2019年4月の日本の大学進学率は、54.67%でした。全国で約57万5000人が進学したことになります。そして大学進学にあたって、奨学金制度を利用する学生も比例して増えています。利用者が多いのが日本学生支援機構奨学金ですが、卒業後に返還する義務を負います。そこで今回は奨学金の平均貸与額と平均返済額などについて解説します。
弊社bizualでは、就活で業界選び、面接対策、ES対策などにお悩みの方向けに無料サポートを実施しております。
無料登録後、下記就活サポートが完全無料で受けられるようになっているため、就活生の方はぜひご活用ください。
bizualのサポートに無料登録しておくと・・・
- 就活生専門のコミュニティに無料参加できる!
- 面談後参加できるコミュニティで近年の就活業界の傾向などの情報を受け取れる!
- ES免除・1次面接無しの選考ルートも選べる!
- 選考対策(ES添削・模擬面接)を無料サポート!
- 面接官からの合否フィードバックを共有!
この記事の監修者
キャリアカウンセラー|秋田 拓也
厚生労働省のキャリア形成事業にキャリアコンサルタントとして参画。
大手警備会社にて人事採用担当として7年間従事の後、現職にて延べ200名以上の企業内労働者へキャリアコンサルティングを実施。
■所持資格
国家資格キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
奨学金とは
奨学金とは、家庭収入だけでは進学費用を賄えない子供をサポートするためのものです。地方自治体や企業、民間団体、大学独自の奨学金などがあり、「給付」と「貸与」の2種類が用意されています。
奨学金は種類によって併用も可能なので、上手に活用することをおすすめします。
一般的なのは日本学生支援機構の貸与型奨学金
日本で最も一般的なのが、日本学生支援機構の貸与型奨学金制度です。これは第一種奨学金と第二種の奨学金に分かれており、併用が可能です。
第一種奨学金は無利子で貸与されますが、第二種奨学金は有利子となります。また、貸与を受けるための条件も第一種と第二種では違うので注意が必要です。詳細については、以下の記事を参考にしてください。
貸与型奨学金の平均返済額は343万円
22016年3月に貸与が終了した大学生における日本学生支援機構の第二種奨学金の平均貸与額は、約343万円でした。貸与額も月額2万円から12万円の間であれば、1万円単位で設定できます。また私立大学進学者への優遇措置もあります。
- 私立大学の医学部・歯学部課程進学者には最大月額16万円までの増額が可能
- 私立大学の薬医学部・獣医学部課程進学者には最大月額14万円までの増額が可能
第二種奨学金は第一種と比べて条件が緩やかとなっており、学力基準をクリアすれば第一種との併用もできます。
貸与型奨学金の平均返済額は1万6880円
2019年3月に労働者福祉中央協議会が発表した「奨学金や教育負担に関するアンケート調査」によると、日本学生支援機構奨学金の借入総額の平均は324万3000円、毎月の平均返済額は1万6880円でした。
日本学生支援機構奨学金は返済期間が長めに設定されているため、月々の支払いだけでいうとそれほど高額ではありません。貸与額を最小限に設定することで、無理なく返済はできると考えられます。
学生の平均生活費は約188万円
2018年3月に日本学生支援機構が発表した「平成28年度学生生活調査結果」によると、学生の1年間の平均生活費は188万4200円でした。その内訳は以下の通りです。
- 授業料を含む学費全般:119万3400円
- 食費や住居費等の生活費全般:69万800円
収入は、「家庭からの仕送り」「奨学金」「アルバイト」などで賄われているようです。
奨学金の返済額に対する平均返済期間
独立行政法人日本学生支援機構の公式サイト内にある「返還期間(回数)」ページに、第一種が該当する「所得連動変換方式」と、第二種が該当する「定額返済方式」について説明されています。
利用者多い定額返還方式は、貸与総額に応じて決められた金額で返還していく方法です。支払い方法は、月賦返還または月賦・半年賦併用返還から選択できます。第二種奨学金の貸与額別の返還期間の目安は、以下の通りです。
奨学金の返還については、「奨学金貸与・返還シミュレーション」を利用すると、簡単に調べられます。こちらもぜひ、活用してみましょう。
属性別|奨学金の平均貸与額
日本学生支援機構奨学金の貸与額は、進学先が国公立大学なのか私立大学なのか、自宅から通学するのかしないのかによって、大きく変わります。
そこで日本FP協会が発行している「進学にかかるお金と奨学金の話」の平均生活費を参考に、属性別の貸与額についてシミュレーションしてみましょう。ここでは、第二種奨学金の貸与月額を参考に、必要とされる金額をまとめてます。
国公立に通う学生の平均貸与額
国立大学の年間授業料は54万円ですが、その他に教科書代や実習費が必要です。
そこで第二種奨学金の月額貸与額に基づき、ケース別に平均借入額と設定額の目安を紹介します。家賃は月額5万円と想定しています。
①学費のみを奨学金で賄う場合
自宅から国公立大学に通う場合、必要となるのは授業料や教科書代、通学定期代などです。前述した日本学生支援機構の「平成28年度学生生活調査結果」によると、国公立大学に通う自宅生の平均貸与額は以下の通りです。
- 平均貸与年額:20万2000円
- 平均貸与月額:1万6833円
月額3万円の第二種奨学金を貸与すれば、十分に間に合う計算です。月額3万円を4年間貸与された場合は、13年で返還することになります。6年間の貸与だと、返還期間が1年延びて14年となります。
②学費と家賃を奨学金で賄う場合
国公立大学への進学を機に自宅を離れる場合は、授業料だけでなく生活費の負担を考えなければなりません。国公立大学の学費は年額54万円なので、それを月割りしてシミュレーションしてみましょう。
- 学費:4万5000円
- 家賃:5万円
授業料に加えて家賃も奨学金で賄うことを考えると、第二種奨学金で月額8万円の貸与を受けると良さそうです。ただし、食費などの生活費はアルバイトで賄うことが前提です。月額8万円を貸与された場合は、4年でも6年でも20年で返還することになります。
③学費・家賃・生活費を奨学金で賄う場合
国公立大学に自宅を離れて通う学生の中には、アルバイトに追われるのではなく、きちんと学業に励みたい人もいることでしょう。
その場合は、学費・家賃・生活費すべてを奨学金で賄う必要があります。第二種奨学金の貸与上限は月額12万円ですので、この範囲内でやりくりすることになります。
月額12万円を貸与された場合も、4年でも6年でも20年で返還することになります。
私立大学に通う学生の平均貸与額
私立大学の年間授業料は文理で差が大きく、文系で年額100万円、理系で年間138万円が相場といわれています。
今回は国立大学のケースと同じように、貸与金額の設定の目安となる金額を、表にまとめてみました。借入額に対する返済期間は前述しているので、そちらと併せてご覧ください。
①学費のみを奨学金で賄う場合
前述した日本学生支援機構の「平成28年度学生生活調査結果」によると、私立大学に通う自宅生の平均貸与年額は37万6700円でした。文理それぞれの学費の平均年額を月割りると、以下の通りです。
- 文系は月額8万3333円
- 理系は月額11万5000円
月額3万円ではカバーできないため、5万円の第二種奨学金を貸与するのがおすすめです。月額5万円を4年間貸与された場合は、15年で返還することになります。6年間の貸与だと、返還期間は20年となります。
②学費・家賃を奨学金で賄う場合
私立大学への進学を機に自宅を離れる場合で、上記の授業料に加えて月額5万円の家賃を奨学金で賄うことを想定すると、第二種奨学金で月額10万円の貸与を受けるのが安心です。ただし、食費などの生活費はアルバイトで賄わなければなりません。
月額10万円を貸与された場合は、4年でも6年でも20年で返還することになります。
③学費・家賃・生活費を奨学金で賄う場合
私立大学に自宅を離れて通う学生の中にも、学費・家賃・生活費すべてを奨学金で賄いたいと考える学生はいることでしょう。
しかし、第二種奨学金の貸与上限は月額12万円です。この範囲でやりくりができる地域は限定されますので、アルバイトする必要があるでしょう。
月額12万円を貸与された場合も、4年でも6年でも20年で返還することになります。
奨学金の返済ができない人の割合は意外と多い
2017年11月に発表した「返還金の回収状況及び平成28年度業務実績の評価について」の中で、平成28年度の延滞率が7.93%だったと報告しています。
これを見る限り、大学卒業後に奨学金が返済できない人の割合は、思ったより高いと感じる人が多いでしょう。返済できない理由としては、「家計の収入が減った」「家計の支出が増えた」の2項目が高い割合を占めています。
奨学金の返済額を抑える3つの方法
日本学生支援機構では高校3年生を対象に奨学金の予約受付を行っており、大学進学後の5月から6月には指定口座に振り込まれるように配慮されています。
しかし第二種奨学金は有利子ですし、返還期間は最長で20年です。貸与額が多ければ月々の返済金額が増え、生活に影響を及ぼす可能性も否定できません。
そのため、大学卒業後の返還金額を下げる方法を知っておくことをおすすめします。具体的な方法を3つ、紹介しておきましょう。
①他の奨学金制度も比較検討する
日本学生支援機構以外の奨学金制度を利用することも、選択肢の一つです。
地方自治体が運営する、あるいは大学が独自に用意している奨学金制度の中には、給付型のものもあります。成績などの条件がある場合が多いですが、そうした制度に目を通しておくのは悪くないでしょう。
また、ひとり親家庭の場合は地方自治体の母子福祉資金で借入できる可能性があります。条件を満たせば無利子になるので、居住する市町村の公式サイトでチェックしてみましょう。
②繰り上げ返済を行う
日本学生支援機構奨学金は、返済の期間や月の返済額が決まっています。しかし、決まった金額以上に支払っても問題はありません。
そこで余裕がある時には積極的に、繰り上げ返済を行うことをおすすめします。繰り上げ返済はできるだけ早く始める方が、支払う利息が少なく済みます。月賦返還ならば、ボーナス時期にまとめて繰り上げ返済するなどの方法を実践しましょう。
③一括返済を行う
上述の繰り上げ返済と同じ理由で、一括返済をするのも1つの手段です。一括返済をすることにより、返済期間に支払う必要のある利息をカットできるのです。
大学を卒業してから奨学金の返還が始まるまでには、半年の猶予があります。貸与金額が少ない場合は、その間にお金を貯めて、一括返済してしまいましょう。
奨学金がどうしてもつらい人の対処法
大学を卒業したからといって、必ず就職できるあるいは余裕をもって返済できるだけの収入が得られる保証はありません。そのため、奨学金の返済が辛いと感じる人がいるのも事実です。そうした場合には、日本学生支援機構の制度を活用することをおすすめします。
- 毎月の返還額を半分にする「減額返還制度」
- 返還期間を延長してもらう「返還期限猶予」
以下の記事では、奨学金の返済がきついと感じた場合に実践できる方法などについても言及しているので、ぜひ参考にしてみてください。
奨学金を借りて返済する際の注意点
大学への進学率が50%を超えている現代の日本では、家庭の経済的事情により進学を断念することがないよう、奨学金制度を充実させています。しかし、貸与された奨学金は返済の義務を負います。
ここでは貸与された奨学金を返済する際の注意点について、具体的に紹介しておきます。
奨学金を借りる際の注意点
奨学金を貸与されることで、学費だけでなく、自宅外から通学する学生の家賃や生活費を賄うことはできます。しかし返済義務を負うことを考え、貸与金額をギリギリに下げてしまうと、それをアルバイトで補う必要が出てきます。
一方貸与金額が高額になると、返還時に苦労するというリスクもあります。ここでは奨学金の貸与を受ける際の注意点について、詳述します。
①アルバイトと勉強のバランスをよく考える
大学生ともなれば、アルバイトで月に10万円を稼ぐのは難しいことではありません。しかし月額10万円を稼ごうと思うと、平日・休日ともに働く必要があります。
アルバイトに追われるようになると学業に十分な時間が割けなくなりますし、講義中に疲れて眠ってしまうのは本末転倒です。アルバイトと勉強のバランスがとれるよう、配慮しましょう。
②事前に返済額のシュミレーションをする
日本学生支援機構の公式サイトでは、「奨学金貸与・返済シュミレーション」が用意されていることは前述しました。高校3年次に奨学金の予約申請を行う時に、一度試してみることをおすすめします。
自分の志望する大学の学費や生活費が必要かどうかなどを考え、金額を算出してみるのです。自分が希望する貸与額を何年かかって、月々いくらずつ返済するかを理解したうえで、申し込みましょう。
奨学金を返済する際の注意点
日本学生支援機構奨学金は、大学を卒業した年の10月から返済が始まります。猶予を求める条件を満たしていない人は、必ず返済を始めましょう。
ここでは奨学金を返還する場合の注意点について、まとめておきます。
①毎月の返済をさぼらない
奨学金の返済金額は、月額1万5000円程度のことが多いです。携帯電話料金の使用料を比較しても、それほど高い金額ではありません。
そのため、さぼらずに毎月の返済をするのが大原則です。1万5000円の返済でもキツイと感じたら、月賦半年賦返還に変更するのも一つの方法です。ボーナス時期の返済を増やすことで、返還月額を減らすことができます。
②金融機関からお金を借りて返済するのは危険
第一種奨学金と第二種奨学金を併用した人の場合、月の返済額が多くなります。そのため、銀行などの金融機関から借り入れをして、返済を一本化したいと考える人もいるようです。
しかし第一種奨学金は無利子、第二種奨学金の金利が高くても3%であることを考えると、それより高い金利の金融機関でおまとめローンを組むのはおすすめできません。返済総額を計算したうえで、判断してください。
まとめ
奨学金制度を活用することで、家庭の経済状況が厳しくても進学できる人が増えています。しかし日本学生支援機構奨学金をはじめとする貸与型奨学金は、返済の義務を負うことになります。13年から20年にわたって返済することになりますので、きちんとシミュレーションしたうえで、貸与金額を決めることをおすすめします。