準社員の働き方とは?準社員として働くメリット・デメリットや契約内容の注意点も紹介!

企業の求人募集を見ていると「準社員」という言葉が記載されているものがあります。しかし就活生の中には、準社員とは何か、正社員とどう違うのかがよくわからない人もいるようです。そこで今回は準社員とは何か、雇用契約を結ぶにあたっての注意点、その働き方のメリット・デメリットまで解説します。

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この記事の監修者

キャリアカウンセラー|秋田 拓也

厚生労働省のキャリア形成事業にキャリアコンサルタントとして参画。
大手警備会社にて人事採用担当として7年間従事の後、現職にて延べ200名以上の企業内労働者へキャリアコンサルティングを実施。

■所持資格
国家資格キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)

準社員とは

準社員とは何かを考える時、その定義や契約社員・派遣社員・パート・アルバイトとの違いは何かを疑問にも思う人が多いはずです。

ここでは準社員とは何かについて、他の勤務体系とも比較しながら説明します。

目次

準社員の明確な定義はない

厚生労働省の「さまざまな雇用形態」に掲載されている、フルタイム正社員以外のの雇用形態は以下の通りです。

  • 派遣労働者
  • 契約社員(有期労働契約)
  • パートタイム労働者
  • 短時間正社員
  • 業務委託(請負)契約を結んで働いている人
  • 家内労働者
  • 自営型テレワーカー

ここに「準社員」の文字はありません。準社員は厚生労働省が定めた雇用形態ではないので、明確な定義はないのです。

準社員は、イメージとしては契約社員(有期労働契約)に近い、正社員とパート・アルバイトの間に位置づけされる社員と考えられます。会社によっては「限定社員」と呼ばれることもあります。

契約社員との違い

契約社員とは、企業と労働者の間で雇用期間を定めたうえで労働契約を結んで働く社員を意味します。そして、準社員と契約社員には、明確な違いはありません。

企業によっては契約社員は有期労働契約であるのに対し、準社員は雇用期間が決まっていないケースもあるようです。正社員登用制度がある企業において、準社員として採用し、登用するか否かを決定することもあります。

労働契約書の取り交わしの際に、採用担当者に確かめてみることをおすすめします。

派遣社員との違い

派遣社員とは、労働者が人材派遣会社と労働契約を結び、指定された企業で業務に従事する人をさします。準社員は労働契約を勤務先と結ぶ点が、大きく違います。

派遣社員は即戦力として業務に従事する必要がありますが、準社員は採用した企業が育成も担います。準社員は雇用も安定し、派遣社員より重い責任を負うことになります。

パート・アルバイトとの違い

パートとアルバイトは、厚生労働省ではパートタイム労働者に分類されます。企業が学生をアルバイト、それ以外をパートと呼び分けているだけで、時間給で短時間で働く労働者であることに変わりはありません。

準社員は正社員と同じ勤務時間で働きますが、パート・アルバイトはシフト通りに短時間業務に従事する点が違います。パート・アルバイトの方が働き方の自由度は高いと言えます。

パートやアルバイトは曜日や時間帯を指定して働けますが、準社員はそういうわけにはいきません。

試用期間との違い

大抵の企業では正社員を採用するにあたり、試用期間を設けています。試用期間とは、雇用した労働者の能力や適性を見極めるために企業が設けている期間をさし、3ヶ月から1年に及ぶところまで様々です。

試用期間中は基本給が低かったり、勤務態度に問題がある場合は期間延長されることもあります。

試用期間が過ぎれば、そのまま正規雇用されます。しかし準社員の場合、試用期間があっても正社員登用されるとは限りません。その点が大きく異なります。

準社員の契約内容で確認すべき4つのポイント

労働者は企業に採用されるにあたり、雇用契約を結びます。しかし、その内容をきちんと確認している人は案外多くないようです。

ここでは企業と労働契約を結ぶにあたり、準社員の契約内容で確認すべき4つのポイントについて説明します。

準社員には定義がないため、ある意味法律で守ってもらえない立場でもあります。そのため、雇用契約や就業規定をよく確認し、不利な立場にならないよう注意してください。

前提|契約内容は企業によって異なる

準社員に限らず、正社員や契約社員も企業と雇用契約書を取り交わします。雇用契約書とは、雇用主である企業と労働者の間で定めた労働に関する取り決めについて記載された書類のことです。

以下の項目が、労働基準法で定められた記載事項となります。

  • 契約期間
  • 就業場所
  • 業務内容
  • 始業と就業の時間
  • 休憩時間
  • 交替制について
  • 休日
  • 有給休暇
  • 賃金
  • 退職

これ以外に記載するのが望ましい内容に「賞与の有無」「昇給の有無」などがありますが、契約内容は企業に一任されています。

また、項目は同じでもその内容は企業によって異なるので注意が必要です。

ポイント①|雇用期間の規定

2012年に改正労働契約法が改正され、有期労働契約に関する制度が変更されています。

厚生労働省の「労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等」を参考に、雇用期間の規定が労働基準法と労働契約法ではどう変わったのかを比べてみましょう。

契約社員(有期労働契約)の雇止めを防ぐために行われた、法改正でした。

しかし労働基準法違反は労働基準監督署による行政指導を受けますが、労働契約法は民事上のルールとして定められたものなので、その効力に違いがあるのが現実です。

労働基準法では有期労働契約は3~5年と定められており、労働契約法では契約期間を必要以上に細切れにしないと明記されています。

だからこそ準社員として雇用契約を結ぶ場合は、上記の内容を踏まえて必要項目が明記されているかどうか、きちんと確認することが大事です。

ポイント②|給与体系と福利厚生

準社員は、給与体系や福利厚生が正社員と異なるケースが少なくありません。

そのため、以下の内容がどうなっているのかを、雇用契約を結ぶ前に確認しておくことをおすすめします。

賃金形態は時給・日給制が多い

準社員の賃金形態は月給ではなく、時給や日給制の方が多いようです。つまり、正社員と同じ仕事をしていても、給与水準は低くなります。

それは、残業した場合の手当にも表れます。業務内容と給与のバランスについても、チェックした方がよいでしょう。

昇給・ボーナスは正社員よりも少ない

厚生労働省の「平成30年度賃金構造基本調査」に「 雇用形態、性、年齢階級別賃金、対前年増減率及び雇用形態間賃金格差」という表があります。

そこから抜粋した、正社員と正社員以外の年収平均を表にまとめてみました。

準社員のみの統計は出ていませんが、契約社員や派遣社員も含む非正規雇用者と正社員の報酬に明確な差があることはわかります。

また昇給や賞与も、平均月額賃金や雇用形態が影響しますので、正社員より少ない、あるいはないこともありえます。

正社員登用制度がある会社に準社員としての入社を検討している場合は、実績や難易度について確認しておいた方がよいでしょう。

退職金はもらえない場合が多い

準社員は契約社員同様に、有期労働契約であるのが一般的です。そのため、退職金の積み立てを行わない会社が少なくありません。

準社員として長年勤務しても、退職金がもらえないケースが多いことを念頭に置く必要があります。

気になる場合は、雇用契約書について説明を受ける際に、退職金規定がどうなっているのかを聞いておきましょう。

条件を満たせば社会保険に加入できる

準社員であっても、条件を満たせば社会保険に加入できます。厚生労働省は「有期契約労働者を雇用する事業主の皆様へ~有期契約労働者の雇用管理の改善に関するガイドライン~」には、以下の記載があります。

事業主は、有期契約労働者の就業の状況等を踏まえ、加入の必要がある場合、雇用保険、  労災保険、健康保険、厚生年金保険に加入させてから就業させなければなりません。
○ 雇用保険は、1週間の所定労働時間が20時間以上であり、1年以上引き続き雇用され ることが見込まれる場合、被保険者になります。
○ 社会保険(健康保険・厚生年金保険)は、適用事業所の従業員であれば、一定の要件 (1日又は1週間の所定労働時間及び1月の所定労働日数が通常の就労者のおおむね4 分の3以上である場合など)を満たせば被保険者になります 。

上記の条件を満たしている場合は、会社に社会保険の加入申請を依頼しましょう。

また、社会保険の加入義務がある時間に見たないように雇用契約を結ぼうとしている場合は、入社を見合わせることをおすすめします。

ポイント③|業務内容の規定・範囲

準社員として採用された場合、雇用契約書を取り交わす前に、入社後の業務内容の規定や範囲がどうなっているのかを、きちんと確認しておきましょう。

正社員とまったく変わらない業務内容や責任を負わされるのに、給与に大きな差があるケースも少なくないからです。

自分のキャリアやスキルのアップに繋がる場合は別ですが、そうでない時は同じ業務で給料に差があることが職場への不満や不信感に変わるのは明白です。

ポイント④|正社員登用制度の有無

準社員採用に応募する際には、正社員登用制度の有無を必ず確認しておきましょう。正社員登用制度がある場合は、正社員雇用されてからミスマッチに気づく事態を避けるうえで、準社員として働くことに意味はあります。

しかし正社員登用制度がない場合、準社員はずっとその待遇のまま働くことになります。キャリアアップが見込めないのですから、やがて転職することを念頭に置く必要があります。

準社員として働くメリット・デメリット

準社員であっても、パートやアルバイトと比較すると、会社に勤める意味はあります。ここでは準社員として働くメリット・デメリットについて、具体的に紹介します。

メリット

準社員として働くメリットを、6つあげてみました。以下で詳述します。

①長期間雇用される可能性が高い

1つめは、パートやアルバイト、派遣社員と比較すると、長期雇用される可能性が高いことです。正社員同様の業務を任されるケースが多いため、会社にとってもなくてはならない存在になれます。

将来を考えると安定した勤務形態とはいえませんが、スキルアップやキャリアアップという観点で考えると、準社員として業務の経験を積むことは意味があります。

②定時に帰宅しやすい

2つめは、定時に帰宅しやすいことです。準社員は雇用契約を結ぶ際、時給や日給のことが多いと前述しました。そのため、労働契約に勤務拘束時間が明記されているのが一般的です。

正社員のようにサービス残業を頼まれることがなく、定時で帰れるのは魅力です。育児中の女性など、家庭と両立できる働き方をしたい人には適しています。

③仕事とプライベートの両立が比較的しやすい

3つめは、仕事とプライベートの両立が比較的しやすいことです。前述した通り、準社員は始業・終業時間が明確で、正社員よりずっと残業する機会が少ないものです。

そのため、退勤後の時間がとりやすいです。副業や趣味がある人にとっては、オンオフを分けやすい働き方といえそうです。

④転勤の可能性が低い

4つめは、準社員は転勤の可能性が低いことです。準社員採用にあたり、雇用契約書の勤務地の項目に「転勤の可能性あり」と記載する企業はほとんどありません。

全国展開している企業であっても、自宅から通いやすい職場で働き続けることができます。

⑤実務経験があまりなくても専門職に就ける可能性がある

5つめは、実務経験があまりなくても専門職に就ける可能性があるです。新たにスキルを身につけて異業種転職する場合、実務が未経験であることを理由に正社員採用を断られるケースは珍しくありません。

しかし準社員の場合は給与が低めに設定されていることもあり、実務経験が浅くても採用されるケースがあります。実務経験を積めば、その後に転職を有利に進められます。

⑥正社員登用される可能性がある

6つめは、正社員登用される可能性があることです。正社員登用制度がある会社はもちろん、中小企業などの場合は働きぶりを気に入られて、正社員になる人がたくさんいます。

同じ職場で正社員になれれば、環境を変えずに年収アップがかないます。陰ひなたなく一生懸命仕事をすることで、そうした恩恵が受けられるかもしれません。

デメリット

準社員として働くデメリットと考えられることを、5つ取り上げてみました。以下で詳述します。

①契約解除される可能性がある

1つめは、契約解除される可能性があることです。正社員ではなく準社員を採用する時点で、その会社は人件費を抑えたいと考えていると考えて間違いありません。

業務を回すための人員補充とした場合、業績が悪化すればまず準社員の契約を解除します。雇用が不安定であるという意識は、持ち続ける必要があるでしょう。

②給与が正社員より低い

2つめは、給与が正社員より低いことです。正社員と同じ仕事を担っていても、正社員とは基本給が違い、それが賞与や昇給にも影響します。

その結果、モチベーションが下がって会社を辞める準社員も少なくありません。正社員登用制度を受けるための我慢と割り切れればよいですが、将来性がない場合は不満の種になる可能性が高いです。

③正社員より福利厚生が整っていない

3つめは、正社員より福利厚生が整っていないことです。前述した「有期契約労働者を雇用する事業主の皆様へ ~有期契約労働者の雇用管理に関するガイドライン~」には、以下の記載があります。

事業主は、通常の労働者に対して利用の機会を与える福利厚生施設のうち、給食施設、 休憩室、更衣室については、有期契約労働者にも利用の機会を与えるよう配慮するべきで す(パート法第11条参照)。  そのほか、医療、教養、文化、体育、レクリエーション等を目的とした福利厚生施設の   利用及び事業主が行うその他の福利厚生の措置についても、有期契約労働者の就業の実態、   通常の労働者との均衡等を考慮した取扱いをするよう努めるべきです(パート指針第3の 1(3)参照)。

しかし、上記を遵守していない会社もあるのが現実です。また、施設利用の面では遜色がなくても、正社員につく住宅手当や家族手当などが、準社員にはつかないケースが多いです。

④仕事に対するやりがいが生まれにくい

4つめは、仕事に対するやりがいが生まれにくいことです。会社によっては、正社員と同じ業務を準社員が担うケースもありますが、基本的には有期労働契約労働者なので、就業時間に制限がかかります。

残業をさせないという事情や仕事に対する責任の所在を考えると、準社員が正社員並みに仕事を任される機会は少ないです。そのため、やりがいや働きがいを感じにくいところがあります。

⑤企業との契約・交渉は自ら行う必要がある

5つめは、企業との契約や交渉を自ら行わなければならないことです。正社員の場合は労働組合やコンプライアンス委員会などを通して、企業対社員で交渉を行うことができます。

しかし準社員は雇用契約を結ぶにあたり、自らが会社と交渉しなければなりません。また、解雇予告されたり、契約違反があった時にも会社の人事部が相談にのってくれることもないでしょう。

そうした厳しさもあることを、念頭に置く必要があります。

【参考】ユニクロの準社員採用制度

ファストファッションをグローバル展開しているユニクロには、準社員採用制度があります。ここでは、ユニクロの準社員採用制度を具体的に説明します。

ユニクロには準社員の採用枠がある

ユニクロには、準社員の採用枠が設けられています。準社員採用について説明するために、短期アルバイトと地域正社員と同じ項目を比較してみましょう。「ユニクロ アルバイト採用情報 募集要項」から一部を抜粋したのが、以下の表となります。

上記の表を比較すると、地域正社員と準社員で大きく異なるのは、勤務条件と賞与・決算賞与が支給される職位、昇給金額の幅だけです。

また「ユニクロ アルバイト採用情報 募集要項」には、「準社員またはアルバイトを経験後、地域正社員の登用チャンスがあります」と明記されています。ゆくゆくは正社員になるのも夢ではありません。

ユニクロの準社員になるメリット・デメリット

ユニクロの正社員でもアルバイトでもなく、準社員になるという選択肢にはメリットとデメリットがあります。ここでは、ユニクロの準社員になるメリット・デメリットについて説明します。

メリット

ユニクロの準社員になるメリットとして、以下のことが考えられます。

  • アルバイトより稼ぐことができる
  • 社会保険がつき、月々の収入が安定する
  • 正社員ほど思い責任を課されない
  • 週に休みが2日ある
  • 自分に適性があるかどうかを見極めてから、正社員に応募できる

就職後のミスマッチを恐れているなら、準社員やアルバイトとして職場を見極めるのも選択肢の一つです。前向きに検討してみましょう。

デメリット

ユニクロの準社員になるデメリットとして、以下のことが考えられます。

  • シニアリーダーになるまで賞与や決算賞与が支給されない
  • アルバイトよりシフトが自由に組みにくい
  • 業務が正社員並みに多岐にわたる
  • 時給を上げるために試験が科される

準社員はアルバイトより稼ぐことはできるものの、その分求められることも多く、その割に正社員に昇給幅は追いつかないなど、納得して働くのが難しいと考える人もいるようです。

ユニクロの準社員の評判

Twitter上には、ユニクロの準社員のコメントが複数投稿されています。

以下のツイートからわかるように、準社員制度は賛否両論あります。

「ユニクロ アルバイト採用情報 募集要項」では通勤交通費は支給となっていますが、但し書きに「店舗による」と記載されています。

この方は正社員を目指して準社員として勤務しているにも関わらず、交通費が支給されていないようです。社会保険加入の邪魔をするのも、ほめられることではありません。

Twitterでは準社員を目指して努力している人、準社員の試験に合格して喜んでいる人が多数見られたものの、「準社員でよかった」「準社員としてやりがいを感じている」という前向きなツイートはほぼありませんでした。

そのため、もしユニクロの準社員を目指したいと考えているなら、まずは実際に準社員として働いている人に実態を聞いてみることをおすすめします。

まとめ

今回は準社員とは何か、雇用契約を結ぶにあたっての注意点、その働き方のメリット・デメリットまで解説しました。

正社員として就職するのが望ましいですが、諸事情やタイミングのために準社員として採用されるケースもあることでしょう。しかし長いスパンでキャリア形成を考えると、準社員で働くことの是非が変わります。メリットとデメリットをはかりにかけ、自分の将来にプラスになる選択をすることをおすすめします。

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