近年の労働問題のひとつに数えられる「超過勤務」ですが、皆さんは正しく理解されているでしょうか。しっかりと理解していないと、知らぬ間に長時間労働になってしまったり、賃金未払いに気付かないなどの問題に繋がる可能性もあります。本記事で正しい理解を深め、心身ともに健康的な働き方について考えていきましょう。
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この記事の監修者
キャリアカウンセラー|秋田 拓也
厚生労働省のキャリア形成事業にキャリアコンサルタントとして参画。
大手警備会社にて人事採用担当として7年間従事の後、現職にて延べ200名以上の企業内労働者へキャリアコンサルティングを実施。
■所持資格
国家資格キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
超過勤務とは
超過勤務とは契約によって定められた時間を超えて労働をすることです。
超過勤務が重なると、肉体的および精神的なバランスを崩し、健康的な生活を送れなくなるという問題に発展することもあります。
また、仕事の効率低下など様々な問題の引き金にもなります。
超過勤務とは一体何かということについて正しい知識を持ち、トラブルに巻き込まれないように注意しましょう。
超過勤務は法的労働時間を超える労働のこと
超過勤務とは契約によって定められた時間を超えて労働をすることであるとは先に述べた通りです。
労働基準法では1日8時間、週40時間を超える労働を超過勤務とみなします。
つまり、契約上定められた勤務時間が9時〜18時までだとすると、18時を超えて労働を行った場合、その分は超過勤務として扱われます。
また、反対に契約上の労働時間が9時〜18時にもかかわらず、8時からの勤務が強制的に義務付けられている場合も超過勤務になります。
ただし、この場合、退勤時間が17時であれば超過勤務にはなりません。労働時間が1日8時間の範囲に収まっているからです。
また、これはあくまでも「労働者」として使役する者に適用される法律になるので、いわゆるフリーランスの方など「事業主」に該当する場合はこの限りではありません。
超過勤務の同義語
超過勤務はそれ以外にも様々な呼び方をされる場合があります。
例えば、皆さんも聞き慣れているであろう「残業」でしたり、「時間外労働」、超過勤務を略して「超勤」などと称されることもあります。
呼称は違えど、どの言葉も契約あるいは法律によって定められた時間を超えて労働を行うことですので、覚えておくようにしてください。
超過労働には超過労働手当が発生する
続いては、もし皆さんが超過勤務を行った場合に発生する「超過労働手当」について解説していきます。
超過労働手当を受け取ることは労働者の権利ですので、これから就職する方は特に、ご自身の労働上の権利を把握し、それを超えた振る舞いをしたり、反対にないがしろにされることがないよう、注意しましょう。
超過労働手当の意味
超過労働手当は残業手当や時間外労働手当とも呼ばれ、超過労働を行った分、特別に支払われる賃金のことです。
休日出勤をした際の手当や深夜手当などもこれに含まれます。
労働基準法においては、この超過労働手当は通常の労働時間内で労働を行った場合の賃金の25%以上50%未満の率で計算し、支払われなければならないと定められています。
詳しい計算方法については後述しますが、超過勤務を行った場合、この超過労働手当が正しく計算され、給与に反映されているかどうか、ご自身でも計算してみてください。
超過労働手当とみなし残業手当の違い
超過労働手当については前項で説明しましたが、似た言葉のひとつに「みなし残業手当」があります。これは超過勤務手当と何が違うのでしょうか。
まず、「みなし残業」とは、あらかじめ一定の超過勤務を見込んで、通常の賃金や諸手当と一緒に労働者に支払っておく制度を言い、それに伴って発生した金銭を「みなし残業手当」と言います。
みなし残業手当は「固定残業代」と呼ばれることもあります。
超過労働手当、みなし残業手当はどちらも超過勤務に対して支払われる手当ですが、その支払われ方に違いがあります。
超過労働手当は超過勤務を行った分だけ発生するのに対し、みなし残業手当は残業をしてもしなくても毎月支払われます。
また、みなし残業の制度を導入していた場合、みなし残業に含まれている時間までは超過勤務をしたとしても追加で賃金が貰えるわけではありません。
しかし、その時間を超える労働をした場合は、その分超過勤務手当を貰うことができます。
超過勤務に関する注意点
続いては超過勤務に関する注意点についてお話していきます。
超過勤務はそれ自体が即座に違法になるものではありませんので、繁忙期で企業から超過勤務を命じられた場合、それに応じても問題はありません。
しかし、ある条件下においては違法となる可能生があります。
不当な超過勤務は違法になるばかりか、その他にも様々な問題の引き金になる危険性もありますので、注意しましょう。
注意点①|超過労働命令には上限がある
企業が労働者に対して残業を命じることを「超過労働命令」と言います。企業はこの超過労働命令が認められる範囲であれば、労働者に残業をさせても法律に触れることはありません。
では、その超過労働命令が適法とされる範囲は、具体的にどの程度なのでしょうか。
超過労働命令の上限は、原則として月45時間・年360時間とされています。
臨時的な特別な事情がある場合はこれを超えて残業を命じることも可能で、例えば自然災害への対処などがこれに該当します。
しかし、そういった状況であっても、年720時間以内・複数月平均80時間以内(休日労働含む)、月100時間未満を超えて超過労働命令をすることはできません。
これを超える超過勤務がある場合は違法ということになります。
参考:人事院「超過勤務の上限等に関する措置について」
注意点②|超過勤務を行う事業所は36協定の締結をしなければならない
会社が法定労働時間を超える労働を命じる場合、従業員との間で「36協定」と呼ばれる協定を締結しなければなりません。
この協定では法定労働時間である8時間を超えて業務を行う場合がある旨を従業員に対して通知すると共に、時間外労働を行う業務の種類や1日、1ヶ月および1年あたりの超過勤務の上限を定めなければなりません。
この36協定を締結していないにもかかわらず、法定労働時間を超えて業務を行っている場合は違法であると言えます。
また、前項で超過勤務の上限についてお話ししましたが、例え36協定を締結していたとしても、上限を超える時間労働を行うことは違法です。
超過労働の計算方法
超過労働を行った場合、自分は一体どのくらいの手当を受け取ることができるのか、計算で求めることができます。
超過勤務手当を計算する式は「基礎時給×割増率×超過勤務時間」です。
順番に説明していくと、基礎時給はあなた自身の月給を1ヶ月の所定労働時間で割ったものを言います。
続いて割増率ですが、これは労働条件によって変わります。詳しくは以下の表にまとめたので、ご確認ください。
出典:クエストリーガルラボ
そして最後に超過勤務時間をかければ、本来受け取るべき超過勤務手当が分かります。
言葉だけでは分かりにくいと思いますので、例として、1日8時間、週40時間、一月平均所定労働時間が170時間、月給23万円の条件で働くAさんの超過勤務手当を計算してみましょう。
まずは基礎時給の計算です。23万円÷170時間=1352.9…円なので、Aさんの基礎時給は約1353円です。
続いて割増率と超過勤務時間です。Aさんはその月、時間外労働を20時間、休日労働を5時間行いました。時間外労働の割増率は1.25、休日労働の割増率は1.35です。
以上を全て計算すると、以下のようになります。
- 時間外労働分の超過勤務手当=1353×1.25×20=33,825円
- 休日労働分の超過勤務手当=1353×1.35×5=9,132.75円≒9,133円
- 超過勤務手当合計=33,825円+9,133円=42,958円
超過労働手当をもらえない際の対処法
自分で超過労働時間を計算してみた結果、未払いの超過労働手当があることが発覚した場合はどうすればよいのでしょうか。
超過労働手当を受け取ることは労働者の権利であり、事業者は労働者にそれを支払う義務があります。
もし、皆さんがそういったトラブルに巻き込まれてしまった場合、以下のような行動を起こすことができます。
正しい知識がなかったばかりに泣き寝入りをするようなことがないよう、本項を見て備えておきましょう。
対処法①|企業に請求書を送付する
未払いの超過勤務手当がある場合、労働者は使役されている企業に対して請求書を送付することができます。
しかし、ただやみくもに請求を行うだけでは、1円も支払われない可能性もあります。そんな状況を避けるためには、有効な証拠を集めておく必要があります。
未払いの超過勤務手当がある場合、その未払いの賃金があるという事実を、ご自身で証明しなければならないのです。
請求書を送付する際は以下のような証拠が役に立ちます。
- 未払いの超過勤務手当があることを示す証拠
- 超過勤務を示す証拠
未払いの超過勤務手当があることを示す証拠とは、雇用契約書または就業規則のコピーなどをいい、契約によって定められた労働時間を示すものです。
次の超過勤務を示す証拠とは、タイムカードや就業日報など、出勤時間と退勤時間が分かるものを指し、実際に契約によって定められた時間以上の労働があったことを証明する書類です。
これは可能な限り正確な時間を記録しておくことで、より説得力のある証拠になります。
こうした証拠がなければ、事業主に対して超過勤務があったことを客観的に示すことができず、彼らが支払いに応じない可能性があります。
対処法②|労働基準監督署に相談する
未払いの超過勤務がある場合のもうひとつの対処法は、労働基準監督署に相談することです。
労働時間基準監督署は労働基準法が守られていない企業に対して、監視や指導を行う権限を持った組織です。
労働基準監督署は無料で相談を行っているので、証拠を持って相談に行けば、どうすればよいのかアドバイスをもらうことができる他、事業主に対して未払いの超過勤務手当を支払うように是正勧告をしてもらうことも可能です。
対処法③|労働審判を起こす
請求書を送っても事業主が話し合いに応じない場合、労働審判を起こすことです。
「労働審判」とは日本の法制度のひとつであり、1名の労働審判官と2名の労働審判員を交えて、労働者と事業主の間に発生した労働問題を解決するものです。
事業主と労働者による話し合いが平行線になり、決着を見せない場合は裁判を起こすこともできますが、裁判を行うためには多くの書類や煩雑な手続きが必要になり、問題を解決するまでに非常に多くの時間を要してしまいます。
そこで制定されたのが労働審判で、裁判よりも簡易的かつ迅速な審理を行うことができます。
とはいえ、労働審判は通常1年以上の期間を要するもので、労働者にとっては大変な負担になります。これ以外に方法がない場合以外は行わないことをおすすめします。
まとめ
社会問題として取り上げられることも多い「超過勤務」。適法に行われているなら問題はありませんが、中には賃金未払いなど違法となっているケースもあります。これから社会に出る皆さんは特に、超過勤務に対する理解を深め、万が一の事態にも対処できるようにしておきましょう。