「中抜き業者」って何?|役割や流通の仕組みまで徹底解説!

新社会人として働き始めた皆さんは、ビジネス用語に接する機会も増えたことと思います。しかし、中には意味を知らないまま使っている言葉もあるのではないでしょうか。今回はそんな言葉の中から「中抜き業者」について解説していきます。小売や派遣といった業界の方は特に知っておきたい言葉です。覚えておきましょう。

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この記事の監修者

キャリアカウンセラー|秋田 拓也

厚生労働省のキャリア形成事業にキャリアコンサルタントとして参画。
大手警備会社にて人事採用担当として7年間従事の後、現職にて延べ200名以上の企業内労働者へキャリアコンサルティングを実施。

■所持資格
国家資格キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)

「中抜き」とは

「中抜き業者」について解説していく前に、まずは「中抜き」という言葉の意味を押さえておきましょう。

「中抜き」はビジネスシーン以外でも使用されることがあるので、混同しないよう注意が必要です。

本項では例文も一緒にご紹介していますので、併せて参考にしてみてください。

目次

「中抜き」の意味

「中抜き」の意味については、小学館が提供するデジタル国語辞典である「デジタル大辞泉」から引用したいと思います。

「中抜き」は大きく分けて以下4つの意味があります。

中を抜きとること。内部をくりぬくこと。また、そのもの。

商品の流通経路で、卸売など中間業者を抜かして生産者と小売業または消費者が直接に取引すること。

野菜や草花を一度間引いたあとで更にもう一度間引くこと。またそのもの。

「中抜き草履」の略。

1の意味は、読んで字の如く、内部を抜き取ることです。例えば、ローストチキン用の丸鶏は調理しやすいように内臓など抜かれた状態で販売されていますが、これを中抜き加工と呼んだりすることがあります。

また、「内部をくり抜く」という意味から転じて、「途中の工程を省略する」という意味でも用いられることがあります。

2は今回メインで取り上げている、ビジネスシーンで使われる場合の「中抜き」を指します。詳しくは後述しますので、本項では一読していただくだけで構いません。

3は、主に農業において使用される意味です。ちなみに、間引きとは農作物を栽培した際、生命力の強いものだけを残し、それ以外を摘み取るという作業を指します。

4の「中抜き草履」とは、「阿波草履」とも呼ばれる草履の種類のひとつです。

「中抜き」を用いた例文

続いては「中抜き」を用いた例文をご紹介していきます。

例文①|A社の名刺は中抜き加工が施された個性的なデザインだ

この例文では、「中抜き」を前項の1の意味で使用しています。

先ほどはローストチキン用の丸鶏を例に、食品における「中抜き加工」についてお話ししましたが、それ以外にも金属や紙などといったクラフトの分野において「中抜き加工」が行われることもあります。

クラフトにおける中抜き加工では、素材を任意の形状で切り出すことができるため、装飾などに用いられることがあります。

例文②|中抜き現象が進んだ背景には、IT革命がある

「中抜き」が前述の2の意味で用いられている場合の例文です。

デジタル大辞泉から引用しました通り、ビジネスにおける「中抜き」とは、生産者と消費者が直接繋がることを指します。

詳しくは次項に譲りますが、近年のIT技術の発達によって、「中抜き」が急速に進んだと言われています。

例文③|近所の直売所で、中抜き大根が安く売られていた

この例文は、前項の3意味で「中抜き」を用いています。

中抜き大根とは、成長し切る前に間引きされた大根およびその葉っぱのことです。葉の部分が大半ですが、通常の大根と同じように食べることができるので、直売所やスーパーなどに出回っていることがあります。

ビジネス上で使われる「中抜き」

続いてはいよいよビジネスシーンにおいて用いられる「中抜き」についてご説明していきます。

通常、商品は生産者(メーカー)で作られたあと、私たち消費者に届くまでにいくつかの業者を介しています。

野菜を例に挙げて説明しましょう。まず、野菜が生産者の元で作られると、それを卸売業者が買い付けます。次に、この卸売業者はスーパーなどの小売業者に野菜を販売し、最後に消費者の元に届きます。

しかし、近年、インターネットが普及し始めたことで、生産者(メーカー)が消費者に対して、直接販売をすることが可能になりました。現に、今やインターネット通販を利用したことがない人の方が珍しいと言えます。

このような状況で、一部の生産者(メーカー)はもはや卸売業者や小売業者は必須ではないとして、直接生産者に対して販売を始めるようになりました。

このように、従来の流通経路から卸売業者や小売業者が外れることを「中抜き」と呼ぶことがあります。

「中抜き業者」とは

商品が生産者(メーカー)から消費者に渡るまでに卸売業者や小売業者を経由するというのは前述の通りです。

この卸売業者と小売業者のように、生産者(メーカー)から消費者までの間に入っている業者を「中抜き業者」あるいは「中間業者」と呼ぶことがあります。

本項ではその「中抜き業者」の役割および、中抜き業者が間に入ることによって生まれるメリット・デメリットについて解説していきます。

「中抜き業者」の役割

インターネットの普及によって、文字通り“中抜き”されてしまうこともある「中抜き業者」ですが、彼らは流通において一体どのような役割を果たしているのでしょうか。

中抜き業者の役割は、一口に言うと、生産者(メーカー)と消費者を繋ぐことです。

再び野菜を例に説明します。生産者が野菜を生産したとしましょう。しかし、彼らは栽培こそプロでも、それを販売するノウハウや店舗がありません。その問題を解決したのが中抜き業者です。

中抜き業者は商品を生み出すことはできませんが、商品の販売にかけてはプロです。消費者に必要とされている分だけ野菜を仕入れ、それを消費者対して販売し、その差額で利益を出しています。

このようにして、生産者(メーカー)は中抜き業者のおかげで商品を消費者に届けることができ、消費者は欲しい商品を安定的に手に入れることができるのです。

「中抜き業者が存在することのメリット・デメリット」

続いては、中抜き業者が存在することによるメリットとデメリットについて説明していきます。

中間業者は「生産者と消費者の間に入って、代金をピンハネしているだけだ」と言われることもありますが、それは全くの誤解です。

中抜き業者が存在することによって、生産者(メーカー)、消費者の双方が得られるメリットも、もちろんあります。

本項では、正しいメリットとデメリットについて見ていきましょう。

メリット

まずは、中抜き業者が存在することによるメリットからお話ししていきます。メリットには、例えば以下のようなものがあります。

  • 品揃えを安定させる
  • 在庫を抱えるリスクがなくなる
  • 安定した価格での販売

中抜き業者が生産者(メーカー)と消費者の間に入ることによって、消費者はいつでも安定的に商品を購入することができます。

例えば、生産者(メーカー)が何らかの理由で商品の生産を減らしたり、生産が遅れたとしましょう。そのような場合でも、中抜き業者は在庫を使用することで、商品を今まで通り流通させることができ、消費者は通常通りそれらを手に入れることができるのです。

また、この在庫ですが、消費者にとっては非常に便利なのですが、生産者(メーカー)から見れば、一定のリスクが伴います。商品を余分に生産しても、それが販売できなければ、その分損をすることになるため、生産者(メーカー)からすれば、できれば必要な分だけ生産をしたいのです。

そこで、この在庫のリスクを引き受けるのが中抜き業者です。在庫管理も含めて全て彼らに任せることで、生産者(メーカー)はリスクを負うことなく、商品を消費者に届けることができます。

最後に、中抜き業者が存在することによって、消費者は安定した価格で商品を手に入れることができます。

例え同じ商品でも、生産者(メーカー)の状況によっては、需要と供給のバランスを取るため、価格が上下することもあります。しかし、同じ商品が生産者Aから購入すると100円、生産者Bから購入すると500円のように、生産者ごとに開きがあると、生産者も混乱しますし、生産者(メーカー)も販売価格が安定しないため、生産の予定も立てづらくなります。

そこに中抜き業者が入り、市場全体の需要と供給を判断することで、消費者はどこで購入しても同程度の価格で購入することができ、生産者(メーカー)安定した価格で商品を売ることができるのです。

デメリット

続いては中抜き業者が入ることによるデメリットについてです。中抜き業者の存在によって発生するデメリットには以下のようなものがあります。

  • 中間マージンが発生する
  • 生産者(メーカー)の立場が弱くなる場合がある
  • 消費者の声が生産者(メーカー)に届きにくい

中間マージンの発生、および生産者(メーカー)の立場が弱くなる場合があるという点についてですが、この2点が、「中間業者=ピンハネする業者」というイメージを生んだ要因ではないかと思います。

まず、中間マージンについて説明しておきますと、中間マージンとは中抜き業者が利益を得るために、上乗せする金額のことです。

生産者(メーカー)から商品を購入して、それをそのままの金額で消費者に販売してしまえば、中抜き業者は利益を得ることができませんので、当然彼らは生産者(メーカー)に払った代金に自分たちの利益分を上乗せして、消費者に販売することになります。

すなわち、生産者(メーカー)と消費者の間に中抜き業者が入れば入るほど、消費者が支払わなくてはならない代金が増えるということです。

価格だけ見れば、消費者は中抜き業者のせいで高い代金を支払わされていると感じるので、「中抜き業者は代金をピンハネしている」と思いやすいのです。

また、生産者(メーカー)によっては、中抜き業者が存在することにより、極端に弱い立場に立たされてしまう場合があります。

中抜き業者は中間マージンで利益を得ているので、できることなら商品を安く買って、利益をたくさん乗せて販売したいと考えます。そのため、悪質な中抜き業者の場合、生産者(メーカー)や卸売業者に対して非常に安い価格で売るように要求することがあります。

規模の大きい企業であれば、その要求を拒否することができますが、ひとつの中抜き業者に依存しているような小規模の会社であれば、無理な要求でも応えるほかありません。このように、立場を利用して不当に安い値段で買い叩く中抜き業者のせいで、中抜き業者全体に悪いイメージが広がってしまった可能性があります。

また、中抜き業者が間に入ることによって、消費者の声が生産者(メーカー)に届きにくいというデメリットもあります。中抜き業者が存在することによって、消費者の要望が複数の会社を経由してから生産者(メーカー)に届くため、それらが反映されるまでに時間がかかってしまうのです。

「中抜き現象」とは

近年、中抜き業者を介さず、生産者(メーカー)が直接消費者に対して販売を行うケースが増えているというのは、すでにご説明した通りです。

このように、流通経路から卸売業者や小売業者を外す動きのことを「中抜き現象」と呼びます。

この中抜き現象の背景にはIT技術の発展が関係しています。

インターネットの普及により、人々は物質的な距離を越えて、商品のやり取りを行うことができるようになりました。そのような状況下では、ただ右から左へ商品を流すだけの中抜き業者はもはや不要です。

今後、中抜き業者が生き残っていくためには、物流を伴わない無形商品およびサービスを扱ったり、より専門ジャンルに特化していくといったように、業態を変化させていく必要があると言えるでしょう。

人材派遣にも起きている「中抜き」

中抜きは、物質を伴う商品の物流だけでなく、無形商品を扱う業界においても行われています。その代表とも言えるのが、人材派遣会社です。

人材派遣会社は、専門的な知識を持った人材と、彼らを必要としている企業を仲介する役割を果たし、仲介料を得ることで利益を上げています。

ちなみに、仲介料の比率は、一般的に企業が支払う金額の3割程度と言われており、残りの7割が労働者に支払われる金額です。人材派遣会社はこの3割の仲介料の範囲で、労働者のための保険料などをまかなうため、実際に人材派遣会社が手にする利益はもっと少なくなります。

しかし、実作業を行わない派遣会社が、本来労働者に支払われるべき金額の3割を搾取しているようにも見えるため、それに対して不満を持っている労働者や企業もいます。

「中抜き」を英語で表すと

最後に「中抜き」の英語表現についてご紹介していきます。

本記事でメインにご紹介してきた、生産者(メーカー)と消費者が直接繋がるという意味の中抜きは、英語で「disintermediation」と表現します。

「間に入る」という意味の「intermediation」に、「はぐ」、「奪う」、「除く」といった意味を持つ接頭辞「dis」が付くことによって、「間を除く」という意味になります。

また、内部をくり抜くという意味を表したいのであれば、「Hollow」が相応しいでしょう。

まとめ

ビジネスにおける「中抜き」は生産者(メーカー)と消費者が直接取引を行い、今まで間に入って両者を繋いでいた卸売業者や小売業者が流通経路から外れてしまうことです。中抜きはインターネットの普及によって近年進んでおり、彼らにとっては、今後どのようにして生き残っていくのかが課題になるでしょう。

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