総合電機メーカー8社を徹底比較|将来性やビジネスモデルも解説します

総合電機メーカーとは戦後の日本で電子機器の販売によって急成長を遂げた、代表的な8社のことです。この記事では総合電機メーカーの歴史・現状・将来性や、各社の会社情報や事業の特徴などを紹介します。電子機器メーカーへの就職を考えている方はぜひ参考にしてみて下さい。

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この記事の監修者

キャリアカウンセラー|秋田 拓也

厚生労働省のキャリア形成事業にキャリアコンサルタントとして参画。
大手警備会社にて人事採用担当として7年間従事の後、現職にて延べ200名以上の企業内労働者へキャリアコンサルティングを実施。

■所持資格
国家資格キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)

総合電機メーカーとは

実は「総合電機メーカー」という言葉は明確に定義されているものではなく、一般的に知られる日本の大手電機メーカーを総称した言葉で、いわゆる俗語のようなものです。

この見出しで総合電機メーカーと言われる企業と、そのビジネスモデルについて見てみましょう。

目次

総合電機メーカーで有名な8社

総合電機メーカーと呼ばれる企業は以下の8社です。

  • パナソニック
  • 日立製作所
  • ソニー
  • 東芝
  • 三菱電機
  • 富士通
  • NEC
  • シャープ

上記の8社は戦後の日本の高度経済成長を支えた代表的な企業で、その技術力をもとに冷蔵庫・洗濯機などの白物家電、テレビ・ラジオなどの黒物家電などを安く大量生産していました。

8社を更に細分化すると「総合電機」が日立製作所・東芝・三菱電機、「AV(映像・音響)家電メーカー」がパナソニック・ソニー・シャープ、「IT大手」が富士通・NECとなります。

総合電機メーカーのビジネスモデル

総合電機メーカーのビジネスモデルは、従来は以下のような高度な技術が必要になる機械の生産・販売を総合的に行っていました。

  • 発電・送電機
  • 産業用電気機械
  • 電球・電気照明器具
  • 電池
  • 家電製品

つまり、かつての総合電機メーカーは製造業メーカーや発電所などが使う機械から、家庭用電子機器類の製造・販売を全て行っていました。その取り扱う製品の幅広さから「総合」電機メーカーという言葉でまとめられていました。

しかし1990年代以降には、競合他社の台頭・国内から海外へのメイン市場の移り変わり・市場環境の変化(スマートフォンなどの新たな電子機器の台頭)・EMS(電子機器受注生産)といった要因から、8社のビジネスモデルも変化しました。

総合電機メーカーの概況

次に総合電機メーカーの歴史と今後の見通しなどを概観し、今総合電機メーカーが置かれている状況や今後どのように事業が移り変わっていくかを見てみましょう。

かつて「Japan as NO.1」と言われていた高度成長期を支えた日本の電機メーカーの状況はビジネス環境の変化で大きく変わっています。

総合電機メーカーの歴史

総合電機メーカーの歴史は戦後の日本の高度経済成長・バブル崩壊・その後のマーケットの変化で概観することが出来ます。

戦後の日本の高度経済成長期には日本全国で家電の需要が高まったことで、「三種の神器」と言われた洗濯機・冷蔵庫・白黒テレビや、「3C」と言われるカー(車)・クーラー・カラーテレビの需要で電機メーカーの売上が大きく向上しました。

しかし、バブル崩壊と「失われた20年」による内需の冷え込み・買い替え需要のみによる売上の伸びの鈍化・外国企業の台頭によるシェアの縮小などに見舞われています。

総合電機メーカーの現状と将来性

そんな総合電機メーカーを取り巻く事業環境は、海外のゲームチェンジャーによってどんどん変わっています。

かつて収益の主体でもあったTV事業は韓国のサムスン・LGが台頭。そして携帯電話はスマートフォンに取って代わり、米国のアップルと中国のファーウェイが世界的に市場を席巻しています。

そして、中国・韓国の電機メーカーはまだ日本よりも人件費が安いので製品価格も安いです。一方では高品質でも売れないという日系メーカーのマーケティング力の問題もあり国内でのシェアの獲得は厳しい状況になっています。

総合電機メーカーの市場規模

総合電機メーカーが関わる業界は幅広いため、市場規模を予測するのは難しいですが、電子機器や情報技術に関する情報を発信する電子情報技術産業協会(JEITA)の予測では2020年には電子機器の世界的な市場規模はさらに拡大する見通しです。

2018年から2019年の拡大がおよそ1%と見込まれているのに対して、2019年から2020年でおよそ5%の市場拡大が予測されています。

これは世界的にIT・技術投資が積極的に行われていることが背景にあり、IoT機器や5G関連製品の需要拡大から市場規模が拡大すると予測されています。

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総合電機メーカーの大手8社

次は総合電機メーカーの大手8社の基本情報や各社の特徴を見てみましょう。

かつての総合電機メーカー各社は、家電製品・産業用機器業界でしのぎを削っていましたが、現在は事業の統廃合などによって特に注力する分野が明確に分かれています。

ここで紹介する企業の基本データは、各社の最新の有価証券報告書の情報を基に作成しております。

①NEC

NEC(日本電気)は8社の中でも比較的創業年度が古く、歴史ある企業です。

基本データ

NECの有価証券報告書によると基本情報・事業は以下の通りです。

  • パブリック事業
  • エンタープライズ事業
  • ネットワークサービス事業
  • システムプラットフォーム事業
  • グローバル事業

NECはパブリック事業(公共施設のインフラ提供・整備・運用など)を中心に、その他企業向けのインフラ提供や電子機器の販売などを行っています。

特徴

NECの特徴は、公共機関へのサービス提供(パブリック事業)からの売上が大きいことです。NECのホームページの情報では、2019年3月時点の各事業セグメントの売上は以下の通りです。

他の事業セグメントと比較しても、パブリック事業の売上が2倍以上となっています。同事業では公共施設・官公庁・医療機関向けのシステムインテグレーションなどを行っているので、そうした仕事に関わりたい人にとっては最適な職場と言えます。

②富士通

富士通はシステムインテグレーション・クラウドサービス・企業のネットワーク構築などに力を入れており、テクノロジーによるソリューションの提供を主軸とした企業です。

基本データ

富士通の2018年度の有価証券報告書の情報によると、同社の基本情報・事業は以下の通りです。

  • テクノロジーソリューション
  • ユビキタスソリューション
  • デバイスソリューション

富士通の創業年度は比較的若く8社の中でも歴史が浅い会社ですが、BtoBビジネス・BtoCビジネスともに業界内でも大きなプレゼンスを発揮している会社です。

特徴

富士通の特徴は特に企業向けのシステムインテグレーションやICT(Information and Communication Technology)分野における総合的なソリューション提供を行っていることです。

ICT分野については富士通では400社以上の関連会社があり、各社でコンサルティング・POSシステム提供・ネットワーク構築と運用などを行いつつ、各社で連携して富士通独自のサービスを提供しています。

富士通の職場環境や「激務」と言われる理由、特に激務とされる職種などは下記の記事で紹介しています。反対に富士通で働くことの魅力も紹介していますので、同社への就職を考える方は下記の記事も参考にしてみて下さい。

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③シャープ

シャープはシャープペンシル・電卓・電子レンジなどにいち早く目をつけ、その開発・製造・販売を集中的に行ってきた会社です。

基本データ

シャープの有価証券報告書の情報によれば、同社の基本情報・事業は以下の通りです。

  • スマートホーム
  • スマートビジネスソリューション
  • IoTエレクトロデバイス
  • アドバンスディスプレイシステム

シャープはBtoBとBtoCともに事業を展開していますが、特徴的なのは「IoTエレクトロデバイス」部門で車載カメラやセンサー技術の開発や関連商品の販売を行っていることです。

特徴

シャープの特徴は上述の通りセンサー技術などの開発を行っているという、関わる事業自体にも特徴はありますが、その中でも特徴的なのが「選択と集中」を繰り返してきたことです。

シャープはシャープペンシル・電卓・電子レンジ・テレビ・ラジオにいち早く目をつけ、それらの商品の開発・製造・販売に経営資源を集中投下することで高度成長期に大きく業績を上げています。

一方で、2010年代の液晶技術の変化やアジア企業の安価な製品に押されて選択と集中の戦略が裏目に出て2000億円以上の赤字を計上したこともあります。

④日立製作所

日立製作所は8社の中では最も売り上げ規模が大きい会社で、行っている事業セグメントも多岐にわたっています。

基本データ

日立製作所の有価証券報告書の情報によれば、同社の基本情報・事業は以下の通りです。

  • 情報・通信システム
  • 社会・産業システム
  • 電子装置・システム
  • 建設機械
  • 高機能材料
  • オートモーティブシステム
  • 生活・エコシステム
  • その他

日立製作所では家電製品・産業機器の製造販売やシステムインテグレーションとともに、半導体・自動車部品・エンジン・電力プラントで使われる機器の製造なども行っています。

特徴

日立製作所の特徴は産業用機器・プラント・エレベーター・各種発電所システムの開発を行う「社会・産業システム」分野が社内で売上高の割合を拡大させていることです。

同社HPのセグメント別データによる「社会・産業システム」の過去の売上高・売上高構成比は以下の通りです。

2015年時点では「情報・通信システム」分野が売上構成比19%で最も大きな事業セグメントでしたが、2019年時点では「社会・産業システム」分野の売上構成比が大きくなり、エネルギー供給に関わる事業に注力していることが伺えます。

⑤ソニー

ソニーは8社の中で最も創業が遅いものの、早期から映像・オーディオ機器の開発・製造・販売に特化して事業を行っており、現在もその傾向が色濃く残っている企業です。

ここではソニーの基本情報と同社の特徴について見てみましょう。

基本データ

ソニーの有価証券報告書の情報によれば、同社の基本情報・事業は以下の通りです。

  • ゲーム&ネットワークサービス
  • 音楽
  • 映像
  • ホーム・エンターテインメント&サウンド
  • イメージング・プロダクツ&ソリューション
  • モバイル・コミュニケーション
  • 半導体
  • 金融
  • その他

上記の通りソニーはAV(映像・音声)機器に関する事業を中心に行っており、その他にコミュニケーション事業や金融に関する事業も行っています。

特徴

ソニーの特徴は高い技術力とAV機器におけるブランド力です。

おサイフケータイやSuicaの技術開発にはソニーが関わっており、AV機器ではソニーの機器が最も音質が良いという声もよく聞かれます。一方で、マーケティングや販売戦略で他社に劣り、相対的に低品質な企業にシェアを奪われている傾向もあります。

総合電機メーカーは企業毎に特徴が異なりますが、ソニーの強み・弱みなどより詳細な情報は下記の記事で紹介しています。採用方法がやや特殊であったり求められる人物像も記載されているので、就職を考える方は下記の記事も確認してみて下さい。

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⑥パナソニック

パナソニックは「経営の神様」ともいわれる松下幸之助が創業した松下電器が、2008年に改名したことで誕生した企業です。

ここではそのパナソニックの基本データと、事業や扱っている製品の特徴について見てみましょう。

基本データ

パナソニックの有価証券報告書の情報によれば、同社の基本情報・事業は以下の通りです。

  • アプライアンス
  • エコソリューションズ
  • コネクティッドソリューションズ
  • オートモーティブ&インダストリアルシステムズ

パナソニックは空調・掃除機・テレビといった従来の家電事業を主として行いつつ、ビジネス用AV機器・電動自動車向けの部品や機械の開発・住宅事業にも携わっています。

特徴

パナソニックの特徴はエンドユーザーが一般消費者になる事業が多いことです。

同社のひと目でわかるパナソニックという資料からも分かる通り、人の生活に直結する家電・生活機器などを扱うアプライアンス・ライフソリューションズ事業からの売上高が高くなっています。

同社の仕事内容は多岐にわたり、配属された部署や係る製品によって仕事内容が変わります。下記の記事では同社のさまざまな仕事内容・職場環境・キャリアパスについて紹介していますので、就職を考えている方はこちらも参考にしてみて下さい。

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⑦東芝

東芝はここで上げた8社の中で最も創業が早く、144年続く老舗電機メーカーです。

ここではその東芝の基本情報と、事業の特徴や強みについて紹介します。

基本データ

東芝の有価証券報告書の情報によれば、同社の基本情報・行っている事業は以下の通りです。

  • エネルギーシステムソリューション
  • インフラシステムソリューション
  • リテール&プリンティングソリューション
  • ストレージ&デバイスソリューション
  • インダストリアルICTソリューション
  • その他

東芝以前は家電製品も扱っておりましたが、今はほぼ扱っておらずインフラのシステム開発や半導体やセンサー技術の開発に集中しています。

特徴

東芝の特徴は家電事業を捨てて、インフラシステム・センサー技術などに完全に事業を集中させていることです。

同社の有価証券報告書を見ていただければ分かる通り現在家電を扱う事業は無く、上下水道システム・放送システム・道路システム・交通機器といった、生活インフラやPOSシステム・複合機器などのBtoC事業に集中しています。

家電製品としての「東芝ブランド」は、2016年に中国の美的集団グループの子会社となっているので、東芝製品は存続していますがその運営はすでに東芝では行っておりません。

⑧三菱電機

三菱電機は三菱造船という造船会社が母体となって作られ、歴史的に見ても産業用機器の開発を中心に行ってきた会社です。

ここではその三菱電機の基本情報と、事業の特徴について見てみます。

基本データ

三菱電機の有価証券報告書の情報によれば、同社の基本情報・事業は以下の通りです。

  • 重電システム
  • 産業メカトロニクス
  • 情報通信システム
  • 電子デバイス
  • 家庭電気
  • その他

上記の通り行っている事業は産業用機器に関わるものが多く、同社のセグメント別業績ハイライトでも6割強の売上が産業用機器に関わる事業から上がっています。

特徴

三菱電機の特徴は創業から継続して産業用機器の開発・販売を続けていることです。

現在の事業分野を見ても、売上の多くを占める重電システム・産業メカトロニクス・情報通信機器分野では、変圧器・タービン発電機・レーザー加工機・人工衛星などを開発しています。

三菱電機は、年収1000万円を手に入れられる高給の企業ではあるものの、ブラック企業大賞に選出されたりと、職場環境に問題を抱えていた過去があります。同社の社風や現在の職場環境について、下記の記事で紹介していますので併せてご確認下さい。

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まとめ

この記事では総合電機メーカーのビジネスモデル・概況・各社の現在の事業内容などについて紹介しました。

過去にはどの会社も日本国内で家電製品を中心にビジネスを展開していた時期もありましたが、現在は各社が強みを生かしてそれぞれの分野に事業を集中しつつあります。

各社の社風も異なりますので、総合電機メーカーへの就職を考える場合は事業内容と社風・福利厚生などを総合的に考えて就職先を考えるようにしましょう。

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