企業研究は公式サイトを見るだけでは不十分です。就活生はIR情報をチェックすることをおすすめします。上場企業が公開しているIR情報の見方を理解できれば、会社の経営状況や今後の取り組みについての情報が得られるからです。そこで今回はIR情報とは何か、見方や用語について解説します。
弊社bizualでは、就活で業界選び、面接対策、ES対策などにお悩みの方向けに無料サポートを実施しております。
無料登録後、下記就活サポートが完全無料で受けられるようになっているため、就活生の方はぜひご活用ください。
bizualのサポートに無料登録しておくと・・・
- 就活生専門のコミュニティに無料参加できる!
- 面談後参加できるコミュニティで近年の就活業界の傾向などの情報を受け取れる!
- ES免除・1次面接無しの選考ルートも選べる!
- 選考対策(ES添削・模擬面接)を無料サポート!
- 面接官からの合否フィードバックを共有!
この記事の監修者
キャリアカウンセラー|秋田 拓也
厚生労働省のキャリア形成事業にキャリアコンサルタントとして参画。
大手警備会社にて人事採用担当として7年間従事の後、現職にて延べ200名以上の企業内労働者へキャリアコンサルティングを実施。
■所持資格
国家資格キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
IR情報とは
IRは「Investor Relations」の略称で、直訳すると「投資家への広報活動」となります。つまりIR情報とは、株式会社が投資家に対して公表している経営並びに財務状況の報告書を指します。
企業は株式を販売することで、投資家から事業資金を集めています。自社の経営や財務に関する情報を事細かく公表することで、投資を継続してもらう、あるいはより大きな資金を集めるために作成・公表しているものです。
就活生がIR情報をみることのメリット
IR情報は株主や投資家を対象にした資料ですが、その用語や見方を理解できれば、就活生も役立てることができます。それは、IR情報には就活メディアや企業の採用サイトでは得られない、様々な情報が満載だからです。
ここでは就活生がIR情報をみることのメリットを2つ、説明します。
メリット①|企業の経営状態がわかる
IR情報には売上高はもちろん、損益状況や資産内容まで明記されています。それに加えて、キャッシュフローの状況も記載しているため、企業の経営状況がわかります。
就活生になじみの薄い言葉に「黒字倒産」があります。売り上げはあがっているものの、その代金を回収できず、会社に現金がないため経営が悪化している状態です。IR情報を読み解くことで、そうした企業の経営実態が理解できます。
メリット②|企業のコーポレートガバナンスがわかる
コーポレートガバナンスとは、企業経営を統制並びに監視する機能を意味します。既存の株主や未来の投資家から資金提供を受けるためには、企業の公平性と透明性を担保することが重要です。
「社内で不正をなくすためにどのような努力をしているのか」「情報漏洩を防ぐためのセキュリティ対策がどうなっているか」という内容が、IR情報に記載されています。企業の永続性を判断するうえで、就活生にとっても重要なポイントといえます。
IR情報の見方
IR情報には様々な情報が記載されていますが、就活生に役立つ内容を読み解ければ問題ありません。しかしそのためには、IR情報の見方をきちんと理解しておく必要があります。ここでは就活に役立つ、IR情報の見方について説明します。
見方①|業績のハイライトをチェックする
企業研究の一環としてIR情報を読むなら、まず業績のハイライトに目を通しましょう。業績のハイライトでは、その期に大きな変動があった事業が紹介されていることが多いからです。そこに、事業収益や財務収益の情報を加えている企業もあります。
また、既存事業が維持できているのか、低迷しているのかも、業績のハイライトでチェックできます。また、自分が携わりたい事業が明確な就活生にとっては、応募企業を見極めるポイントとしても機能しそうです。
見方②|当期営業利益をみる
就活生がIR情報で重視すべきなのは、売上高ではありません。企業の経営状況を知るうえでも、当期営業利益をみるようにしましょう。営業利益の計算方法は、以下の通りです。
- 営業利益=売上総利益-販管費(販売費並びに一般管理費)
- 売上総利益=売上高-売上原価
当期営業利益とは、企業が本業において1年間に稼いだ利益と言いかえることもできます。この数字をみることで、企業や事業の成長度合いを予想できます。
見方③|当期経常利益をみる
大手企業は特に、複数の事業を行うことで成り立っています。そのため所有する不動産から家賃収入を得る、投資して収益を得るなど、本業以外で稼ぐことも珍しくありません。本業以外から得た収益を、営業外収益とよびます。そして経常利益は、以下のように算出します。
- 経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用
- 営業外費用とは、本業以外の事業における支出のこと
当期経常利益とは、企業が行っている事業すべてから得た利益を意味します。本業での収益が低迷していても、本業界で伸びている事業があってそれをカバーできていれば、企業経営は安定しているといえます。そうした企業動向を把握するうえで、役立ちます。
見方④|直近2~3年の数字の変化をチェックする
IR情報は、単年だけを見ても意味はありません。特に営業利益と経常利益は直近2~3年は目を通す必要があります。その推移をみることで、企業が成長しているのか、下降気味なのかが一目瞭然だからです。
企業は目先の利益確保だけでなく、中長期的な視野に立ち、新規事業への投資を行うことが少なくありません。その場合、営業利益は高くても、経常利益は下がる可能性があります。しかし、複数年の推移をみて上昇傾向にあるなら、その投資は実を結びつつあると解釈できます。
市場のニーズが多様化する現代だからこそ、企業は変革を恐れないことが大切です。そうしたスピリットがある会社かどうかを、見極めるポイントにもなりそうです。
見方⑤|経営計画をみる
IR情報を作成した企業は、その数値に基づいて、中長期的な経営方針を検討します。中でも中期的な経営方針は、その後3~5年をどうするかを示す指標なので、就活生には最も関りが深い部分といえます。
また中期的な経営計画は、企業理念に基づいて打ち出されます。企業理念の言葉だけでは理解できない、会社の姿勢や方針を理解するうえでも、経営計画をみることをおすすめします。
IR情報を見る際に押さえておきたい単語5選
IR情報を読み解くためには、経済用語をきちんと理解することが大事です。ここでは就活生が覚えておくべき、IR情報を見る際に押さえておきたい単語を5つ取り上げ、その意味を説明します。
売上高
売上高は企業が本業から得られる収益を意味し、「トップライン」といわれることもあります。しかし、売上高が高いからといって、企業がすぐに現金を手にしているわけではありません。それは、売上高と入金された販売代金が同じタイミングになるとは限らないからです。
企業間の取り引きにおいては、納品と支払いのタイミングが異なります。アルバイトなどで「月末締め・翌月末払い」という言葉を聞いたことがあると思いますが、企業でも取引先と締め日・支払い方法を決めて取り引きしています。
そのため、前述した「黒字倒産」のように売上高がよくても、キャッシュフローが悪い会社が少なくないのです。その点を踏まえて、売上高をチェックする必要があります。
事業収益
事業収益とは、企業が行っている事業別の収益を意味します。大手企業が複数の事業を展開していることは前述しましたが、その収益状況には違いがあります。事業収益をみることで、その企業で成長している、あるいは停滞している事業を見極めることができるのです。
自分のやりたい仕事が明確な就活生が事業収益をみることで、応募企業でそれが実現できるかどうかを予測する指標となります。
税引前当期純利益
税引前当期純利益とは、企業が1年間に稼いだお金を意味します。税引前当期純利益の計算方法は、以下の通りです。
- 税引前当期純利益=経常利益+特別利益-特別損失
- 特別利益とは、所有不動産の売却益など、企業における1階きりの臨時収益のこと
- 特別損失とは、企業における臨時支出や、特別利益よりそのためにかかった支出の方が大きくマイナスになった状態のこと
これは、税金を支払う前の純利益ということです。
当期純利益
当期純利益とは、企業1年間に稼いだ最終的な利益を意味します。税引前当期純利益の計算方法は、以下の通りです。
- 当期純利益=税引前当期純利益-法人税等(法人税・法人住民税・法人事業税)
- 法人税とは、企業が稼いだ所得にかかる税金のこと
- 法人住民税とは、企業がある都道府県や市町村に支払う税金のこと
- 法人事業税とは、一定の事業を行っている法人並びに個人が都道府県に納付する税金のこと
当期純利益をは、その企業の1年間の成果をあらわす数字です。経常利益と合わせてみることで、企業の経営状態を把握できます。
社債
社債とは、企業が資金調達するために発行する債券を意味します。発行した社債には「借用金額」「返済日」「支払われる利息」が明記されており、迅速に資金を用意したい時などに発行されます。社債のは、以下の5つがあります。
- 普通社債(SB)/設定された返済期間中、投資家に利息が支払われる社債
- 転換社債(CB)/一定の価格までは、社債を発行している企業の株式に転換できるという条件がついている社債
- ワラント債/一定の価格まで、社債と株式を同時に購入できる権利がついている社債
- 劣後債/利息は高めに設定されるが、企業に万が一のことがあった場合、弁済順位が低くなる社債
- 電力債/電力会社が発行している社債
株式は返済義務を負いませんが、社債は必ず返さなければならない借金です。社債は返済が可能と判断して発行されるものなので、企業の資金繰りを知る手掛かりとなります。
IR情報を就活で生かすコツ
就活生がIR情報を役立てることができるのは、企業研究の場面だけではありません。IR情報を読み解くと、応募資料の作成や面接でも活用できます。ここではIR情報を就活で生かすコツについて、紹介します。
コツ①|逆質問で活用する
IR情報には、就活メディアや採用サイトでは紹介されていない、現状報告や今後の取り組みについて記載されています。それを、面接時の逆質問で活用するのです。具体例は、以下の通りです。
- 御社のIR情報に、経営戦略として〇〇という新規事業に取り組んでいるとありました。それも踏まえて勉強しておいた方がよい分野があれば教えてください
- 御社のIR情報を拝見し、新規参入分野の売上比率が上がっているように感じました。なぜそうした成果が上がったのか、教えていただいてもよろしいですか
その内容が具体的であればあるほど、きちんと企業研究をしたことが伝わるはずです。
コツ②|志望動機に盛り込む
IR情報から経営方針や今後の取り組みをきちんと読み取れれば、それを志望動機に盛り込むことができます。具体例は、以下の通りです。
- 御社のIR情報によると、近年は国内より海外での出店に力を注いでいるようです。大学で学んだ国際経済の知識とTIEIC®スコア700点という英語スキルを生かして、海外で活躍したいと思い志望しました
- IR情報に、今後はサービス向上を重視した事業の拡大に取り組むとありました。私も御社のサービスを受けた経験があり、それをより魅力的にする仕事に携わりたいと考えたことが、志望理由です
IR情報の内容を志望動機に盛り込む時点で、本気で自社に入社したいと考えていると、印象づけることができるはずです。
まとめ
今回はIR情報とは何か、見方や用語について解説しました。
企業のIR情報は、就活生にとって読みにくい資料かもしれません。しかしポイントを理解して読み解けば、企業研究にも自己アピールにもつながる、情報の宝庫でもあります。ライバルに差をつける意味でも、IR情報をチェックする習慣をつけることをおすすめします。