就活をするにあたり、初任給は応募を決める要素の一つでしょう。しかし、初任給と手取り額は異なるため、就職を機に一人暮らしを始めようと考えている人は注意が必要です。そこで今回は、初任給と手取り額の違いや2019年度の大卒の平均初任給、大卒初任給ランキングなども交えながら解説します。
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この記事の監修者
キャリアカウンセラー|秋田 拓也
厚生労働省のキャリア形成事業にキャリアコンサルタントとして参画。
大手警備会社にて人事採用担当として7年間従事の後、現職にて延べ200名以上の企業内労働者へキャリアコンサルティングを実施。
■所持資格
国家資格キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
初任給の額面と手取り
初任給と聞くと、基本給だけをイメージする就活生もいることでしょう。しかし実際には、様々な手当てを含めた総額をさします。そして、手取り額は初任給より低くなります。
ここでは、初任給の額面と手取り額の違いについて説明します。
額面と手取りの定義
初任給の額面と手取り額が違うことは、前述しました。ここでは「額面」と「手取り」それぞれの定義について説明します。
額面の定義
初任給の額面とは、基本給に通勤交通費や住宅手当・残業手当といった諸手当を加算した金額のことです。給与明細でいうと、総支給額の欄に書かれている総額をさします。
- 初任給の額面(総支給額)=基本給+諸手当
企業によって、あるいは家族構成によって支給する手当は異なります。就活の際には、どのような手当てが支給されるのかも、きちんとチェックしておくことをおすすめします。
手取りの定義
手取り額とは、前述した額面給与(総支給額)から、決められた控除額を引いて残った金額のことです。実際に指定した銀行口座に振り込まれるのは、手取り額となります。
- 手取り額=額面給与(総支給額)-控除額
額面給与から差し引かれる控除内容については、次章で詳述します。
額面から控除されるもの
初任給に限らず、額面給与から控除されるものがあります。それは「社会保険料」と「税金」です。ここでは、それぞれの内容について詳述します。
①社会保険料
社会保険料には、「健康保険料」「厚生年金保険料」「介護保険料」「雇用保険料」「労災保険料」があります。それぞれの内容を以下の表にまとめました。
ただし初任給の場合は、介護保険料を控除されることはありません。それぞれの保険料における、個人負担分の算出方法の目安は以下の通りです。
- 健康保険料:報酬月額×9.90%の1/2
- 厚生年金保険料:報酬月額×18.30%の1/2
- 介護保険料:報酬月額×1.73%の1/2
- 雇用保険料:報酬月額×(3/1,000)
- 労災保険料:企業が負担するので控除はない
参考:「平成31年度4月分(5月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)」
「平成31年度の雇用保険料率について」
居住地域や加入する健康保険によっても違いがあります。公務員の場合は、 国家公務員共済・地方公務員共済・私立学校教職員共済に加入するので、保険料率などが異なります。 詳しくは勤務先に問い合わせてください。
②税金
毎月の給与から控除される税金には、「所得税」と「住民税」があります。それぞれの内容を、以下の表にまとめました。
- 所得税
所得税は、額面給与から社会保険料や非課税の所得、様々な所得控除を引いた「課税所得」に決められた税率をかけることで求められます。税率の詳細は、国税庁の「平成31年度源泉徴収税額表」を参照してください。
また、所得控除で最も関わりが深いのが課税者全員が対象の「基礎控除」ですが、2019年までは一律38万円でした。それが2020年以降は課税所得が2,400万円以下の人は一律48万円に引き上げられます。
- 住民税
一方の住民税は、都道府県民税と市町村税の両方が徴収されます。住民税には、前年度の所得に応じて税率が代わる「所得割」と、課税額が一律で決められている「均等割」があります。
ここでいう所得とは、総支給額から社会保険料を控除した金額をさします。そして税率は、居住する地方自治体によって異なります。
初任給と手取りに関する基礎知識
4月の給料日に銀行口座に振り込まれた額面を見て、社会人になったことを実感する人も多いことでしょう。しかし、その手取り額が翌月以降も続くことはないので注意が必要です。
ここでは、初任給とその後の給料の手取り額の違いについて説明します。
初任給の翌月の方が手取り額が減る
給料の手取り額は、初任給より翌月の給料の方が少なくなります。そのため、初めての手取り額を基準に生活費を計算するのはおすすめできません。ここでは、なぜ初任給より翌月の給料の方が手取り額が減るのかについて説明します。
例①|初任給の手取り
初任給の額面から控除される社会保険料は、「雇用保険料」と「所得税」だけです。初任給の額面給与が21万円で扶養家族なしと想定し、手取り額を算出してみましょう。
- 雇用保険料:210,000×(3/1,000)=630円
- 所得税:210,000-630=209,370円の場合は5,480円
- 手取り額:210,000-630-5,480=203,890円
参考:「平成31年度源泉徴収税額表」
つまり初任給の総支給額が21万円の場合、手取り額は20万3,890円となります。
例②|入社翌月の手取り
入社翌月になると「雇用保険料」並びに「所得税」に加えて、前月の総支給額を基準に計算された「健康保険料」と「厚生年金保険料」も控除されます。同様に初任給の額面給与が21万円で扶養家族なしと想定し、手取り額を算出してみましょう。
- 雇用保険料:210,000×(3/1,000)=630円
- 健康保険料:210,000×9.90%×(1/2)=10,395円
- 厚生年金保険料:210,000×18.30%×(1/2)=19,215円
- 所得税:210,000-630-10,395-19,215=179,760円の場合は4,050円
- 手取り額:210,000-630-10,395-19,215-4,050=175,710円
参考:「平成31年度源泉徴収税額表」
初任給の手取り額と比べると、2万8,180円も少なくなることがわかります。
手当がつくと控除額も変わる
企業によっては、通勤交通費以外にも残業手当や住宅手当などがつくところがあります。こうした手当がつくと、控除額にも影響が出るのです。
ここでは、手当がつくと手取り額がどう変わるのかについて説明します。
社会保険料と税金がかかるもの・かからないもの
企業では様々な手当を支給しており、内容によって社会保険料や税金を算出するうえで、税率がかかるものとかからないものに大別されます。詳細を以下の表にまとめました。
通勤手当は社会保険料では報酬とみなされますが、税金は上限はあるもののかからないなどの違いがあるので、覚えておきましょう。
例③|手当がついた入社翌月の手取り
入社翌月になると、手取り額が変わることは前述しました。そこで基本給が21万円で扶養家族なし、通勤交通費1万円と住宅手当が3万円支給されていると想定した場合の手取り額を、算出してみましょう。
- 雇用保険料:250,000×(3/1,000)=750円
- 健康保険料:250,000×9.90%×(1/2)=12,375円
- 厚生年金保険料:250,000×18.30%×(1/2)=22,875円
- 所得税:240,000-750-12,375-22,875=204,000円の場合は4,910円
- 手取り額:250,000-750-12,375-22,875-4,910=209,090円
参考:「平成31年度源泉徴収税額表」
このように、手当が加算されることでも社会保険料の個人負担や税金の徴収額が上がりますので、覚えておいてください。
初任給の支払い時期は異なる
新卒採用は、4月入社が一般的です。しかし同じ4月に入社しても、初任給の支払い時期は企業によって異なります。これは、企業によって給与の締め支払いが違うからです。月末締め・翌月25日支払いで給与計算する企業において、初任給の支払い時期として考えられるパターンは以下の通りです。
- 4月25日に基本給だけを初任給として支給し、手当は翌月から支払い
- 5月25日に初任給として全額支払い
内定後の通知書類もしくは入社後に企業と結ぶ雇用契約書に明記されているはずですので、事前に確認しておきましょう。
初任給の平均額とランキング
厚生労働省が発表した「令和元年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況」によると、2019年度の大卒新卒者の初任給の平均は21万200円でした。大卒の初任給は6年連続でアップしており、上昇傾向にあるといえます。
また、日本経済新聞が2019年4月22日に更新した「初任給ランキング2019」によるランキングは、以下の通りです。
就活が売り手市場になっていることから、優秀な人材を確保したい企業の初任給がアップする傾向が強くなっています。
以下の記事では学歴別・企業規模別・産業別における初任給の違いや、大卒初任給ランキング、就活生に人気の企業の初任給ランキングが紹介されているので、ご一読ください。
まとめ
今回は、初任給と手取り額の違いについて解説しました。初任給と翌月の給料では手取り額が変わると知っていれば、お金の使い方も工夫できるはずです。支給される手当によっても控除額が変わるので、給与明細をもらったら、しっかり確認する習慣をつけることをおすすめします。