活の中で打ち込み得たスキルや経験を自己アピールにつなげることができます。サークル活動や海外留学、アルバイト、資格取得など、自分を成長させるための努力をしておきましょう。
理由②|文学部で学べる学問は幅広い
文学部はどうしても文学や史学、哲学ばかりを学んでいるイメージがありますが、実際はもっと多彩な学問領域を扱っています。
例えば慶應義塾大学の文学部には、以下のような17個の専攻があります。
大学によりますが、教育学、社会学など社会科学系のコースも文学部内に設置されていることが多いです。また、心理学や情報学などデータや数値を重視する自然科学系等の学問も学ぶことができます。
一概に「文学」部だとひとまとめに考えてはいけません。
文学部は他学部よりも柔軟に他の学問と接触することができ、様々な知見を得ることができます。大学で多様な領域に触れることができる文学部で過ごすことは、多角的な視野を持った人材になることにもつながります。
理由③|深い教養を獲得し思考の柔軟性を強調できる
文学部で学ぶ学問は教養的で実際の社会には使えないと批判されます。しかし、教養を持つことは武器です。これからの時代は、与えられた業務をきちんとやることが評価されるのではなく、自ら思考し、多様性を受け入れイノベーションを起こせることが重視されます。
深い教養があれば、常識にとらわれず、物事を関連付けて考える習慣をつけられます。そうした思考の柔軟性を自分の武器にすることで、ライバルとの差別化がはかれるはずです。
文学部の就職先は幅広い
文学部の就活生は、幅広い分野に応募することが可能です。入学時点で将来の職業を決めている人は少数派だと思いますので、就職の幅広さが適職を見つけるうえで役立つはずです。
ここでは文学部出身者が就職することが多い業界や職種について、詳述します。
公務員
公務員とは、国や地方自治体において様々な公務を担う仕事です。公務員は3種に大別されます。
- 国家公務員/国全体に関わる政策の立案・教育・経済・外交・防衛 といった仕事に携わります
- 地方公務員/地方自治体において、地域に密着する公務を担います
- 国際公務員/グローバル社会において共通利益を得るために国際機関の仕事を行います
公務員試験では、多くの教養問題が出題されます。文学部の就活生にとって有利です。また、公務員はいくつもの部署を異動することになります。スペシャリストではなく、ゼネラリストであることが求められる仕事なので、文学部で学んだ教養が生きる傾向が高いようです。
教師
教師は、言わずと知れた児童・生徒・学生に勉強を教える仕事です。文学部の場合、国文学を専攻すると国語教諭の、英文学を専攻すると英語教諭の資格を取得できるところが多いです。そうした国家資格を活用し、教師を目指すのも選択肢の一つです。
自分が好きな教科を教える仕事にはやりがいがありますし、経験を積んで大学の研究職を目指すという方法もあります。教員採用試験を受けるだけでなく、私立の学校でも教師を募集しているので、情報収集してみることをおすすめします。
広告
文学部の就活生に人気が高いものの一つに、広告業界があります。広告主からの依頼を受けて、様々なメディアを活用してプロモーションを行う仕事です。広告業界の代表的な企業には、以下のものがあります。
- 電通
- 博報堂
- ADK
広告業界の採用選考では、クリエイティブテストが実施されることがあります。テーマは本や映画、音楽など様々ですが、それについて自分の言葉で表現することが求められます。文学部で多種多様な文学に触れ、表現方法を学んできた文学部出身者にとって、有利なテストといえます。
出版
読書好きが高じて文学部を選んだ人の中には、出版業界を目指す人も少なくありません。出版にも書籍や雑誌、マンガなどの種類があります。そして近年は、電子書籍市場が活性化しています。出版社の大手は、以下の通りです。
- 集英社
- 小学館
- 講談社
出版業界の新卒採用は狭き門ですが、選考試験で作文や筆記問題が課されることが多いです。文学部で学んだ表現力や文章力が、選考試験で役立つはずです。また、様々なジャンルの文学に触れた経験は、その後の仕事に生かせることでしょう。
サービス業
サービス業も、文学部からの就職者が多い業界の一つです。サービス業には、お客さまに対してサービスを提供する職種がすべて含まれます。サービス業における大手企業には、以下のものがあります。
- 日本郵政
- リクルートホールディングス
- 博報堂DYホールディングス
サービス業の企業は学部を問わない傾向が強いので、文学部出身者が多いです。また人を相手にする仕事ですので、教養を深めた文学部出身者の知識が役立つ機会があることでしょう。
文系の学部は就職しやすい
文系の学部は応募可能な業界や職種が豊富なため、就職偏差値が高いといわれています。
ここでは慶應大学文学部の就職実績を例にあげながら、文系の就職偏差値が高くなる理由について解説します。
慶應の文学部は就職に強い
2019年3月に慶應大学を卒業した文学部生の卒業後の進路は、以下の通りです。
就職率は85.7%となっていますが、卒業生の9.3%が大学院に進学していることを考えれば、決して低い数字ではありません。そして、2019年3月に慶應大学を卒業した文学部生の就職先にも、名だたる企業が並んでいます。慶應大学の文学部は、就職に強いといえます。
文系の就職偏差値が高い理由
理系の就活の場合は、専攻した学部・学科や所属した研究室によって、応募先が限られる傾向が強いです。しかし文系の場合は出身学部ではなく、応募書類や面接内容で評価されます。それが文系の就職偏差値が高い理由です。
専門性がない分、学生生活の過ごし方や資格取得などによって、自分の価値を高めることができます。そうした努力が、自分の就職偏差値を上げることにつながっていきます。
文系の就職偏差値に関する詳細が、以下の記事にまとめられています。ぜひ一読してみてください。
文学部の就職先の年収はそこまで高くない
慶應義塾大学の文学部は就職率が高いことは、前述しました。しかし名だたる企業であったとしても、大卒初任給という観点でみると、それほど高いとはいえません。
産労総合研究所が2019年7月4日に発表した「2019年度決定初任給調査の結果」によると、大学卒の平均初任給は20万8826円でした。慶應義塾大学文学部の新卒採用が多かった企業の新卒初任給をまとめた表と比較すると、ほとんどが平均額より低いことがわかります。
参考:リクナビ2020
文学部が就職のためにすべき準備
文学部出身であっても就活で不利になることはありませんが、志望する企業に採用される確率をあげたいなら、学生時代にきちんと準備をしておく必要があります。
ここでは就活を始める前に、文学部の学生が準備しておくべき内容について説明します。
経済や会計の知識も学んでおく
文学部の学生は、経済学部や経営学部の就活生と比べると、ビジネス関連の知識が少ないと思われがちです。そのため、経済や会計の知識を学んでおくことをおすすめします。
経済新聞に書かれている用語を理解し、財務諸表が読めるようになっておくと、就活で企業研究をする際にも役立ちます。
何か1つの活動に打ち込む
4年の大学生活の中で、サークル活動や学生会活動、アルバイト、留学、ボランティアなど、何か1つの活動に打ち込んでおくのもおすすめです。
採用面接では「学生時代にがんばったこと」について、質問されることが多いです。その時に困らないエピソードをつくり、その経験から何を得たかをアピールしましょう。
資格を取得しておく
就活を有利に進めたいなら、仕事に役立つ資格を取得するという方法もあります。文学部の就活生が在学中に取得可能な資格には、以下のものがあります。
- 学芸員
- 図書館司書
- ファイナンシャルプランナー
- 教諭
- マイクロソフトオフィススペシャリスト
- ITパスポート
ただし、資格を取得する際には、自分が応募する業界や職種に役立つものを優先するように心がけましょう。
文学部が就職で有利になる資格
文学部の就活生がより有利に就職したいなら、チャレンジしてほしい資格が3つあります。「TOEIC」「日商簿記」「宅地建物取引主任者」です。
ここでは3つの資格について、詳述します。
TOEIC
TOEICとは、英語が母国語ではない人を対象に行われるテストです。TOEICは990満点で、スコアによって英語力を表します。
企業や職種によっては、TOEICスコアで足切りすることがあります。就活に役立てたいなら、最低600点はクリアしておきましょう。国際部門で働きたいなら750点、海外赴任や出張を目指すなら680点前後はほしいところです。
日商簿記
簿記検定とは業態を問わず、企業の経営や財政状況を明らかにする力があることを証明する資格です。全経より日商の方が難易度が高く、権威があります。
経理や会計を目指す、あるいは銀行・コンサル会社への就職を目指すなら、持っておきたい資格です。少なくても、日商簿記2級を取得しておくことをおすすめします。
宅地建物取引主任者
宅地建物取引主任者は不動産取引には欠かせない資格で、取得すると権利に関わる調査や内容の説明、契約の締結などを担当できるようになります。
不動産業界だけでなく、銀行や保険会社、住宅メーカーに応募する際にポイントがあがる資格です。合格率は15~17%ですので、就活が本格化する前に取得しておきましょう。
文学部以外の就職しやすい学部
今回は文学部の就職について説明してきましたが、他の文系学部の就職しやすさについて、気になる学生もいることでしょう。しかし文系の場合は、学部がどこでも就職しやすさに大差はありません。
しかし理系の場合は、就職しやすさに違いがでます。就職しやすい学部についてまとめた記事がありますので、ぜひ参考にしてみてください。
【参考】AI時代で生き残れるのは人文系の人材かもしれない
今はIT分野やAIが注目され、プログラミングや情報技術が重要視されています。文理問わずプログラミング言語を勉強する人は多いです。
しかし、IT技術に強い人材が猛威を振るうなかで、人文系の人材の立場が危ういかというとそうではありません。むしろ、このIT時代・AI時代だからこそ、人文系の人材の考え方や視点が重要です。
AIや機械にはない「共感力」「思考力」を持つ強み
上記でも説明したように、文学部が扱う学問領域は多岐にわたります。しかし、人文系の学問に共通するのは、「人間」や「人間の所産」を扱うという事です。
なぜ人間はこう考えるのか、なぜコトバをつかうのか、なぜ人間はこのような営みをしてきたのか・・・哲学であれ、史学であれ、文学であれ、文学部で学ぶことは「人間が人間であること」について深堀していく学問です。この人間と向き合い、自己や他者と向き合い共感し、思考する姿勢は非常に重要です。
なぜなら、AIや機械にはそれらの「共感力」や「思考力」は備わっていないからです。データとして理解はできても、AIがそっくりそのまま人間に成り代わることは不可能です。
仕事をする上では、顧客の求めるものを探り共感して応えていくことが大事です。AIが人間の仕事を奪うといわれていますが、この精微な共感力がないと仕事は上手く回りません。
これらの力を身に着けることができる文学部の人材はAI時代だからこそ必要とされる可能性があります。
人文系の視点と時代に合わせた知識を掛け合わせることが重要
そうはいっても、自分文系の視点があるというだけでは問題です。情報化社会で生き抜くためには、時代に合わせた知識が技術が必要です。しかし、プログラミング言語を学べばよい、資格があればよいというわけではありません。
テクノロジーは日々進化しており、そのスピードは驚異的です。今、必要とされている技術が数年後も必要とされているとは保証できません。
一方、人文系の視点は時代が変化しても廃れることはありません。大事なのは、時代をよく分析し、その時その場面で必要な知識や技術に対応しながら、自らの思考力を活用することです。
文学部で学ぶことは間違いだったり、時代錯誤ではありません。人間社会で生活するうえで必要な強靭な武器を学んでいると誇示しながら、堂々と就職活動に臨めば問題ありません。
まとめ
文学部ではビジネス社会の実務に直接関わらない、文学について学びます。しかし就職に直結する専門性がないからといって、就職が不利になることはありません。むしろ多様な作品に触れて教養を深めておくと、仕事に役立つ可能性は十分にあります。
より就活を有利に進めるためには、資格を取得するなど、自分の武器を身につけておくことをおすすめします。