入国審査官は激務?「辛い」「辞めたい」評判の真相や激務の理由を解説

入国審査官は仕事が忙しくなりやすく、訪日外国人の増加に伴い、在留資格審査や違反審査といった業務で激務さを感じやすくなっています。しかし、日本の国益を守るというやりがいや待遇面などのメリットもあります。今回は入国審査官のメリット・デメリットの両面をお伝えします。

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この記事の監修者

キャリアカウンセラー|秋田 拓也

厚生労働省のキャリア形成事業にキャリアコンサルタントとして参画。
大手警備会社にて人事採用担当として7年間従事の後、現職にて延べ200名以上の企業内労働者へキャリアコンサルティングを実施。

■所持資格
国家資格キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)

入国審査官の激務度は仕事によって異なる

入国審査官の仕事は次の3つに分かれます。仕事によって激務度が異なるため、まずはそれぞれの仕事内容を確認していきましょう。

  • 出入国管理
  • 在留資格審査
  • 違反審査

出入国審査では、主に日本へ入国する外国人のパスポートやビザを確認する仕事です。また、入国する目的や滞在期間なども審査します。同時に、日本人が外国に出国・帰国する際も、入国審査官が審査を行います。

在留資格審査では、滞在期間を延長したいと申し出る外国人の審査を行います。入国管理法に則り、期間延長によって日本へ不利益がないかをチェックするのが基本です。

違反審査は、不法入国者に対しての処罰や対応を検討します。不法入国者は入国警備員から引き渡しを受け、審査の内容によっては強制退去の手続きがとられます。

入国審査官が激務と言われる理由

入国審査官の仕事は、激務になりがちという評判をよく耳にします。激務になりやすい理由として、主に次の5つの理由が考えられます。

  • 理由①|世間の休日こそ忙しい
  • 理由②|生活が不規則
  • 理由③|訪日外国人の増加に伴い業務も増加
  • 理由④|審査では多くの書類を処理する
  • 理由⑤|不法入国者・滞在者の対応が大変

それぞれの理由について、以下で詳しくお伝えしていきます。

目次

理由①|世間の休日こそ忙しい

入国審査官は、連休や休日に休みを取れるわけではありません。世間の休日こそ忙しくなりやすいため、激務と感じることも多くなります。

入国審査官でも、空港などの24時間体制の現場で働くときは、シフト制が採用されることが一般的です。シフト制の場合、土曜・日曜でも出勤が必要な場合があり、働く時間にバラつきが生まれやすいという欠点があります。

理由②|生活が不規則

シフト制の入国審査官の仕事は、生活が不規則になりがちです。シフト制の場合、土曜や日曜に勤務する必要があるほか、働く時間帯もバラバラで生活の規則性が失われてしまいます。

入国審査官は国家公務員にあたるため、週休二日制や固定勤務時間などの制度が適用されます。しかし、勤務先によっては生活が不規則となり、激務に感じやすくなります。

理由③|訪日外国人の増加に伴い業務も増加

日本政府観光局の「訪日外客数・出国日本人数データ」によると、2018年の訪日外国人は3,119万人を記録しています。5年前の2013年と比べると、その数は3倍にもなっており、今後も増加することが予想されています。

訪日外国人が増えるほど、当然ですが入国審査官の仕事も忙しくなります。特に、空港では審査官一人で担当する訪日客の数も増えるため、激務さを感じることも多くなるでしょう。

理由④|審査では多くの書類を処理する

審査では多くの書類を処理する必要があり、煩雑な手続きが大半です。特に、在留資格審査や違反審査の場合、業務量が多すぎて残業になるケースもあります。

たとえば、日本人と結婚した外国人の在留資格「日本人の配偶者等」を審査するには、戸籍謄本や結婚証明書、住民票など様々な書類を確認します。書類だけでは不明な点は、電話や面接で問い合わせることもあります。

理由⑤|不法入国者・滞在者の対応が大変

入国審査官は、不法入国者や不法滞在者の対応が大変で、激務と感じるケースもあります。訪日外国人の数が増えるに従って、不法入国や安全を脅かす入国者のリスクも高まっています。

国際的なテロの脅威も増すなか、日本の安全を守る入国審査官の重要性は年々高まっています。膨大な数の訪日客を相手にしながら、冷静・迅速に犯罪者を見抜く判断もしなければなりません。

入国審査官で特に激務なのは違反審査

入国審査官で特に激務なのは、違反審査の仕事です。不法入国者に対する処罰や強制退去の手続きを行う仕事となります。激務さを感じやすい理由は、先ほどお伝えした理由③~⑤が当てはまります。

  • 訪日外国人の増加に伴い業務も増加
  • 審査では多くの書類を処理する
  • 不法入国者・滞在者の対応が大変

今後はますます訪日外国人が増えるとともに、テロへの脅威も高まっていくことでしょう。違反審査官としては、業務のスピードと脅威を未然に防ぐ審査力の双方が求められるため、今まで以上に忙しさを感じると予想されます。

入国審査官は激務な一方、いいところもある

入国審査官の仕事は激務ではありますが、同時にメリットの面もあることを忘れてはいけません。仕事のやりがいは高く、給与や待遇面でも恵まれていることもあるため、以下の4つのメリットもご確認ください。

①高度な専門知識を修得可能

入国審査官は、入国管理法や難民認定法を活用して仕事を進めていくため、法律に関する高度な専門知識を修得することができます。

また、入国審査官になると、「初等科教育」や「語学委託研修」など様々な研修を受けます。研修では、法律や語学、マネジメントスキルなどを学ぶことが可能です。転職にも有利なスキルなので、キャリアアップにも適しています。

②海外と接点があり英語も活用できる

入国審査官は数多くの外国人を相手にするため、高度な外国語スキルが欠かせません。なかには英語を話せない外国人もいるので、幅広い語学を修得しておく必要があります。

就職後に実施される「語学委託研修」では、英語や中国語、朝鮮語などの言語の修得を目標とします。さらに、3ヶ月ほど語学学校に通う実地研修もあるので、短期間で外国語を身につけることができるでしょう。

③社会貢献度が高くやりがいがある

入国審査官で大切なことは、いかに日本への脅威を防ぎ、国益を守ることができるかにかかっています。事実、入国審査では、不法に日本へ入国する外国人を発見できたり、現地調査で虚偽申請を見つけることも可能です。

「日本の安全を守る」という大義があるため、仕事を行うやりがいも感じやすいでしょう。

④公務員で安定している

入国審査官は国家公務員にあたります。採用には、国家公務員採用一般職試験の合格が必須ですが、安定感があり、待遇も恵まれている点が特徴です。

平均年収は600~700万円で、一般的な中小企業に比べて給与の心配はいりません。基本的な仕事時間は8時半~17時までと定められており、週休2日制が適用されます。

入国審査官の働き方改革の現状

一般的な企業と同じように、入国審査官も働き方改革が徐々に進展しつつあります。ただし、出入国審査と在留資格・違反審査では、それぞれの業務によって内情が異なります。

出入国審査業務

日本経済新聞の「2017年より羽田空港で顔認証による帰国手続きが開始」によると、パナソニックや大手電機メーカーを筆頭に、入国審査を効率的に行う顔認証システムの開発が進んでいます。

2018年11月には、福岡空港の出国審査場で顔認証システムを使ったゲートが開通しました。日本人の出入国に関しては、手続きを完全に無人化する予定です。

こうしたAIシステムなどを活用することで、入国審査手続きの所要時間を短くすることができ、審査員の業務効率を高めることに繋がります。

在留資格審査・違反審査

法務省の「日本における不法在留者は前年比10%以上増加している」によると、2019年1月1日時点の不法残留者は7万4,167人となり、1年前に比べて11.5%も増加しています。

訪日外国人に加えて外国人材の登用も積極化し、今後はますます中長期的な滞在者が増えていくことでしょう。出入国審査に比べて、書類や電話審査などの煩雑な手続きが多いため、激務さが緩和されるのはしばらく先のこととなりそうです。

入国審査官になる方法

入国審査官になるには、次のようなステップを踏んでいくことが一般的です。

  • ①国家公務員採用一般職試験に合格
  • ②地方入国管理局での面接に合格
  • ③入国管理局職員(法務事務官)として働く
  • ④約3~8年の実務経験を経て入国審査官に昇格する

入国審査官は、国家公務員のなかでも専門職や総合職ではなく、一般職からステップアップしていくことが特徴です。

ただし、一般職の試験では法律や行政、経済学といった内容の設問が多くなっています。そのため、大学のなかでも法学部に入ると、有利に試験を受けることが可能です。

また、入国審査官になると高度な外国語や異文化理解が求めらるため、国際コミュニケーションや異文化コミュニケーションが専門だと強みになるでしょう。

まとめ

入国審査官の仕事は、特に在留資格審査や違反審査の業務で激務になりやすい傾向にあります。訪日外国人の数も劇的に増え続けているため、仕事のスピードや正確な審査力が求められます。

一方、入国審査官には仕事のやりがいや待遇面などで多くのメリットもありました。激務というデメリット面ばかりではなく、メリットの面も意識してキャリアプランを考えてみてください。

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