鉄鋼業界の中で鉄鋼メーカーとユーザーを繋いているのが鉄鋼商社です。メーカーなどに次いで人気な商社の中でも激務と言われる鉄鋼商社が具体的にどのような役割を担っているのかは、外からでは分かりにくいものです。

今回は鉄鋼業界での商社の役割についてご紹介します。

鉄鋼業界での商社の役割

鉄鋼業界の中でメーカーとユーザーの間に立つ商社はなくてはならない存在です。この記事では鉄鋼業界の中で活躍する商社の役割、商社の種類、具体的な業務や年収に関してご紹介します。

鉄鋼商社への理解を深めるために是非、読んでみてください。

役割①｜メーカーとユーザーを繋ぐ

鉄鋼商社は鉄鋼メーカーとユーザー（需要家）の間に立ってコントロールをする役割を担っています。

ユーザーから将来の材料需要情報をヒアリングし、メーカーにはユーザーの将来の需要情報を伝え、適切な生産計画の維持に貢献することで業界内の需要と供給をコントロールしており、鉄鋼業界内でなくてはならない存在なのです。

役割②｜物を運ぶ物流機能

メーカーの仕事はあくまで鉄鋼材料を製造するところまで。ユーザーに届けるのは鉄鋼商社の役目です。

物を運ぶと聞くだけでは簡単かと思いますが、日本各地のユーザーに最短かつ、コストを抑えた移送を実現する手段を準備しなければならず、非常に重要な役目を果たしています。

天災などの不慮の状況に巻き込まれても納期通りに、物を届けなくてはならないので柔軟な対応が求められます。

役割③｜ユーザーの声をメーカーへ提供

鉄鋼材料は日本全国大小様々な会社が利用しており、その全ての会社にメーカーが足を運んで、対応するのはあまりにも非効率です。

そこでユーザーに最も近い場所に位置する鉄鋼商社がユーザーのニーズや新製品開発案件、材料使用の見通しなどあらゆる情報をユーザーから集めます。

メーカーの新素材開発や効率的な生産計画を実現するために市場の声を正確に届けるのも鉄鋼商社の大切な役割です。

種類別｜鉄鋼商社の特徴

鉄鋼商社には3つの種類が存在し、それぞれが独自のフィールドで強みを発揮しています。

商社の種類によって活躍できるフィールドが異なるので、ここでは代表的な商社の種類を３つに分け、具体的な会社名をもとにご紹介していきます。

種類①｜総合商社系専門商社

総合商社系専門商社は日本に名だたる伊藤忠商事・丸紅・双日などの鉄鋼部門が独立、合併して設立された鉄鋼専門商社のことを指します。

総合商社を親会社とする子会社の立ち位置で総合商社の案件規模に対し、小規模でニッチな商品の扱いを総合商社系専門商社が担っており、親会社と子会社の間で明確な役割分担がなされています。

特徴

• 総合商社の部門であったため、給与体系は総合商社と遜色なく、年収は高い
• 総合商社からの転籍者や出向者の経営陣が多く、プロパーが経営陣に上り詰めるのは稀
• 親会社からの出向者が多いため、派閥が存在する

例

• 伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社

2001年1月に伊藤忠商事株式会社と丸紅株式会社の鉄鋼部門が独立・統合して生まれたのが伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社です。総合商社鉄鋼部門の統合により生まれた商社モデルの先駆者となる会社です。

• 株式会社メタルワン

2003年1月に三菱商事株式会社と日商岩井株式会社の鉄鋼部門が独立・統合して生まれたのが株式会社メタルワンです。配属先でキャリアが決まってしまう商社の中で10年間で3分野と海外経験を経験する事ができる「ジョブローテーション制度」が特徴です。

種類②｜メーカー系専門商社

メーカー系専門商社はその名の通り、メーカー系列の商社であり親会社であるメーカーの商品を販売することに注力しているため、親メーカー以外の商品を販売することは難しいです。

販売できる商品に限りがあるため商売の幅が狭まってしまうのがメーカー系専門商社の実情です。

特徴

• メーカーの言うことは絶対
• 経営陣はメーカーからの出向者や転籍者が多くを占める
• 商売の幅が狭く、他の商社に比べると自由度が低い
• 二次問屋を子会社化して加工・販売を委託している

例

• JFE商事株式会社

鉄鋼メーカーのJFEホールディングスを筆頭株主としたJFE系商社です。日本第2位の鉄鋼メーカーを親会社とし、鉄鋼事業以外に食糧・エレクトロニクスなどを手掛けています。

• 日鉄物産株式会社

鉄鋼メーカーの日本製鉄株式会社を筆頭株主とした日鉄系商社です。新日鐵住金株式会社と日新製鋼株式会社が合併してできた日本最大の鉄鋼メーカー系列商社で、鉄鋼事業以外に食糧・繊維・産機・インフラの事業を営んでいます。

種類③｜独立系専門商社

独立系専門商社はその名の通り、総合商社やメーカーなどに属していない独立した専門商社のことです。

資本や系列関係がないので、どのメーカーからも仕入れを行う事が可能でビジネスに制限が少ない事が特徴です。ただし、総合商社系やメーカー系のような強いバックやコネクションがないため、他の商社に比べて激務と言われています。

特徴

• ゼロからビジネスを作る営業力が必要
• ビジネスの自由度が高い
• 体育会系が多い
• 個人の成長スピードが早い

例

• 阪和興業株式会社

1946年創業の独立系専門商社で70年の歴史がある老舗商社です。

手数料ビジネスでありながら高い粗利益率を出していることがその営業力を裏付けています。事業の多角化に早くから着手しており、2019年度の鉄鋼の売上比率は50%、もう半分は原料・石油・食品・非鉄と鉄鋼事業に依存しない企業体質も特徴です。

鉄鋼商社の年収

鉄鋼商社の年収はいくらか、気になる方が多いと思います。ここでは鉄鋼商社の初任給や年収などの給与に関して紹介していきます。

商社種類別の初任給を以下の通りです。

「平成30年賃金構造基本統計調査結果（初任給）の概況」によると大卒男女の平均初任給は20万6,700円で、平均と比べると鉄鋼商社の初任給は高い水準であることが見受けられます。

商社種類別の年収推移は以下の通りです

メーカー系商社が最も高い年収となっていますが、どの種類の商社も平均して高い年収である事が言えます。

以上のことから、鉄鋼商社の初任給・年収水準共に高いということが言えます。

鉄鋼商社は激務なのか

鉄鋼商社は激務です。大きなビジネスを回して世界を飛び回るイメージが先行してしまいがちですが、実際は泥臭い仕事が多いです。

ユーザーからクレームが出たらメーカーの代わりに現場に行く必要があるので出張は多く、接待も多いです。

商社はメーカーとユーザーの間に挟まれるので、どちらも持ち上げる必要があり、無理なお願いをされてもNoとは言えません。頑張りすぎた結果、実際に心を病んでしまう人の割合も多いのが実態です。

以下の記事では、商社が激務と言われる理由を説明すると同時に、商社で働いている人の口コミも紹介しています。実態を知るには現場で働いている人の声を聞くのが１番です。後悔のない就活を行うためにも、是非参考にしてください。

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まとめ

鉄鋼商社の総合商社系、メーカー系、独立系の３種類を紹介してきましたが、それぞれに共通するのは業務が激務な点です。

しかし、高い年収が見込めるのもまた事実です。自分を見つめ直して、激務に耐え抜ける自信と忍耐力があるかを確認して、就職活動に望んでください。