働き方改革が進む現代では、労働基準法に則り、休日出勤をしたら代休をとるよう指示される会社が増えています。しかし休日出勤後、代休をとるのか振替休日を選ぶのかで、給与が変わることを理解している人は多くないようです。そこで今回は、代休とは何か、振替休日との共通点と違いなどについて解説します。実際の計算方法も紹介するので参考にしてください。
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この記事の監修者
キャリアカウンセラー|秋田 拓也
厚生労働省のキャリア形成事業にキャリアコンサルタントとして参画。
大手警備会社にて人事採用担当として7年間従事の後、現職にて延べ200名以上の企業内労働者へキャリアコンサルティングを実施。
■所持資格
国家資格キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
代休とは
代休という言葉はよく耳にしますが、その意味を理解して使いこなしている人は、それほど多くないようです。
休日出勤を余儀なくされる可能性がある会社員は特に、覚えておくと自分にメリットが大きいはずです。ここではまず、代休の意味について説明します。
代休の意味
小学館のオンライン大辞泉では、「代休」の意味を以下のように説明しています。
日曜・祭日などの休日に出勤した代わりにとる休暇
ここでは、日曜祝日が休みの企業に特化した表現になっていますが、平日が休みの会社でも同じ意味で使われます。
代休とは、本来は休日になる日に出勤した代わりにとる休暇制度のことです。
就業規則に記載がある
代休は、労働基準法で決められている制度ではありません。
しかし厚生労働省の「労働時間・休日」にもあるように、労働基準法において、雇用主は労働者に対し「1週間に1日、または4週間に4日以上の休日を与えなければならない」と定められています。
そのため企業は、従業員に休日出勤させることで上記の条件が満たされない事態があることを想定し、就業規則で代休について記載しています。
また代休を取得した場合、企業が休日出勤した従業員に対し、割増の手当てを支払う義務も負います。
代休と振替休日の共通点・違い
代休も振替休日も、休日出勤したことで発生する休みであることに変わりはありません。
しかし、就業の観点からみると明確な違いがあるため、労働者はそれを理解して取得する必要があります。
ここでは、代休と振替休日の共通点と違いについて、わかりやすく説明します。
言葉の定義
代休の意味は、前章で説明しました。そこで同じ小学館のオンライン大辞泉で、「振替休日」の意味がどう紹介されているのかを紹介しましょう。
1 祝祭日が日曜日と重なったとき、その翌日を休日とすること。また、その日。
2 振休。休日に出勤・登校した場合など、他の日を代わりに休日とすること。また、その日。振休。
前章で紹介した代休と比べると、微妙にニュアンスが違う点があることに気づくかもしれません。
振替休日は会社員だけに適用されるわけではなく、日曜日と祝祭日が重なったことによる休みです。つまり、日本国民全体に関わります。
事前・事後
厚生労働省の公式サイトでは、「振替休日と代休の違いは何か」について説明しています。
【振替休日】
- あらかじめ休日とされていた日を労働日とし、その代わりに労働日を休日とする。
- 休日労働にはならないため、企業は従業員への割増賃金の支払いは発生しない。
【代休】
- 休日労働が行われた代償として、それ以後の労働日を休日とするもの。
- 休暇申請が事後になるため、企業は従業員に対して休日労働分の割増賃金を支払う義務を負う。
一番の違いは、休みをとることが休日出勤の前から決まっていたのか、後なのかです。振替休日はあらかじめ労働日と休日を交換しているので、割増手当が発生しません。
そのため、代休を取ることができるのに振替休日として申請すると、割増分の手当を失うことになるという点に注意しましょう。
割増賃金
厚生労働省の公式サイトに、「法定労働時間と割増賃金について教えてください」という質問の回答が紹介されていました。そこでは、以下のように説明されています。
- 労働基準法による法定労働時間は1日8時間、1週40時間とする(業種と労働者数によって1週44時間とするものもある)
- 時間外労働をさせる場合、割増賃金の支払いが必要
つまり割増賃金とは、雇用主が従業員に時間外労働(残業)・休日労働・深夜業を行わせた場合に支払わなければならない賃金を意味します。
以下では、代休における割増賃金について詳述します。
法定休日は35%、法定外休日は25%
前述した厚生労働省の「法定労働時間と割増賃金について教えてください」の中では、割増賃金の規定についても紹介されています。
- 時間外労働に対する割増賃金は、通常賃金の25%以上
- 労働基準法で定めた法定休日における時間外労働に対する割増賃金は、通常賃金の35%
- 法定外休日における時間外労働に対する割増賃金は、通常賃金の35%
前述しましたが、労働基準法に定める法定休日は「週間に1日、または4週間に4日以上の休日」です。そして法定外休日とは、企業が定めている法定休日以外の休みをさします。
つまり1ヶ月で休日が3日以下でない場合は、基本的に法定外休日の25%割増とみなされるということです。
期限
振替休日は、休日出勤の翌日にとるものです。
しかし代休については、労働基準法で取得期限を定めていません。そのため、就業規則に明記する必要はありますが、企業ごとに自由に期間を設定できます。
一般的には社員の健康面への配慮もあり、休日出勤日から2週間から1ヶ月としているところが多いようです。しかし繁忙期で難しい場合は、閑散期にまとめられる会社もあるといいます。
まずは、自分の勤務先の就業規則では、代休についてそう定めているのかを確認してみましょう。
休日出勤して代休を使った場合・使わなかった場合の給与の差
これまで、代休と振替休日の違いについて説明してきました。
気になる給与面でいうと、代休は割増賃金が発生しますが、振替休日前日の労働は発生しないことは、すでにお話しした通りです。しかし、それだけではどんな違いがあるのか、ピンとこない人も多いはずです。
ここでは休日出勤して代休を使った場合・使わなかった場合の給与の差について、時給2,000円・1日の実働時間8時間・週休2日の正社員が、代休または振替休日をとった場合の週給を例にあげて説明します。
休日出勤して代休を使った場合
もともと日曜日は休みでしたが突然、日曜日に出勤して代休を取るよう指示を受けました。この場合は、日曜日は法定出勤日なので、割増賃金が発生します。
そのため、週給は以下のようになります。
- 2,000円×8時間×5日:80,000円
- 休日出勤分:(2,000円×1.35)×8時間×1日=21,600円
この場合、曜日は異なるものの休みがあるうえ、休日出勤の割増賃金分の支給により週給が上がるということです。
休日出勤して振替休日を使った場合
もともと日曜日が休日だったものの会社の都合で突然休日出勤を命じられ、その後代休ではなく振替休日を取ったとしましょう。
この場合は振替休日なので割増分が発生しません。この場合、週休は以下となります。
- 2,000円×8時間×5日=54,000円
つまり、代休の時に発生していた割増分21,600円を失うことになります。振替休日と代休を選ぶことができるなら、必ず代休を選ぶようにしてください。
休日出勤をしたら代休を取得しよう
前章の給与額の実例を見てもわかるように、労働者の立場に立てば、代休は振替休日よりメリットが大きいです。
- 代休は自分の都合で設定できる
- 代休は割増賃金が発生するので給与が増える
- 代休の場合は、会社に休日出勤を事前申請しなくて済む
管理職の中にも、この違いをきちんと理解していない人がいます。勤務先の就業規則を確認したい上で、自分に不利益にならないよう使い分けることをおすすめします。
まとめ
今回は、代休とは何か、振替休日との共通点と違いなどについて解説しました。
代休と振替休日は休日出勤を決めるタイミングが異なり、給与にも影響します。そのため、会社の言いなりに取得するのではなく、労働基準法に則っているかどうかを、労働者自身が見極めることが大切です。今後に休日出勤が発生する時に備えて、この知識を覚えておきましょう。