就活をしているとよく耳にする「ガクチカ」という言葉ですが、これは「学生時代に力を入れたこと」の略です。「ガクチカ」でアルバイトについて話すことはだめなのでしょうか。一般的にはガクチカは部活やサークルのこと、留学経験やボランティアについて話す就活生が多いため、アルバイトで学んだことを話すのは少し気が引けるかもしれません。今回は、アルバイトをガクチカの題材にしていいのか、その疑問について解説します。
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この記事の監修者
キャリアカウンセラー|秋田 拓也
厚生労働省のキャリア形成事業にキャリアコンサルタントとして参画。
大手警備会社にて人事採用担当として7年間従事の後、現職にて延べ200名以上の企業内労働者へキャリアコンサルティングを実施。
■所持資格
国家資格キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
アルバイトを題材にガクチカを書くのはだめではない
アルバイトをガクチカの題材にしてよいかどうかは悩ましいかもしれません。自分の強みや経験をもっとも効果的にアピールできるのがアルバイトなら、アルバイトについて話すことは問題ありません。
以下で紹介するように、「ガクチカで話せるようなエピソードはアルバイトしかない」と思っている人も多数います。アルバイトに関するエピソードだからと不利になるようなことはないので、安心してください。
ガクチカがアルバイトしかないと悩む学生は多い
「大学生活はアルバイトしかやってこなかった」という学生は、意外と多いものです。そんな、アルバイト一色だった学生の声を紹介します。
自己PRとガクチカどっちもアルバイトじゃダメなの。。。アルバイトしかやってこなかったから、書くことない。。。どうしよ慌ててる。。。
— 上野 美聡 (@misayan0111) March 15, 2018
【誰か教えて】
自己PR、ガクチカ、長所のエピソードがバイト関連の話しかできずこれでいいのかって感じです。アルバイト先のエピソードでもいいと思うけど、学業のエピソードもあった方がいいのかな…全部アルバイトでいいのか…?誰か、教えて、就活終わった方…
— さえ (@machi_lot) February 6, 2020
どちらのツイートでも「アルバイトをガクチカの題材にしてよいのか」との迷いがうかがえます。前述したように、面接ではアルバイトのエピソードを話しても大丈夫です。
ただし、2つ目のツイートで言及しているよう、学業のエピソードを用意しておくことをおすすめします。面接官次第で「学業はどうでしたか」と聞かれる可能性も十分あるからです。
また、ガクチカと自己PRの両方がアルバイトの話になってもいいかと不安に思う学生もいると思います。両方がアルバイトの話になることには問題はありません。
ただし、ガクチカは「学生時代に力を入れたこと」、自己PRは「将来生かせる自分の強み」を話すので、面接官へのアプローチ方法も変わってくることを頭に入れておきましょう。
以下の記事では各テーマごとのガクチカの書き方を紹介しています。興味のある方はこちらも併せてご覧ください。
アルバイトの種類は重要ではない
アルバイトをガクチカで話すとき、アルバイトの種類は重要ではありません。どんなアルバイトであっても、「働く」ということは本質的には同じです。アルバイトの種類で有利・不利になることはありません。
居酒屋などの飲食店や接客業、ホテルやアパレルなど自分のアルバイトの職種を正直に話しましょう。もちろん、アルバイトの業種が志望企業と近ければプラス評価になることもあります。
アルバイトのガクチカで面接官が見ている観点
アルバイトをガクチカの題材にする時、面接官はどのようなポイントを重点的に見ているのでしょうか。
以下では、面接官が注視する4つのポイントについて説明します。ガクチカを考える時には、以下の4つを押さえておきましょう。
①結果に向かうプロセス
ガクチカで面接官が見たいことは「結果に向かうプロセス」です。課題にぶつかった時、目的をもった時にどう乗り越えるかで、就活生が仕事で困難を抱えた時にどう対処するかを見極めようとしています。
そのため、アルバイトでは「売上を2倍にした」「グーグルでの口コミの評価が上がった」などの結果を強調するよりも、そこに至るまでに「何をしたのか」「どう考えたのか」ということを丁寧に話すようにしましょう。
②学生の考え方・価値観
ガクチカによって、面接官は就活生個人の考え方や価値観を見ようとしています。個人の考え方や価値観が会社の方針に合うのか、就活生と企業のマッチング度をはかるためです。
考え方や価値観は意識せずともエピソードに滲み出るものですが、「面接官からどう見られたいか」も頭の片隅に入れておくと、より志望企業に合ったガクチカを話すことができるようになるでしょう。
③実際の業務に活用できるか
ガクチカの内容が、実際の業務に活用できるのかどうかも大切なポイントです。ガクチカのプロセスに再現性があるのか、それとも一回限りのことなのかを面接官は見ています。
実際の業務にも応用可能である経験だということを強調しましょう。そのためにも、そこに至るまでの思考プロセスをわかりやすく話すことが大切です。
④自社の社風に合うか
ガクチカだけではありませんが、面接中の空気や雰囲気から、面接官は就活生が「自社の社風に合うか」ということを注意深く見ています。
いくら優秀であっても、社風に合わなければ採用を見送られてしまうこともあります。たとえば志望企業が堅く伝統を大切にするタイプなら、型破りな経験をしたエピソードを話すと敬遠されることもあるでしょう。
志望企業の社風についても調べておき、ガクチカの内容を社風に合ったものに調整しておくことをおすすめします。
アルバイトを題材にガクチカを書く際のポイント・手順
では、アルバイトを題材にガクチカを考える時にはどんなポイントを押さえておけばよいのでしょうか。
以下で考え方のポイントと手順を紹介するので、ぜひ参考にしてください。
ポイント
アルバイトをガクチカの題材にする時のポイントは以下の6つです。
- ①ありきたりな内容にならないように気を付ける
- ②曖昧な表現は避ける
- ③自分自身の価値観や考え方を入れる
- ④伝えたいことは端的に述べる
- ⑤長くなりすぎないようにする
- ⑥数字を盛り込む
ポイントの詳細について紹介します。
①ありきたりな内容にならないように気を付ける
アルバイトをガクチカの題材にする時、「売上に貢献した」「客数を増やした」など、言いたい内容が他の学生とかぶってしまいがちです。
ありきたりな内容にならないよう、「採用担当者が新鮮な気持ちで読めるエピソードなのかどうか」を客観的に判断しましょう。友達やキャリアカウンセラーにガクチカをチェックしてもらうこともおすすめです。
②曖昧な表現は避ける
曖昧な表現はできる限り避け、極力具体的に表記しましょう。「地道に頑張って」「一生懸命」などを強調のために使ってしまいがちですが、曖昧な印象を与えてしまうので、避けることをおすすめします。
採用担当者があなたのエピソードをそのまま頭で描くことができるのが理想であり、そのために数字を交えることも効果的です。何をどのように行ったのか、読み手に疑問が残らないように意識してみてください。
③自分自身の価値観や考え方を入れる
ガクチカの中で、結果だけをフォーカスするのではなく自分自身の価値観や考え方を入れるようにしてください。
「結果に至ったプロセス」を意識していれば、自然と自分の価値観や考え方も相手に伝わるようになります。結果に至ったプロセスにこそ個性が自分らしさが現れるものだからです。
④伝えたいことは端的に述べる
ガクチカは自分が頑張ったことを伝えるため「あれも」「これも」となりがちですが、具体的にしつつもできるだけ端的に述べるようにしましょう。
伝えたいことこそシンプルな表現を使うようにしてみてください。ただし、同時にありがちな表現は避けなければなりません。ガクチカを考える時の頭の使いどころです。
⑤長くなりすぎないようにする
詳しく具体的に伝えようとするあまり、長くなりすぎることは避けましょう。長いと読み手を疲れさせてしまい、内容が頭に入ってこなくなります。
ESで文字数の制限がない場合、300〜500文字、多くても600文字以内にはおさめるようにしましょう。面接では長くとも1分半〜2分程度にガクチカをまとめておき、追加で面接官の質問に答える方法を取ることをおすすめします。
⑥数字を盛り込む
ただアルバイトで頑張ったと伝えるだけでは、面接官も学生がどのくらい頑張ったのかということが分かりません。
そこで、「売り上げを〇倍にしました」「客数を前年比〇%向上させました」というように数字を盛り込んで話しましょう。実際の数字を聞くことで、面接官は学生の頑張りをより具体的に理解することができます。
手順
アルバイトをガクチカの題材にする時の手順は以下の通りです。
- ①結論から述べる
- ②アルバイトを始める動機を述べる
- ③試行錯誤した経験を述べる
- ④アルバイトの経験から得た学びや価値観を説明する
4つの手順について解説します。
①結論から述べる
ガクチカに限らず、面接官やESの問いに対して答える時には常に結論から述べるようにしてください。
「学生時代に頑張ったことは、◯◯のアルバイトです。3か月で売上を2倍にしました。」など、ガクチカを簡潔にまとめる一言から話し始めるように意識しましょう。面接官が話の内容を理解しやすくなります。
②アルバイトを始める動機を述べる
なぜ数あるアルバイトの中からそのアルバイトを選んだのか、動機もガクチカの中で触れるようにしてみてください。実際には「なんとなく」「友達がいたから」そのアルバイトを始めたかもしれません。
ですが、ガクチカをより印象的にするためにも「接客をしてみたかった」「売上に興味があった」など、志望企業への志望動機につながるアピールになるよう工夫してみてください。
③試行錯誤した経験を述べる
結論とアルバイトの動機について触れたら、本題である「結果に至るまでのプロセス」を話すタイミングです。試行錯誤した経験を具体的に述べましょう。
スムーズに結果を出せたという話し方よりも、「工夫し、考え抜き、失敗しながらもなんとか目的を達成できた」と話す方がより自分らしさを伝えることができます。
④アルバイトの経験から得た学びや価値観を説明する
最後には、アルバイトの経験から得た学びや価値観でガクチカを締めくくるようにしましょう。ここがもっとも大切な部分だとも言えます。
その学びや価値観が、志望企業で求められる人物像や社風にマッチするように言葉や表現を選んでみてください。
アルバイトを題材にガクチカを書く際の注意点
アルバイトを題材にガクチカを書く時には、以下の3つの点に気をつけてください。
- ①短期間で辞めたアルバイトの話題は避ける
- ②専門用語の使用は避ける
- ③嘘をつかない
以下の3つの注意点にだけ配慮しておけば、アルバイトをガクチカの題材にすることは全く問題ありません。
①短期間で辞めたアルバイトの話題は避ける
短期間で辞めたアルバイトの話題は避けてください。他の学生の多くが長期にわたる活動について話しているため、「学生時代、短期間その程度しか頑張らなかったのか」と思われてしまう可能性があるからです。
最低でも半年〜1年ほど続けたアルバイトの話題を扱うようにしてください。アルバイトの短すぎる期間に対して「辞めぐせ・諦めぐせがありそう」との懸念をもたれてしまうことも考えられます。
②専門用語の使用は避ける
アルバイトで使用していた専門用語はガクチカの中では使わないようにしてください。どんな職場でもそこでしか通じないような専門用語を使うものですが、ガクチカではわかりやすく言い直しましょう。
特に飲食関連では「アイドル」「バッシング」など専門用語を使いがちです。専門用語をそのままエピソードの中で使うと、「配慮が足りない人」と捉えられてしまう可能性があります。
③嘘をつかない
アルバイトを頑張ったものの、華々しい結果を残したわけではないかもしれません。だからといって嘘をつく必要はありません。
結果よりも頑張ったプロセスが重視されるため、目標を達成したか、結果を出したかどうかはそこまで重要ではないからです。嘘をついていることが面接官にばれてしまうと、採用してもらえる可能性はゼロになります。
アルバイトを題材にガクチカを書く場合の例文
実際にアルバイトをガクチカに書く時の具体例を以下で4つ紹介します。
- カフェ(飲食)
- 塾講師
- アパレル
- イベントスタッフ
大学生に人気の職種をピックアップしました。ぜひ以下の例を参考に、アルバイトに関するガクチカを考えてみてください。
例①|カフェ
私が学生時代に頑張ったことはアルバイトです。さまざまな人と話すためのコミュニケーション能力を鍛えたいと思ってカフェのホールを選びました。しかし、チェーンのコーヒーショップが近所にできたことで売上が下がってしまいました。そこで店長と相談して柔らかい椅子を変えたり、電源を導入して「作業や勉強に集中できる」ことを店頭に立ってアピールし続けました。その結果、学生街だったこともあり半年で売上を元の1.5倍まで伸ばすことができました。この経験を生かして、何事も課題の根本をすぐに見抜けき解決していける社会人になりたいです。
カフェや居酒屋など飲食店で接客業のアルバイトをやっている就活生は少なくありません。どう話せば他の学生と差別化できるかをよく考えてみましょう。
例②|塾講師
私が学生時代に頑張ったことは塾講師のアルバイトです。「人にも勉強の楽しさを伝える」経験をしてみたかったからです。ある生徒の成績がずっと上がらず退塾寸前でした。そこで私は担当を申し出て、なぜ成績が上がらないのかを観察しました。そして集中力が長く続かないので、授業をそもそも聞いていないことがわかりました。その子の指導では細かく休憩や雑談を入れ、絵や図解を用いて興味をもたせながら、集中力を少しずつ長くする訓練を積みました。結果、期末テストでは1科目最高40点あげることができました。どんな生徒に対しても諦めず、地道な努力を信じて行動することが信念です。
塾講師も大学生に人気のアルバイトで、「伝える」仕事なので志望動機につなげやすく、ガクチカに使う就活生もよくいます。そのため、「結果に至るプロセス」のオリジナリティを追求することが大切です。
例③|アパレル
私が学生時代に頑張ったことはアパレルショップでの接客です。社会人になる前に接客販売をしておきたいと思いこのアルバイトを選びました。しかし、最初は全く服を売ることができずノルマ未達成が続きました。そこで、「お客さんは何を店員に求めているのか」を考えるようにして無理な接客を控えることに決めました。お客さん自身のコンプレックスを聞き出し、「どうなりたいか」に寄り添って一緒に服の選び方を考えるようにすると接客がとても楽しくなりました。自然とノルマも達成できるようになり、「話すより聞く」ことの大切さを学びました。
アパレルでのコミュニケーションは難しいものです。そこで、ただ「コミュニケーションをとることを頑張った」と話すのではなく、「どういうコミュニケーションをとったか」とコミュニケーションを具体的に話せるようにしましょう。
高度なコミュニケーション能力を培ったこと、またそのコミュニケーション能力がどういうものかが伝われば、面接でも好印象を残すことができるでしょう。
例④|イベントスタッフ
私が学生時代に頑張ったことはコンサートスタッフです。大好きなライブの裏側を見てみたいと思い始めたアルバイトです。アーティストに会えるとわくわくしていたものの、実際には分単位で予定された設営と緊急事態の対処への繰り返しで楽しむどころではありませんでした。しかし、慣れると起きやすいトラブルを予測することができ、設営の時点で椅子の配置を監督に相談したり、お客様どうしのトラブルになりそうなと箇所にはスタッフを配置したりと防止策を毎回提案しました。この経験を通して、柔軟に考えて臨機応変に動き、常に先のことを考える癖がつきました。私は社会人になっても常に先を見通すことを大切にしたいです。
裏方バイトもガクチカとしてアピールできることがたくさんあります。段取り能力や管理能力、仲間どうしでのコミュニケーション能力などが伝わるよう工夫してみてください。
以下の記事では「学業で力を入れたこと」の答え方やテンプレについて紹介しています。
アルバイトをガクチカとして話すと学業について突っ込まれることもあるため、学業で頑張ったこともあわせて答えられるようにしておきましょう。
ガクチカに困ったら
いざ、実際にガクチカを考えるとなると、「本当にこれでよいのか」「しっかり伝わるか」と不安に思う学生も多いはずです。そこで、ガクチカを書くのに困ったらどうすべきかを紹介します。
①先輩や友達にフィードバックしてもらう
ガクチカを書く際に大切なのは、それを聞いた相手がどう受け取るかです。そこで、完成したガクチカを大学の先輩や友人に見てもらいましょう。
正直な感想を聞くことで、面接官があなたのガクチカを聞いたらどう感じるかが想定できます。自分自身が伝えたいことがうまく伝わっているか、誤った印象を与えないかをしっかり確認しましょう。
②就活エージェントに相談する
就活エージェントは、企業の紹介だけでなくESの添削や模擬面接を行ってくれます。実際に自分で書いたガクチカを見てもらうことで、面接官がガクチカを聞いてどう受け取るか、どうすればより良いガクチカが書けるかといったアドバイスを受けることができます。
- キャリアパーク
- キャリアチケット
- doda新卒エージェント
上記以外にもさまざまな就活エージェントがあります。就活エージェントをうまく使ってガクチカを完成させましょう。
③就活生のESを参考にする
多くの就活サイトでは、就活生が実際にどのようなガクチカを書いたか知ることができるサービスがあります。
- one career
- unistyle
- 外資就活
上記のサイトやほかの多くの就活サイトでは、会員登録をすると実際に就活生がどのようなESを書いたか知ることができます。自分自身と同じような経験で他の就活生はどういったガクチカを書いているか、自分自身が書いたガクチカがありきたりではないかということがわかります。
まとめ
今回はアルバイトをガクチカで話す場合について解説しました。
ガクチカを答える時にアルバイトを題材にすることは問題ありません。ただし、学業について頑張ったことはないか聞かれる可能性もあるので、学業に関するエピソードも用意しておきましょう。
ガクチカを話す時は自分らしさや考え方を伝えることが大切です。アルバイトのエピソードは自分の「仕事への姿勢」「価値観」を具体的に伝えることができるので、ガクチカに適していると言えます。
本文で紹介したポイントを押さえ、自分らしさを効果的にアピールできるガクチカをしっかりと練り上げるようにしてください。