2017年頃に提唱された「ワークアズライフ」という考え方が、21世紀における仕事の概念を変えるのではないかと注目を集めています。今後会社でリモートワークが推進されれば、ワークアズライフが社会により浸透する可能性が高まります。そこで今回は、ワークアズライフの意味を中心に解説します。
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この記事の監修者
キャリアカウンセラー|秋田 拓也
厚生労働省のキャリア形成事業にキャリアコンサルタントとして参画。
大手警備会社にて人事採用担当として7年間従事の後、現職にて延べ200名以上の企業内労働者へキャリアコンサルティングを実施。
■所持資格
国家資格キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
ワークアズライフとは
ワークアズライフは英語で「work as life」と表現し、直訳すると「生きるように働く」になります。2017年に提唱された概念で、これまで当たり前のように使われていたワークライフバランスとは、対極の考え方です。
ここではワークアズライフとは何かについて、詳述します。
落合陽一が提唱
ワークアズライフを提唱したのは、筑波大学学長補佐である落合陽一准教授です。落合陽一氏は教育者として指導にあたるだけでなく、会社の経営や執筆活動も手掛けています。
経済産業省は2006年に提唱した「社会人基礎力」の概念を、人生100年時代並びに第四次産業革命の到来を受けて改定しています。また働き方改革が進む中で、会社員の副業も認められつつあります。そうした時代の変化に、ワークアズライフがマッチしているのです。
落合准教授が話すワークアズライフを突き詰めてブラッシュアップしていけばストレスフリーにより嫌な事から解放され自由度は増していく。睡眠時間・仕事量が重要なのではない~ワークライフバランスからワークアズライフという考え #落合陽一 #朝まで生テレビ pic.twitter.com/35hDrTXjFu
— ららら♪クラシックらぶ (@Yuki36509022) January 1, 2018
落合陽一氏が提唱したワークアズライフは、睡眠時間や仕事量にとらわれがちな現代日本の働き方に、一石を投じる概念だったといえるでしょう。
ワークアズライフの意味・定義:睡眠以外の時間はすべて仕事であり生活である
ワークアズライフについて、1日の時間の使い方を例に説明しましょう。ワークアズライフでは1日を、睡眠時間と睡眠以外の時間に二分して考えます。そして睡眠以外の時間は全部、仕事であると共に生活にも使われるとしています。
そして自分らしい幸せを追求するうえで、仕事の充実が人生を好転させるうえで重要であると定義しています。
さらにワークアズライフでは、睡眠以外の時間にかかるストレスを可能な限り少なくすることを重視しています。そのため、自分が没頭できることを仕事にすることを勧めています。
ワークライフバランスとの違い
同じような言葉で「ワークライフバランス」という言葉があり、こちらの方が浸透していますが、両者のニュアンスは全く異なります。
ワーク・ライフ・バランスとは|意味・定義
内閣府は2007年に「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」を策定しました。
誰もがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たす一方で、子育て・介護の時間や、家庭、地域、自己啓発等にかかる個人の時間を持てる健康で豊かな生活ができるよう、今こそ、社会全体で仕事と生活の双方の調和の実現を希求していかなければならない。
仕事と生活の調和と経済成長は車の両輪であり、若者が経済的に自立し、性や年齢などに関わらず誰もが意欲と能力を発揮して労働市場に参加することは、我が国の活力と成長力を高め、ひいては、少子化の流れを変え、持続可能な社会の実現にも資することとなる。
出典:仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章
つまり、仕事と生活のバランスが均等に保たれ、仕事に圧迫されることなく個人の時間が確保される状態がワークライフバランスの意味という事です。
ワークライフバランスの例
ワークライフバランスも、1日の時間の使い方の例をあげて説明しておきます。ワークライブバランスでは「仕事」「生活」「睡眠」と、時間軸を3つに分類していました。そして3つの時間管理に、主軸が置かれています。
そのためワークライフバランスでは、生活時間を確保するためには、仕事時間を短縮する必要がありました。しかし勤務時間内に業務を終わらせなければというプレッシャーや、仕事量が減らないので持ち帰って作業するという事態が引き起こされています。
その結果、仕事時間はストレスがかかるものというイメージが、定着した印象があります。
ワークアズライフとワークライフバランスの違い
ワークアズライフとワークライフバランスの違いは、端的に言えば以下のように説明できます。
- ワークアズライフ=仕事とプライベートを分けない
- ワークライフバランス=仕事とプライベートを分ける
また、仕事に対してポジティブにとらえることができる場合はワークアズライフ、ネガティブにとらえてしまう場合はワークライフバランスの傾向があるともいえます。
価値観の違いによるものなので、どちらがより優れているということはありませんし、他人に強制してはいけません。
ワークアズライフが生まれた時代背景
ワークアズライフが注目を集めた背景には、日本政府が進める働き方改革があります。労働力人口の減少が続く中で生産性を向上させるためには、働き方の多様性が不可欠なのです。
ここではワークアズライフが生まれた時代背景について、解説します。
①働き方が多様化している
かつての日本は終身雇用・年功序列が当たり前だったため、正社員は同一の価値観の中で組織を維持することができました。そのため、労働者は会社への帰属意識を持つのが当然でした。
しかし近年はリモートワークをはじめとする在宅勤務やノマドワーカーが増え、会社員の副業や兼業も容認されつつあります。それを実現するにあたり、労働者も自律性が求められることになります。
さらに生産性を向上させるためには、仕事の質をあげる必要があります。それを実現するためには自律だけでなく、労働者が前向きに仕事に取り組むことが大事です。
②タイムマネジメントよりストレスマネジメントが重視されつつある
ワークライフバランスは、仕事をする時間を提供することで対価を得るという考え方が主流でした。そして日本では、長時間労働を美徳とする価値観がまだ払しょくされていません。
近年は残業禁止や上限時間を設けるなど、タイムマネジメントをする企業が増えています。しかし、それを実現できるよう労働者1人当たりの業務量を減らしている企業は、ほんの一握りでしょう。
しかし昨今は労働者のメンタルヘルスに力を入れるなど、ストレスマネジメントを重視する方向に舵がきられています。これも、ワークアズライフが注目される要因でしょう。
ワークアズライフは無理なのか|否定的な意見も
ワークライフバランスの人間には、ワークアズライフの人間が理解できないだろうし、恐らくは共存もできないと思う。ワークライフバランスの人間にワークアズライフで生きろというのも無理があるし、ワークアズライフの人間がブレーキをかけてワークライフバランスの生活になれというのもおかしな話。
— Masahiro Kawai (@masahirokawai) July 24, 2019
仕事とプライベートの調和を目指すワークライフバランスは、オンオフ思考で働く社会人に合っています。一方 ワークアズライフは、好きなことを仕事にしている人に多い考え方です。
無理にワークアズライフを目指そうとしなくてもいいと思うのだ。私にとってはワークでできること・やりたいことと、それ以外でやりたいことは別の領域だし。
— hekitter (@hekitter) March 10, 2020
確かに、働くことに対する考え方は千差万別です。しかしワークライフバランス思考の人は、本当に ワークアズライフに移行できないのか、疑問が残ります。
ワークアズライフを無理なく実現する方法
社会人すべてが、自分が好きなことを仕事にしているわけではありません。また、好きなことが適職とはいえないケースもあります。しかし観点を変えることで、ワークアズライフを無理なく実践することは可能です。
ここでは、ワークアズライフを実現する方法を紹介します。
①自分が没頭できる仕事を見つける
休日に趣味に熱中していると、時間が過ぎるのが早く感じるものです。つまり仕事も自分が没頭できれば、従事している時間が長く感じることはありません。
そこで自分が好きなこと、あるいは得意で達成感を感じること、将来の自分の成長につながると思えることという観点で、仕事を見直してみることをおすすめします。それが、仕事のモチベーションアップにつながることが多いからです。
またお金のために働いているなら、楽しく働ける仕事や職場を探すのも選択肢の一つかもしれません。
②生きるために働くという意識を持つ
ワークアズライフでは、仕事と生活に垣根がありません。そのため、仕事だけを見直しても、効果は半減します。ワークアズライフの実現には、ストレスマネジメントが不可欠だからです。
特に育児中の女性の場合、保育園に預けて働くことや子供の体調によって遅刻・早退・欠勤を余儀なくされることにストレスを感じることが多いものです。しかし、それを母親1人で担うのではなく、父親と一緒に対処していく環境をつくれば、ストレスが軽減します。
生きるために働くという意識を持てば、仕事・育児・介護など、その時々の優先順位を決めるのも容易になるはずです。
ワークアズライフな人の例
ワークアズライフを実践しながらイキイキと働いている人は、世の中にたくさんいます。そしてワークアズライフを実践する人にとって、働く目的はお金だけではないようです。
ここではワークアズライフを実践している人の例をあげて、紹介します。
落合陽一
ワークアズライフを提唱した落合陽一氏は、大学の准教授・会社経営・執筆業という異なる仕事に取り組み、1日の平均睡眠時間は3時間で、土日も休まずに働いているそうです。
しかし携わっている仕事に対するモチベーションが高く、そのプロセスも充実していると感じているため、長時間労働も苦になっていないと公言しています。
さらにスキルやノウハウを身につけることで、自分の市場価値もあげられるという働き方を実践されています。
堀江貴文
元ライブドア代表取締役社長CEOで、実業家並びに投資家として有名な堀江貴文氏も、ワークアズライフを実践する1人です。近年では、宇宙開発事業に力を注いでいます。
堀江貴文氏は「何事にもハマることが大事」を信条にしており、中学時代にプログラミングにハマったことをきっかけにインターネットに興味を持ち、時代の寵児となりました。
人生の中で遊びを重視していると公言していますが、好奇心から始まるビジネスも遊びであり、それを実現するために時間を大切にしているそうです。
箕輪厚介
箕輪厚介氏は株式会社エクソダス取締役であり、堀江貴文イノベーション大学校・特任教授、オンラインサロン「箕輪編集室」の主催者でもあります。
双葉社でファッション誌の広告営業としてキャリアをスタートし、編集者として見城徹氏の「たった一人の熱狂」や堀江貴文氏の「逆転の仕事論」などを手掛け、一躍注目を集めました。
与えられた仕事で全力を尽くすことの大切さを理解したうえで、自分が主体となって企画・行動するというメッセージが、20代の若者を引き付けています。
Youtuber
具体的な人物ではないですが、HIKAKIN氏などの様にYoutuberとして活躍されている方もワークアズライフの象徴といえます。「好きなことで、生きていく」というキャッチフレーズはワークアズライフを端的に説明している言葉です。
ワークアズライフについてもっと知りたい人におすすめの本
ワークアズライフについてもっと知りたい時に、ぜひ読んで欲しいのが『超AI時代の生存戦略 ―― シンギュラリティ<2040年代>に備える34のリスト』です。提唱者である落合陽一氏が、その概要について詳述した一冊です。
未来の社会への不安を抱える若者が、これからやるべきことについて、わかりやすく説明されています。
まとめ
現代は企業に所属することで、生活や将来が安泰とはいえません。さらにAIの導入により、今後なくなる職業があることも指摘されています。時代は変化するものですが、自分の生き方や働き方に対する考えを変えることで、対処できることはたくさんあります。そのお手本として、ワークアズライフが生きることでしょう。