残業時間の上限は何時間?|労働基準法に基づいた上限を徹底解説!

労働基準法で残業時間の上限は決まっています。今回の法改正で残業時間の上限が正式に定められ、違反した場合は罰則が科されるようになりました。本記事では、労働基準法が定める残業時間の上限を解説します。1日の労働時間の上限や年間の残業時間の上限など、場合による労働時間のルールを詳しく見ていきましょう。

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この記事の監修者

キャリアカウンセラー|秋田 拓也

厚生労働省のキャリア形成事業にキャリアコンサルタントとして参画。
大手警備会社にて人事採用担当として7年間従事の後、現職にて延べ200名以上の企業内労働者へキャリアコンサルティングを実施。

■所持資格
国家資格キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)

労働基準法における労働時間

労働基準法は労働者を保護するために、最低の労働条件を定めたものです。使用者はたとえ労働者が合意したとしても、労働基準法で定められた基準を外れた条件で労働をさせてはいけません。

ここでは労働基準法で定められている、労働時間の上限と最低の休日日数の原則を解説します。

目次

法定労働時間は1日8時間・1週間40時間

労働基準法32条では、労働者の労働時間について以下のように定められています。

第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
○2 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

出典:e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口

つまり労働時間は原則として1日8時間、1週間に40時間以内と決められています。これを法定労働時間といいます。

ちなみに、労働時間に休憩時間は含まれません。

法定休日は毎週少なくとも1回

労働基準法35条では、労働者の休日について以下のように定められています。

第三十五条 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。
○2 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。

出典:e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口

つまり休日は原則として週1回、または4週間で4日以上与えると決められています。これを法定休日といいます。法定休日は就業規則で決まっていることが多いです。たとえば、以下のような書き方をされます。

  • 法定休日は毎週日曜日とする
  • 1か月の休日のうち、最後の4日を法定休日とする

法定休日は最低基準を守っていれば自由に決められるので、会社ごとに異なります。

上記を上回る場合は36協定の締結が必要

条件を満たせば、上記を上回って労働できます。これを定めているのが、労働基準法36条です。

第三十六条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。

出典:e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口

つまり労働者と使用者が、時間外労働に合意する協定を結んで行政に届ければ、原則を超えて労働することが可能になります。

これが36協定と呼ばれるものです。

労働基準法における残業時間

36協定を結ぶことで、法定労働時間を超えて労働させることや、法定休日に出勤させることが可能になります。

しかし無限に労働させて良いわけではなく、残業時間も上限が定められています。ここでは労働基準法における残業時間を解説します。

残業時間の上限は月45時間・年360時間

36協定を結んだ場合の残業時間の上限は、労働基準法36条4項で定められています。

第三十六条
○4 前項の限度時間は、一箇月について四十五時間及び一年について三百六十時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあつては、一箇月について四十二時間及び一年について三百二十時間)とする。

つまり36協定を結んだ場合でも、残業時間は月45時間、年360時間までと決められています。

特別条項は年6ヶ月まで適用される

ただし36協定で特別条項を結べば、さらに上限を超える労働が可能になります。これを定めているのが、労働基準法36条5項です。

第三十六条
○5 第一項の協定においては、第二項各号に掲げるもののほか、当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に第三項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合において、一箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させることができる時間(第二項第四号に関して協定した時間を含め百時間未満の範囲内に限る。)並びに一年について労働時間を延長して労働させることができる時間(同号に関して協定した時間を含め七百二十時間を超えない範囲内に限る。)を定めることができる。この場合において、第一項の協定に、併せて第二項第二号の対象期間において労働時間を延長して労働させる時間が一箇月について四十五時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあつては、一箇月について四十二時間)を超えることができる月数(一年について六箇月以内に限る。)を定めなければならない。

出典:e-Gov法令検索 – 電子政府の総合窓口

条文の内容は以下の通りです。

  • 残業時間が月45時間を超えるのは、年6か月までにすること
  • 残業時間は年720時間以内に抑えること
  • 残業時間は月100時間未満に抑えること
  • 2~6か月で平均したとき、残業時間は月80時間以内にすること

特別条項を設けて残業するときは、以上の条件を守る必要があります。

残業時間が上限を超えた企業は罰則の対象となる

残業時間が上限を超えた企業は罰則の対象になります(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)。以前は残業時間の上限が法律で定まっておらず、どれだけ残業させても違法になりませんでした。

しかし法改正で一部の業界を除いて、2019年4月から大企業が、2020年4月からは中小企業も罰則の対象になりました。

具体的な残業時間

ここからは具体的な残業時間を例に、法令違反になる場合を解説します。自分の残業時間に近い項目を見て、法令違反がないかチェックしてみましょう。

残業時間45時間

通常の36協定を結んでいれば、月45時間まで残業できます。もし残業時間が45時間を超える場合は、36協定の特別条項が必要です。

そもそも36協定が結ばれていないのに残業している場合は、たとえ45時間以内だったとしても違法です。

残業時間60時間

36協定の特別条項を結んでいれば、月45時間以上の残業が可能です。ただし月45時間以上残業できるのは1年のうち6か月に限られます。

ただし以下の業務に携わる人は特例が定められています。

出典: 働き方改革関連法解説(労働基準法/時間外労働の上限規制関係)

業務によって、特例の内容が違うので注意してください。

残業時間80時間

残業時間が45時間を超えるので、年6か月を超えれば違法です。また当然、36協定の特別条項を結ぶ必要があります。

さらに残業時間80時間を超えると以下の規定が関係します。

  • 残業時間は年720時間以内
  • 残業時間は月100時間未満
  • 2~6か月で平均したとき、残業時間は月80時間以内

これに違反すれば違法です。ただし以下の業務に携わる人は以上3つの適用に関して、特例が定められています。

出典: 働き方改革関連法解説(労働基準法/時間外労働の上限規制関係)

残業時間が多いと感じる際の対処法

本記事を読んで、自分の残業時間が多いと感じた場合はどうするべきなのでしょうか。

ここでは残業時間が多いと感じる際の対処法を解説します。

対処法①|労働基準法を確認する

残業時間が多いと感じたときは、まず労働基準法で法令違反か確認しましょう。本記事では基本的な規定を解説しましたが、就業形態の違いなどで内容が異なる場合があります。

自分で法令を確認するのが難しい場合は、厚生労働省の労働基準監督署や総合労働相談センターに相談しましょう。法令に違反しているか一緒に確認してくれるはずです。

対処法②|上司に相談する

残業時間が多いと思ったときは、上司に相談する方法もあります。

もし違法な残業をさせている場合、会社側が法令を理解しておらず、知らない間に法令違反をしているのかもしれません。その場合は教えてあげたほうが親切でしょう。

たとえ違法な残業ではなかったとしても、残業時間が多くて苦しんでいる場合は、上司に相談して残業を減らせないか検討するべきです。

対処法③|転職する

残業時間が多くて辛い場合は転職するのも手です。

長時間労働は申告な健康被害に繋がる場合があり、またどの程度で体調に影響が出るかは人によります。

たとえ適法な残業時間だったとしても、体を壊してしまう人はいます。自分が辛いと思ったら、限界が訪れる前に転職するのも1つの手段です。

まとめ

この記事では、労働基準法が定める残業時間の上限を解説しました。

残業をするためには、労使間で36協定を結ぶ必要があります。また月45時間を超えて残業するには、特別条項が必要です。残業時間が多いと感じる人は、違法でないか確認してみましょう。

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