近年は外資系企業だけでなく日本企業でも、年俸制を採用するところが増えています。しかし「年俸制とは?」と聞かれた時、きちんと回答できる人は少ないことでしょう。実は給与を下げるための方法として、採用している企業もあります。そこで今回は、年俸制とは何か、月給制との違いなどを解説します。
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この記事の監修者
キャリアカウンセラー|秋田 拓也
厚生労働省のキャリア形成事業にキャリアコンサルタントとして参画。
大手警備会社にて人事採用担当として7年間従事の後、現職にて延べ200名以上の企業内労働者へキャリアコンサルティングを実施。
■所持資格
国家資格キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
年俸制とは
年俸制とは、給与を1年単位で算出する体系をさします。あらかじめ決められた年収を、12ヶ月に分割して支払うというスタイルです。個人の成果や能力が反映されやすいため、採用する企業が増加傾向にあります。
ここでは年俸制以外の日本企業で多く採用されている給与体系と、比較しながら説明します。
月給制|日本社会に染みついたシステム
多くの日本企業で採用されているのが「月給制」です。毎月の基本給が決まっており、そこに一定の手当てが加えられるのが一般的です。さらに勤務先の業績や個人の成果によって、夏季並びに冬季の賞与が支給され、その総額が年収となります。
一方の年俸制は、1年の報酬があらかじめ決まっています。残業手当が加算されることはありますが、原則的に決まった年俸以外に賞与などの加算はありません。
日給月給制|ブラックな要素が強い
「日給月給制」とは、給与計算は1日ごとに行うものの、支給は1ヶ月単位という給与体系です。そして労働者が遅刻・欠勤・早退した場合には、その分を給与から控除されます。日給月給の会社であっても、会社の業績が良ければ賞与が支給される点が、年俸制とは違います。
日給月給を採用しているのは中小企業が多く、それにより資金繰りや会計の効率化を図っているようです。ブラック企業でも、よく見られる給与体系です。以下の記事で日給月給が不利なのかについて、有給や残業代の支給などの観点から解説しています。ぜひ一読してみてください。
日給制|肉体労働に多い
「日給制」とは1日の基本給を決め、実働した日数分を支給するという給与体系です。企業によって、日払い・週給・月給など支払い方法が変わります。肉体労働の仕事に多い給与体系です。
仕事をすればするほど収入が得られる点が、年俸制とは違います。
時給制|パート・アルバイトが中心
「時給制」とは1時間の基本給を決め、実働した時間数分を支給するという給与体系です。パートやアルバイト、派遣社員など、労働時間が短い雇用体系の人に適用されています。
年俸制は就業時間は正社員と同じなので、時給制とは異なります。
年俸制の多い業界
年俸制とは、前年度の業績によって年収が変動します。そのため、個人であげた成果が大きければ大きいほど、翌年の年俸があがる可能性が高いです。そのため、以下のような業界で採用されています。
- コンサルティング業界
- IT業界(エンジニア・プログラマー)
- プロスポーツ業界
- 外資系企業
近年は成果主義による査定が定着しつつありますが、中でも上記の業界は能力次第で若くても昇進や昇給が見込めます。以下の記事では年俸制の筆頭であるコンサルティング業界について、仕事の実情や適性などの解説をしています。ぜひ参考にしてみてください。
年俸制のメリットとデメリット
働き方改革により「高度プロフェッショナル制度」が生まれてから、日本企業でも年俸制を導入するところが増えています。しかし、年俸制についてきちんと理解して契約しなければ、不利益を被る可能性があります。
ここでは、年俸制のメリットとデメリットについて説明します。
年俸制のメリット
能力の高い労働者にとっては、年俸制で得られるメリットは大きいです。ここでは年俸制のメリットを2つ、紹介します。
メリット①成果次第で高収入が可能
年俸制は、労働者の年齢や勤続年数に関わらず、個人の業績と評価で年収を決定します。そのため、会社から与えられた目標を上回る成果をあげれば、翌年度の年収は大幅アップが見込めます。
また契約時に業務内容や職種について取り決めをしておくことで、望まない異動や配置転換を避けられるのもメリットです。専門スキルを持っている人には、有利な給与体系といえるでしょう。
メリット②業績に関わらず年収が確定する
年俸制は、あらかじめ企業と労働者で契約した年収を12ヶ月にわたって分割払いすることは前述しました。つまり、その年の業績がふるわなくても、年収は保障されています。
また、契約期間中にケガや病気などで働けなくなっても、それを理由に給与を減らされることもありません。
年俸制のデメリット
能力が高い労働者にとって魅力的な年俸制ですが、その分責任も重くデメリットもあります。ここでは、年俸制のデメリットについて説明します。
デメリット①成果をあげられないと次年度の年収が下がる
年俸制の労働者は、1年単位で評価されます。そのため、高い年俸をもらっていても1年間で結果を残さなければ、翌年は年収がダウンするのが一般的です。
毎年の年収が変動することで、税金やローンの支払いに苦慮する人も珍しくないので、そうしたデメリットを考慮して準備しておく必要があります。
デメリット②成果をあげても給与に反映されるのは翌年
年俸制は、契約時点で1年間の年収が確定しています。そのため、契約期間早々に大幅な目標達成をしたとしても、それがすぐに給与に反映されることがありません。
翌年の年棒交渉までに時間があると、労働者の仕事へのモチベーション低下につながることもあります。その点は、デメリットといえそうです。
年俸制で年俸以外のお金に関する疑問
個人成果主義の年俸制は、実力がある労働者にとっては有益な制度です。しかし契約を結ぶ前に、年俸制の支払いについて理解し、きちんと会社と交渉しておく必要があります。
ここでは、年俸以外のお金に関する疑問について説明します。
残業代は支払われるのか
年俸制は1年間の年収が決まっていますが、労働者が残業した場合は、労働基準法に則って残業手当を支払わなければなりません。契約時に固定残業代を年俸に含む企業も多いですが、あらかじめ定めた残業時間数を超えた分については、手当の支払い義務があります。
しかしみなし労働時間制を適用した年俸制になっている場合は、企業は残業代を支払う必要はありません。雇用契約時に、きちんと確認しておきましょう。
ボーナスは支払われるのか
年俸制で雇用している従業員に対し、ボーナスを支払うかどうかは、企業の裁量によります。賞与も含めて年俸を設定している企業の場合は、原則的には支払われません。しかし年棒を14分割して、年2回賞与として支給するケースもあります。
また企業によっては、月給制の従業員と同様に支給するところもあります。雇用契約を結ぶ前に、問い合わせておきましょう。
退職金は支払われるのか
年俸制でも、勤務先の就業規則に退職金の支払いに関する規定があれば支払われます。しかし、そうした規定がない会社の場合は、退職金が支払われない可能性が高いです。
また、年俸制は1年の年収について企業と契約を交わしていますが、労働者の自己都合で退職した場合には、働いていない期間分の給与を受け取ることはできません。しかし会社都合で雇用契約が中途解約された場合は、労働者は残存期間の賃金を請求できます。
手当は支払われるのか
年俸制であらかじめ定めるのは、1年間の給与です。しかし給与以外に、住宅手当や家族手当、通勤交通費などの手当を用意している会社が大半です。こうした手当を支給するかどうかは、会社の裁量によります。雇用契約について交渉する際に、詳しく質問しておきましょう。
年俸制で起こりうる3つのトラブル
やればやっただけ収入につながる可能性が高い年俸制は、確かに魅力的です。しかし勤務先によっては、年俸制であるがゆえにトラブルに巻き込まれるリスクがあります。
ここでは、年俸制で起こりうる3つのトラブルについて紹介します。
契約更新で年俸を理不尽に減額される
企業が従業員を査定する際、評価の対象になるのは業績だけではありません。そのため、年俸制の従業員が大きな成果をあげたとしても、契約更新時に組織内での振る舞いなどの理由をあげて、年俸を理不尽に減額されるケースが珍しくありません。
条件を提示するのは企業側なので、飲めなければ契約更新しないといわれ、減給を受け入れる人がいるのも現実です。特にブラック企業の場合、求人情報と実態が乖離しているケースが多いので注意が必要です。
年俸制なのに途中で減額される
管理職を年俸制としている企業の中には、契約期間中に降格処分にして、それを理由に月々の給与を減額されるケースがあるようです。しかしこれは、労働基準法違反です。年俸は契約期間前に労使の話し合いによって決定されているため、双方の同意なしに期間途中で減額することはできません。
ただし、就業規則に「契約期間中に役職変更があった場合には、期間中でも年棒額を変更する」という規定がある場合は減額されます。就業規則をきちんと確認しましょう。
欠勤控除を知らないと想定外の減額がある
年俸制ででも、労働者が遅刻・欠勤・早退した場合は欠勤控除をすることができます。そのため、就業規則に「欠勤控除」に関する規定がある場合には、年俸制の給与支給額が減額されます。
欠勤控除の対象となるのは本給なので、各種手当には影響はありません。就業規則を知らないと、予想外の欠勤控除に驚くことになりますので、雇用契約締結前にチェックしておきましょう。
年俸制は今後も増える可能性が高い
働き改革が進む現代の日本では、裁量労働制が普及しつつあります。その場合、月給制で採用するより、年俸制あるいはプロジェクト単位での給与支給という契約が増える可能性が高いです。職種によっては、管理職だけでなく一般社員も対象となりえますので、会社の就業規則に目を通し、対策をたてておくとよいかもしれません。
まとめ
今回は、年俸制とは何か、月給制との違いなどについて解説しました。
能力が高い人にとっては年俸制は魅力的ですが、賞与の支払いを逃れる理由になるなど、実は企業側にメリットが大きい面もあわせ持ちます。ライフプランや働き方にも関わることですので、雇用契約を結ぶ前に疑問を解消するよう心掛けることをおすすめします。