企業に役員がいることは知っていても、社長や専務、常務などの違いや地位についてはよくわからないという就活生もいることでしょう。出世を目指すなら特に、役員に関する基礎知識を身につけておくのがおすすめです。そこで今回は専務とは何か、その仕事内容や他の役員との違いについて解説します。
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この記事の監修者
キャリアカウンセラー|秋田 拓也
厚生労働省のキャリア形成事業にキャリアコンサルタントとして参画。
大手警備会社にて人事採用担当として7年間従事の後、現職にて延べ200名以上の企業内労働者へキャリアコンサルティングを実施。
■所持資格
国家資格キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
専務とは
専務の地位は、役員の中でも高いものです。小学館のオンライン大辞泉では「専務」を、以下のように説明しています。
1 もっぱら行うべき務め。また、もっぱらその務めに当たること。「専務車掌」
2 「専務取締役」の略
企業における役員と仕事内容については後述しますが、専務になると会社の取締役であるケースが一般的です。専務取締役の意味は、以下の通りです。
会社の取締役のうち、社長を補佐して会社の業務執行に当たる取締役。実業界での名称で、一般に常務取締役の上位に置かれる役付取締役。
そのため、企業経営においても強い発言権を持ちます。
専務の種類
専務は会社の取締役であることが多いと前述しましたが、他にも種類があります。
- 専務取締役/企業の社長から選任され、その補佐役として経営方針の決定と執行を行う他、会社全体の業務に対する管理・監視を担う
- 専務執行役/会社の取締役会で選任される職位で、複数選ばれることが多い。仕事内容は専務取締役と同じ
- 専務執行役員/役員から指示を受ける社員
一般的に「専務」と呼ばれる場合は、専務取締役をさします。
専務の英語表現
専務取締役は英語で、「managing director」と表現します。例文は以下の通りです。
He was promoted to a managing director.
(彼は専務取締役に昇進しました)
メールなどの自己紹介で用いる時には、「managing director of 会社名」という表記となります。
専務の法律的な意味
会社法において、「取締役」や「執行役」といった役職は記載されています。しかし、「常務」や「専務」といった役職は記載されていません。そのため、専務や常務といった役職は社内で決められてた役職ということになります。
専務の仕事内容
業界や企業によって、専務が担う仕事は異なります。しかし、一般的に担っていることが多い業務があるのも事実です。ここでは、専務の仕事内容について説明します。
仕事内容①|社長の補佐
役員の序列でいうと、「社長」「副社長」「専務」の順番になります。しかし会社の規模によっては、副社長を置かないところも多く、専務は社長の補佐役の仕事を担うことになります。
具体的には社長やその他の役員と共に、会社の経営方針を決定します。また、決定した事業計画を執行するのも、専務の仕事です。
さらに、社長と社員の仲介役や社長の業務を円滑に進める役割を担うことから、社長のブレーンともいわれます。
仕事内容②|会社の管理並びに監査
専務は事業計画を執行する際、社長よりも現場に近いところで職務にあたります。企業目標の達成に向けて、業務全体の指揮をとるのが専務の仕事の一つです。
さらに、きちんと会社が運営されているかどうか、管理と監査の役目も担います。代表取締役への選出なども仕事内容の一つです。
そのため、従業員と直接関わる機会は少ないのが普通です。
その他
会社にもよりますが、専務が以下の仕事を担うこともあります。
- 社長と社員の仲介役となる
- 現場の意見を吸い上げて、取締役会に提案する
- 企画戦略の作成を補佐する
- 経営に関する決定を下す
つまり、社長の仕事が捗るよう、いろいろな段取りをするのが、専務の仕事だということです。
専務の平均年収は約3,190万円
専務が企業経営のうえで、大きな責任を果たしていることは理解していただけたことでしょう。その責任を果たすことでどのくらいの役員報酬を得ているのか、気になる人も多いはずです。
専務の給料
専務の給料は一般的には一年の給料が決定されている年俸制です。この年俸を12等分、または16等分したものを1月に受けとります。
政府統計窓口e-Statにある「2019年(令和元年)民間企業における役員報酬(給与)調査/統計表」によると、専務の企業規模別、役名別平均年間報酬は、以下の通りです。
すべての規模の専務の平均年間報酬は、3,189万6,000円となっています。
また、専務は年俸制であることから企業によっては残業代が出ないということもあります。
専務の福利厚生
専務は、一般的な社員のが労働者であるのに対し、使用者となります。
そのため、労災が適用されないということもあります。ただし、これは業務内容などによって変わってくるため、キャリアアップを目指す際には一度確認しておきましょう。
その他の役職
取締役会への参加が義務付けられる役員は、他にもいます。そして役職によって、仕事内容も給与も異なります。ここでは、専務以外の役職について詳述します。
会長
会長は法的に定められた用語ではないので、会社によって地位が異なります。大手企業を基準に考えると、経営の最前線からは退いているものの、対外的な活動を担っている役職です。以下では、その役割と給料について説明します。
会長の役割
位置づけは社長の上で、代表取締役会長でない限りは、名誉職です。社長時代の経験を生かして後任にアドバイスをする、後見人となるという役割を担います。
会長の給料
前述した「2019年(令和元年)民間企業における役員報酬(給与)調査/統計表」によると、会長の企業規模別、役名別平均年間報酬は、以下の通りです。
すべての規模の会長の平均年間報酬は、6,354万5,000円となっています。
社長
社長とは、社内外に対する企業の代表として、会社全体の業務執行を率いる役職をさします。しかし、契約など社外に関する決定権を握っているのは「代表取締役」なので、正しい役割を理解する必要があります。
社長の役割
社長の役割は、以下の6つです。
- 会社の経営方針や戦略を決定する
- 会社をマクロに管理する
- 業務遂行しやすいしくみをつくる
- 社員の能力に合わせ、部署に配属する
- 会社に関わるすべてのことに責任を持つ
- 将来の後継者を育成する
代表取締役ではない社長の場合は、社内の事柄における決定権を持ちます。
社長の給料
「2019年(令和元年)民間企業における役員報酬(給与)調査/統計表」で発表されている、社長の企業規模別、役名別平均年間報酬は、以下の通りです。
すべての規模の社長の平均年間報酬は、4,622万1,000円となっています。
常務
常務は社長の補佐役として、日常業務に関わる役職のことです。つまり従業員との関りが深く、業務執行を担います。
常務の役割
企業における常務の役割は、以下の通りです。
- 取締役会に参加して経営の一端を担う
- 担当する現場を直接指導する
- 現場を管理しつつ、自分も業務の一部を担当する
常務は専務より現場に近く、取締役会では事業遂行に関する報告をする役目も担います。
常務の給料
同様に「2019年(令和元年)民間企業における役員報酬(給与)調査/統計表」で確認すると、常務の企業規模別、役名別平均年間報酬は、以下の通りです。
すべての規模の常務の平均年間報酬は、2,461万4,000円となっています。
専務と常務はどちらが偉いのか
専務と常務ではどちらが偉いのか、疑問に思う人もいるはずです。一般的には、常務より専務の方が職位は上です。これは、専務と常務の仕事内容を比較すれば一目瞭然です。
- 専務/社長の補佐役としてその側で業務を行い、企業全般の業務を管理・監査する
- 常務/社長の補佐役として担当する部署の現場近くで、日常業務の執行・管理をする
管理する領域が社長に近い分、専務の方が職位が上となります。
取締役と執行役の違いとは
企業の中には、専務を含めた「取締役」以外に「執行役員」をおくところもあります。役員と聞くと、取締役を連想しがちですが、2つの職位には大きな違いがあります。ここでは、取締役と執行役の違いについて説明します。
取締役の特徴
取締役とは株式会社を設立するにあたり、一定数を置くように会社法で定められている役職者をさします。取締役の特徴は、以下の通りです。
- 取締役は株主総会で選任される
- 企業の経営方針の決定・執行などの権限を持つ
- 原則として1名以上、取締役会設置会社においては3人以上必要
- 任期は2年
- 定年がない
- 本人の意思でいつでも辞任できる
- 株主総会で普通決議によって解任されることもある
取締役の中でも代表権を持つのが、「代表取締役」です。
執行役員の特徴
執行役員とは、取締役直属の部下として、決定された事業計画を実行する従業員のことです。執行役員の特徴は、以下の通りです。
- 企業の経営方針の決定・執行などの権限は持たない
- 組織内のリーダー的存在である
- 役員報酬ではなく、給与が支給される
- 定年がある
執行役員は、経営と業務執行を分離することで、不正が起こるリスクを避けるために生まれた職位です。また執行役員を組織内におくことで、現場での意思決定をスピーディーに行えるというメリットもあります。
まとめ
今回は専務とは何か、その仕事内容や他の役員との違いについて解説しました。
専務は社長の近くで、補佐役として企業運営に関わる様々な責任を担う役職です。雇用保険の適用外なので、労働基準法で守られることもありません。しかし、会社にとって重要なポストであり、それを目指す会社員もたくさんいます。これを機会に、役職の違いも覚えておきましょう。