増え続ける逆パワハラの真相とは!?具体例や原因、相談窓口も紹介!

近年「逆パワハラ」が増えていることを知っていますか。この新たなハラスメントは、どの職場でも起こり得ます。そこで今回は逆パワハラの定義や具体例、それが起こる要因について解説します。逆パワハラによって、転職を余儀なくされる管理職もいますので、自分の職場をふり返る参考にしてください。

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この記事の監修者

キャリアカウンセラー|秋田 拓也

厚生労働省のキャリア形成事業にキャリアコンサルタントとして参画。
大手警備会社にて人事採用担当として7年間従事の後、現職にて延べ200名以上の企業内労働者へキャリアコンサルティングを実施。

■所持資格
国家資格キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)

逆パワハラは部下が上司に対して行うハラスメントのこと

逆パワハラとは、管理される側が管理する側に対して行うハラスメントを意味します。ここでは、逆パワハラの実態について説明します。

目次

複数の部下が連携して行われることも多い

逆パワハラは「部下ハラスメント」と呼ばれることもあり、1人の上司に対して複数が連携して行うケースが多いです。標的になった上司は自分が部下に嫌がらせをされていることを会社に報告できない傾向が高いため、改善されずに横行しがちです。

逆パワハラとパワハラの違い

逆パワハラとパワハラの違いは、以下の通りです。

  • 逆パワハラ/部下から上司、後輩から先輩、非正規社員から正社員に対し、嫌がらせやいじめを行う
  • パワハラ/立場が上の人が権力を利用して、立場が下の人に嫌がらせやいじめを行う

逆パワハラを行う社員は必ずしもモンスター社員ではない

モンスター社員とは、自己中心的に物事を考え、激しく自己主張することでそれを押し通そうとする社員を意味します。しかし、逆パワハラを行うのはモンスター社員に限りません。一般社員の集団心理により、上司1人を攻撃するケースが多くみられます。

モンスター社員は上司だけでなく、一緒に働く同僚にとっても悩みの種となります。モンスター社員の言動は、上司だけを明確に攻撃する逆パワハラとは一線を画します。

逆パワハラにあたる6つの事例

逆パワハラは上司に精神的な苦痛を与える行為であり、それが行われることで職場環境は確実に悪化します。しかし、行っている側の部下がそれを重大なことだと認識していないケースも珍しくないようです。

ここでは、逆パワハラにあたる6つの事例を紹介します。

一般的な逆パワハラの4つの事例

逆パワハラは個人が上司に行うより、集団で行われることが多いため、よりダメージを与えるケースが少なくありません。ここでは一般的な逆パワハラの事例を4つ、紹介します。

①上司の指示を部下が無視する

管理職は率いている部署の業務を遂行するため、部下に指示を出すものです。しかし上司の指示に返事をしない、指示された通りに仕事をしないなど、部下が無視をすることがあります。これは逆パワハラに該当します。

また「それはできません」「私の仕事ではありません」と、仕事を引き受けないことも逆パワハラにあたります。

②SNS上で上司を誹謗中傷する

近年の若手社員は、中高年の管理職よりITスキルが高いです。そのため、上司が見ないSNSやブログを使って、上司の実名をさらしたうえで誹謗中傷するケースが珍しくありません。

ネット上に上がった情報は拡散するため、要請してもすべてを削除はできないものです。これは、上司の名誉棄損に該当する悪質な方法です。若手社員が公然と社長を批判するケースもあります。

③上司を無能扱いする

近年はITスキルを活用することで、業務効率の向上が見込めるようになりました。しかし中高年の管理職は、若手社員のようにITツールを使いこなすのが難しいものです。

上司がITツールのやり方を何度も尋ねたり、アナログな方法で仕事を依頼しようとしたことで、若手社員が「無能」という烙印を押すケースが増えています。その結果、上司をバカにする言動が増え、仕事も滞留してしまいます。

④上司の悪口を言いふらす

部下が上司の悪口を言いふらすことも、逆パワハラにあたります。「仕事ができない」「ITスキルがない」など、事実に即したことを言いふらすのも問題ですが、「横領している」「セクハラをしている」「パワハラをしている」など、事実無根の噂を流すケースもあります。

部下が社内だけでなく、取引先でも上司の悪評を吹聴し、それを信じる人が増えることで退職に追い込まれたり、自殺したケースもあります。

女性の上司に対して特有の逆パワハラの2つの事例

厚生労働省では女性管理職を増やすべく、様々な取り組みを行っています。しかし未だに、女性上司を認めようとしない部下がいるのが現実です。ここでは女性の上司に対して特有の逆パワハラの事例を2つ、紹介します。

①部下が上司から仕事を取り上げる

女性上司が仕事をしようとすると、部下が「業務は私たちがやるので、指示だけ出してください」と言い、実務を引き上げるケースがあります。

そして取り上げた仕事に関する報告を意図的にせず、上司を組織の中で孤立化させるのです。

②業務指示だけでなく挨拶も無視する

女性上司の業務指示を無視するだけでなく、部下に対して挨拶しても返事をしないという嫌がらせもあります。

話しかけても無視され続けることで、女性上司が精神的に追い詰められるのは当然のことです。

実際にあった裁判例

実際に逆パワハラによて起こった裁判例を紹介します。

西日本新聞によると、産業医科大学で、教授が部下である准教授を逆パワハラで提訴したとのことです。教授が犯したミスを恣意的なものだと主張して土下座を強要するなど誹謗中傷を繰り返し、うつ病を発病して休職しました。

また、実際に裁判に至るケースはモンスター社員が会社を訴えることもよくあります。逆パワハラによって解雇された社員が「不当解雇だ」として、会社に提訴するケースがよく見られるものの、多くの場合は解雇の正当性が認められる結果に至っています。

逆パワハラの被害にあった場合、法的措置も検討すべきであるということは念頭に置いておきましょう。

逆パワハラが起こる要因

厚生労働省は企業におけるハラスメントについて様々なデータを公表していますが、中でも逆パワハラが増加傾向にあるようです。ここでは、逆パワハラが起こる要因について説明します。

①実力主義の台頭

終身雇用制度が採用されていた時代は、企業は年功序列主義でした。しかし現代は、立場に関係なく成果をあげられる人が優遇される、実力主義の時代です。

特にIT分野に関しては、管理職である中高年より若手社員の方がリテラシーがあります。そのため、ITツールを活用できない上司を無能だと感じやすく、上司の権威が下がってしまうのでしょう。

②ブラック上司ゆえに部下の不満が溜まる

部下に対してパワハラを行っているブラック上司の振る舞いに、部下の不満が溜まり爆発した結果、逆パワハラに移行するケースも少なくありません。ある意味、自業自得ともいえるのですが、1対集団という構造になりやすいため、エスカレートしがちです。

管理職が逆パワハラを避けるためには、自身がブラック上司ではないかをふり返る必要があります。以下の記事では、ブラック上司の特徴について解説されていますので、まずは一読してみてください。

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③SNSの普及によるモラルの低下

以前はネットでの誹謗中傷は2chの専売特許でしたが、SNSの普及によりさらにモラルが低下し、悪質な投稿が散見されるようになりました。

本人の許可なく写真を公開したり、実名を明記したうえで誹謗中傷する人が増えています。

こうした行為は名誉棄損にあたり、訴訟を起こされる可能性が高いという認識が欠落しているのは、とても残念です。

④企業の逆パワハラに対する認識不足

企業は、上司から部下へのパワハラやセクハラについては過敏に反応します。しかし、逆パワハラが行われている事実にも気づかず、対策をとっていない企業の方が多いのが現実です。

そうした企業の認識不足により、管理職が心身に不調を訴えて休職・退職するケースは珍しくありません。

⑤女性の社会進出による価値観のズレの顕在化

かつての日本は年功序列の男社会で、女性は補佐役というのが共通認識でした。しかし現代は女性の社会進出が進んでおり、管理職と部下の間で価値観のズレが生じています。

それが顕在化したことで、逆パワハラが頻発したと考えられます。

逆パワハラが起こりやすい業界・企業の特徴

逆パワハラはどの企業でも起こり得ますが、起こりやすい業界や企業には共通点があります。ここでは、逆パワハラが起こりやすい業界・企業の特徴について説明します。

①高い専門性が必要なのに年功序列で評価される

仕事をするうえで高い専門性が必要なのに、その能力や成果ではなく年功序列で評価される業界や企業に、逆パワハラが多くみられます。

部下の方が仕事ができるのに上司の方が評価が高いことに関する不満が、逆パワハラにつながるのでしょう。

②自分より年齢の高い部下を持つ

実力主義の業界や企業の場合、成果を上げた若手社員と管理職に登用するのは珍しくありません。

しかし、若い管理職に年齢の高い部下を持たせると、勤続年数を盾に取って逆パワハラが起こる可能性が高まるようです。

③上司と部下の雇用形態が異なる

特にサービス業では、店長などの管理職だけが正社員で、部下は非正規雇用者であるところが多いです。

このように上司と部下の雇用形態が異なる業界や企業では、「正社員なんだから、それくらいやってください」と、非正規雇用者が業務指示に従わないケースが起こりやすいです。

逆パワハラの防止策・対処法

仕事を円滑に進めるうえでも、職場ではすべてのハラスメントが起こらないよう、対策をたてる必要があります。ここでは、逆パワハラを受けないためにすべきことについて紹介します。

逆パワハラを未然に防ぐ方法

ここでは逆パワハラを未然に防ぐ方法を3つ、紹介します。

①管理職に対して適切なマネジメント研修を行う

逆パワハラを防ぐためには、管理職が部下に対し適切なマネジメントを行うことが不可欠です。そのためのマネジメント研修を行い、部下に信頼される管理職を目指すのが得策です。

②社員に逆パワハラの存在を認識させる

企業が全社員に対し逆パワハラ教育を行い、その存在を認識させることも大切です。社内研修では逆パワハラもパワハラに含まれることを周知させましょう。

その際、逆パワハラの裁判で、部下に損害賠償の支払いを命じたケースがあることも伝えましょう。

③普段から毅然とした態度を心がける

逆パワハラを受ける管理職は、部下の顔色を窺いすぎる傾向が強いようです。そこで部下に何を言われても、普段から毅然とした態度でいるよう心がけましょう。

仕事を遂行するうえで指示したことはやってもらうという姿勢で、部下の気持ちを忖度しないことを態度で表すのがおすすめです。

逆パワハラを受けた場合の対処法

ここでは管理職が逆パワハラを受けた場合の対処法を3つ、紹介します。

①証拠を残しておく

自分が逆パワハラされた証拠を、残しておくのが大原則です。会話を録音する、メールを保存する、SNSの画面キャプチャをとるなど、証拠になるものはすべて保存しておきましょう。

特にパワハラは「上司が部下に行うもの」という認識が一般的なので、逆パワハラは立証しにくい傾向があります。自分の主張の正当性をわかってもらうためには証拠が欠かせません。

②上長に報告する

管理職が逆パワハラを受け、証拠が揃ったら、直属の上長に事実を報告しましょう。

上長に相談することで、部署の異動や転勤など、退職せずに解決できる方法を選択できる可能性があります。

③行政機関や弁護士を頼る

上長に証拠を開示して報告をしても状況が変わらない場合には、専門の相談窓口を利用するのがおすすめです。相談窓口には、以下のものがあります。

  • 総合労働相談コーナー
  • 労働基準監督署
  • 法テラス

組織の問題を解決したい場合は、総合労働相談コーナーまたは労働基準監督署に相談するのがおすすめです。部下に対する法的措置を検討している際には、法テラスで弁護士に相談しましょう。

逆パワハラ以外にモラルハラスメントも増えてる

近年は逆パワハラだけでなく、モラハラといわれる漏らすハラスメントも増加傾向にあります。モラハラは立場に関係なく起こる嫌がらせなので、ターゲットが退職を余儀なくされるケースも少なくありません。

以下の記事では職場モラハラの判断基準や対処法、様々なハラスメントの内容について詳しく解説されています。知識として覚えておくべき内容ですので、ぜひ一読してみてください。

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まとめ

今回は、逆パワハラの定義や具体例、それが起こる要因について解説しました。

逆パワハラが原因でうつ病を発症した管理職が自殺した例もあり、看過できる問題ではありません。逆パワハラの予防策や対応策を知っておくことで、1人で悩まずに対処できるかもしれません。もし現在、逆パワハラの被害にあっているなら、速やかに対応することをおすすめします。

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