ビジネスシーンにおいて、「滅相もございません」という表現を耳にしたことがあるでしょうか。頻繁に使う言葉ではありませんが、覚えておくことで表現の幅を広げることができます。今回は「滅相もない」という言葉の意味やその言葉の由来、また相手に「滅相もない」と言われたときの返し方について徹底解説していきます。
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この記事の監修者
キャリアカウンセラー|秋田 拓也
厚生労働省のキャリア形成事業にキャリアコンサルタントとして参画。
大手警備会社にて人事採用担当として7年間従事の後、現職にて延べ200名以上の企業内労働者へキャリアコンサルティングを実施。
■所持資格
国家資格キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
「滅相もない」とは
まずは「滅相もない」という言葉の意味や由来などについてご説明していきます。
「滅相」の読み方
「滅相もない」は「めっそうもない」と読みます。
日常生活ではなかなかなじみのない言葉なので、読み方に悩む人も多いかもしれません。
「滅相もない」の辞書的意味
続いては、「滅相もない」という言葉の意味についてです。
以下に小学館が提供するデジタル大辞泉を引用します。
とんでもない。あるべきことではない。相手の言を否定するときにも用いる。
詳しい例文については後の項目に譲りますが、大辞泉にもあるように、「滅相もない」という表現は相手の言葉に対して「とんでもない」と否定するあるいは謙遜するときに使用されます。
「滅相もない」の由来
「滅相もない」という言葉の意味については理解していただけたかと思いますが、続いてはその由来について解説していきます。
そもそも、この「滅相」という言葉について、再びデジタル大辞泉を引用します。
滅相は以下3つの意味があります。
1、四相の一。因縁によって生じた一切のものが現在の存在から滅し去り、過去に入ること。
2、真如が常住で寂滅であり、生死がないこと。
3、あるはずのないさま。とんでもないさま。
1と2はいずれも仏教用語としての意味です。
仏教では「四相」といって、この世にある物事や生物の移り変わりを4段階で表します。
物事は因縁によって「生じ」、「持続し」、「変化し」、そして最後は「消えてなくなる」というのが四相の考え方で、「滅相」は物事が消えてなくなる最後の段階を指します。
「滅相」は人間なら誰しも避けては通れないものですが、生きている人間や生き続けたいと願う人間にとっては、「滅相」はあるはずのないことであり、思いもよらないことです。
そこから転じて、滅相は3の「あるはずのないさま」、「とんでもないさま」と意味を持つようになりました。
「滅相もない」の英語表現
英語で「滅相もない」と言いたいときは以下のフレーズを使うと良いでしょう。
- Not at all!
- No way!
- Out of the question
“Not at all!”および“No way!”は相手が言ったことに対して謙遜する気持ちを表すときに使用するフレーズです。
例えば、You’re a really good cook!(すごく料理が上手だね!)と褒められたときに、「そんなことないよ」のような返事をしたいときはこの表現を使うことができます。
また、“No way!”は“Not at all!”よりもカジュアルな表現で、友達同士など近しい間柄の人に対して使用します。
一方、“Out of the question”は否定の意味を持ち、謙遜するときには使いません。ニュアンスとしては、「無理だ」あるいは「不可能だ」といったところです。
「滅相もございません」は誤用なのか
「滅相もない」を丁寧な表現にすると、どのようになるでしょうか。
多くの方は「滅相もございません」だと思ったのではないかと思いますが、実際のところ、その表現は正しいのでしょうか。
本項では「滅相もございません」が誤用なのかということについて解説していきます。
「滅相もございません」が誤用と言われる理由
滅相もございませんの「ございます」は、漢字では「御座います」と書き、「ある」の意の丁寧語です。
この「ある」は、「クロークは受付の右にございます」のように、動詞としての「ある」を丁寧にする働きをする場合と、「あけましておめでとうございます」のように補助動詞としての「ある」に丁寧にする働きをする場合の2つのパターンがあります。
ここで重要なポイントが、「ございます」は「ある」という動詞を丁寧にする働き持っているということです。
逆に言えば、「ある」の意を持つ動詞でなければ、「ございます」に置き換えることはできません。
では、いよいよ「滅相もない」について考えてみましょう。
「滅相もない」は、それ全てがひとつの慣用句であり、動詞ではありません。
以上の理由で、「滅相もございません」は誤用であると言われることがあります。
文化庁は「滅相もございません」は問題ないとしている
文化庁が2007年に発表した「敬語の指針」の中で、「とんでもございません」という敬語の是非について以下のように記述しています。
「とんでもございません」(「とんでもありません」)は,相手からの褒めや賞賛などを軽く打ち消すときの表現であり,現在では,こうした状況で使うことは問題がないと考えられる。
ここで取り上げられている「とんでもございません」は「滅相もございません」と同じく、一語の形容詞として考えられており、また謙遜の意味を持つ言葉です。
そのため、「滅相もございません」という表現も、現在では一般化している、相手の言葉を謙遜して否定する言葉であり、問題なく使用できると言えます。
使い方別|「滅相もない」の例文
「滅相もありません」という言葉への理解を深めていただいたところで、続いてはいよいよ例文を読んで、実際にどのような場面でこの表現が使われているのかについて学んでいきましょう。
前述のように、「滅相もない」は相手の言葉に対する否定と謙遜の2つの意味を持ちます。
それぞれ例文をひとつずつご紹介しますので、ご自身で使うときの参考にしてみてください。
謙遜する場合
まずは「滅相もない」を謙遜として使用する場合です。
例文
「君の心遣いに感動したよ。是非礼を言わせてほしい」
「お礼なんて滅相もない。当然のことをしままでです」
ポイント
ビジネスシーンにおける「滅相もない」は、このように謙遜を表す場合が大半です。
この表現を使う場面は、自分に関することに対して、褒められたり、感謝をされたときです。
褒められたときにその言葉を肯定すると、謙虚さがなく、自信過剰なように思われてしまう場合があります。
そのため、「滅相もない」という言葉を用いてやんわり相手の言葉を否定することで、慎ましさや礼儀正しさを示すのです。
否定する場合
続いては「滅相もない」を否定の意味で用いる場合です。
例文
冗談だなんて滅相もない。私は本気です。
ポイント
この例文では、「滅相もない」は強い否定を表します。この場合ですと、冗談だなんて「あり得ない」といったところです。
後述もしますが、使う場面によっては、相手の言った言葉に対して批判的なニュアンスを持つ場合もあるので、使用の際は注意が必要です。
謙遜なのか否定なのかの判断は、前後の文脈から判断することができます。
「滅相もない」を使う際の注意点3選
続いては「滅相もない」を使う際の注意点についてです。
ここまでにご覧いただいた通り、「滅相もない」は日常的に使う言葉ではありません。しかし、だからこそ、曖昧に理解したまま使用してしまいがちです。
「滅相もない」は誤った場面で使ってしまうと、相手に誤解を与える表現でもあります。使用するときは以下の点に注意をしましょう。
注意点①|「滅相もございません」を誤用と感じる人もいる
「滅相もございません」という表現は、「滅相もない」を丁寧に言い換えた言葉で、敬語として問題ない表現であると文化庁も発表していますが、違和感を覚える人がいることもまた事実です。
そのため、上司や取引先とのやり取りをする上で、正しい言葉遣いを意識するのであれば、避けた方が無難かもしれません。
日本語としての正しさを意識するのであれば、「滅相もないことでございます」と言い換えるのが良いでしょう。
注意点②|強い否定の意味になる場合がある
「滅相もない」は前述のように、謙遜を表す場合と否定を表す場合の2つの使い方があります。
そのため、使う場面によっては、謙遜したつもりが、相手に対して批判をしたような印象を与えてしまったということにもなりかねません。
相手は純粋な気持ちで褒めてくれているのですから、謙遜しすぎて強めに否定をしてしまうことのないように、注意しましょう。
「滅相もない」という表現が強い否定になってしまいそうな場面では、後述する「滅相もない」の言い換え表現などを利用して、否定のイメージを緩和させるのも良い手段です。
注意点③|「滅相もない」はやや堅い表現
「滅相もない」はビジネスシーンなど、フォーマルな場面で使用されることが多く、相手にかしこまった印象を与える言葉です。
そのため、友人同士など、ある程度近しい関係の相手に使うと、違和感を与えてしまう可能性があります。
そのため、「滅相もない」を使用するのはフォーマルな場面にしましょう。
もう少しカジュアルな言葉で謙遜の気持ちを表したいという方は、次項の言い換え表現を参考にしてみてください。
「滅相もない」の言い換え表現
前述の通り、「滅相もない」は、ビジネスシーンなどのフォーマルな場面で使用されることが多い表現です。
そのため、言葉の持つイメージとしては堅く、使うシーンが限られていると言っても良いでしょう。
また使用する状況によっては強い否定とも取れるので、むやみに使うことのないよう注意が必要な言葉でもあります。
そこで、本項では「滅相もない」の言い換え表現についてご紹介していきますので、もう少しカジュアルに謙遜の気持ちを表現したいという場合に参考にしてみてください。
①とんでもない
「とんでもない」は「滅相もない」と同様に、謙遜、否定、批判の3つの意味をもつ表現で、例えば以下のように使用します。
- 「料理上手だなんてとんでもない。君に比べたらまだまだだよ」
- 「嘘だなんてとんでもない。僕は確かにこの目で見たんだ」
- 「何を言い出すかと思えば、UFOを見ただなんて、そんなとんでもないこと言わないで」
しかし、「滅相もない」よりはカジュアルな表現とされており、目下の人にも違和感なく使用することができます。
なお、「とんでもない」は「滅相もない」と同様の理由で、丁寧な言い換えである「とんでもございません」が誤用と見なされることもある表現です。
文法としての正しさを優先したいのであれば、「とんでもないことでございます」を使用しましょう。
②恐縮です
「滅相もない」同じく謙遜したいときは、こちらの「恐縮です」を用いることができます。
「恐縮です」はビジネスシーンにおいては、「滅相もない」よりも使用される表現で、相手に迷惑をかけたり、あるいは賞賛されたことを申し訳なく思う気持ちを表します。例えば、以下のような形で使用することができます。
- お褒めの言葉をいただき恐縮です。
- 本日は遠いところご足労いただきまして、誠に恐縮です。
「恐縮です」は謙遜するときにも使用できますが、その他にも感謝や謝罪、依頼をする際にも用いられる便利な表現です。
しかし、使いやすい分、安易に使用されやすい傾向にありますので、多用は避けましょう。
③あり得ない
最後は否定、あるいは批判を意味する「滅相もない」の言い換え表現です。例えば、以下のように使用すると、強い否定や批判を表現できるでしょう。
- 「頭の良い君がカンニングをするなんてあり得ないよ」
- 「彼はお酒が飲めないのに、無理やり飲ませるなんてあり得ない」
また、「あり得ない」は非常にカジュアルな表現ですので、ビジネスシーンにおいては「起こり得ない」などと置き換えましょう。
「滅相もない」に関する疑問
最後は「滅相もない」に関する疑問についてお話ししていきます。
疑問①|「滅相もない」は目上にも使えるのか
結論としては、「滅相もない」は、むしろ目上の方にこそ使用する表現と言って良いかと思います。
前述のように、「滅相もない」はビジネスシーンなどフォーマルな場で使われる表現です。
「滅相もない」という言葉を聞いて、耳慣れないと感じる方が多いことからも、決して日常的に使用するカジュアルな言葉ではないことをご理解いただけるかと思います。
「滅相もない」を使用するときは、目上の方に対して礼儀正しさやへりくだった気持ちを表したいときに使用しましょう。
疑問②|「滅相もない」への返し方はどうすればいいのか
「滅相もない」は謙遜の意味で用いられる表現ですので、それ対して何かしらの返答をする必要はありません。
さらりと流すのも大人のマナーと言えます。
しかし、心から褒めたにもかかわらず、お世辞として受け取られてしまい、「滅相もない」と流されてしまうのは悲しいもの。
そんなときは「本当にそう思っていますので、ご謙遜なさらないでください」など、念押しする一言を付け加えると好印象を与えられるでしょう。
まとめ
「滅相もない」は仏教用語を由来とする言葉で、否定や謙遜の気持ちを表す表現です。ビジネスシーンでは後者の使い方をすることは多く、相手から褒められたときや感謝を伝えられたときに「滅相もございません」のように使用することができます。
正しい使い方について理解をしておくことで、スマートに相手に謙遜の気持ちを伝えることができます。