人生100年時代が提唱されるようになり、教育現場でもキャリア形成が意識されるようになりました。しかし、キャリア形成とは何か、そのために必要なスキルについては、周知されているとは言い難いようです。そこで今回は、キャリア形成とは何かについて、厚生労働省の概念や考える方法、その展望について解説します。
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この記事の監修者
キャリアカウンセラー|秋田 拓也
厚生労働省のキャリア形成事業にキャリアコンサルタントとして参画。
大手警備会社にて人事採用担当として7年間従事の後、現職にて延べ200名以上の企業内労働者へキャリアコンサルティングを実施。
■所持資格
国家資格キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
キャリア形成とは
現代社会において、自分でキャリア形成することは必須事項といっても過言ではありません。終身雇用制度や年功序列が崩れた日本社会では、キャリア形成していない会社員は淘汰される時代を迎えているからです。
ここではキャリア形成とは何かその概念について、様々な視点から説明します。
キャリア形成の厚生労働省の定義・意味
2002年7月に厚生労働省は、「『キャリア形成を支援する労働市場政策研究会』報告書」を発表しています。その中で、「キャリア形成の意義」について説明していました。
ここでは上記報告書に基づき、厚生労働省が定義するキャリア形成の意味について詳述します。
キャリア
「『キャリア形成を支援する労働市場政策研究会』報告書」では、「キャリア」の意味について、以下のように説明しています。
「キャリア」とは、一般に「経歴」、「経験」、「発展」さらには、「関連した職務の連鎖」等と表現され、時間的持続性ないし継続性を持った概念として捉えられる。「職業能力」との関連で考えると、「職業能力」は「キャリア」を積んだ結果として蓄積されたものであるのに対し、「キャリア」は職業経験を通して、「職業能力」を蓄積していく過程の概念であるとも言える。
仕事という概念でみる「キャリア」は、職業または技能を通して得られた、持続性・継続性をもった経験・経歴を意味します。また「キャリア」には、人間性を磨くことをさす「人生キャリア」もあります。
キャリア形成
同書では「キャリア形成」の意味について、以下のように説明しています。
「キャリア形成」とは、このような「キャリア」の概念を前提として、個人が職業能力を作り上げていくこと、すなわち、「関連した職務経験の連鎖を通して職業能力を形成していくこと」と捉えることが適当と考えられる。また、こうした「キャリア形成」のプロセスを、個人の側から観ると、動機、価値観、能力を自ら問いながら、職業を通して自己実現を図っていくプロセスとして考えられる。
「キャリア形成」とは、仕事だけでなく人生における自己実現の観点からも必要な、様々なスキルを身につけていくことです。
新卒・中途問わず、「キャリアの考え方をしっかり腹落ちさせてから自身のキャリア形成について考えたい」という方は、キャリアおよび組織マネジメントの問題を専門とする青山学院大学 経営学部経営学科教授、山本寛教授のインタビュー記事も合わせてご覧ください。
キャリア形成の類義語
現代は就活だけでなく、大学の講義の中でもキャリア形成について学ぶことが珍しくありません。しかし就活生にも、「キャリア形成」と類義語を混同している人が多いようです。
ここでは特に間違えやすい、「キャリア形成」と「キャリアデザイン」「キャリアアップ」の違いについて説明します。
キャリアデザイン
「キャリア形成」の意味は前述しましたが、就活においては目標とする業界や職種への就職を実現するために、資格取得を含めたスキルアップや、自己実現力を磨くことといえます。
一方の「キャリアデザイン」とは働くことを中心として、自分の人生をどう設計するかを思い描くことです。そのために、以下のことを考えます。
- 自分にとって働くとはどういうことか
- 自分はどんな仕事に就きたいのか
- 社会で自分を生かせるのはどんな場所か
- 自分はどんな自己実現をしたいのか
就活で自己分析を行うのは、キャリアデザインを明確にすることで、適職を見つける一助となるからです。
キャリアアップ
「キャリアアップ」と「スキルアップ」も、混同されることが多い言葉です。しかし、意味は明確に違います。
- キャリアアップ/より好条件あるいは職位が高い仕事に就くために、自分の市場価値をあげる経験・経歴をつくること
- スキルアップ/業務に必要な能力や技能を習得、あるいは資格を取得することでレベルアップを図ること
キャリアアップは自分の市場価値を、スキルアップは個人の業務処理能力を高めることを意味します。どちらも職業キャリアに含まれるもので、人生キャリアも関わるキャリア形成とは、意味が異なります。
キャリア形成の例
キャリア形成の実際の例を上げていきます。
- 特定業界の営業のプロとしてキャリア形成をしていきたい
この場合、新卒で特定業界の企業に入社するルートもしくはまずは営業力のある企業に入社するルートのどちらも考えられるでしょう。
このキャリア形成をする上で身につけるスキルは大別すると、①特定業界の専門知識 ②営業力 ③マネジメント経験 になりますので、同時もしくは順に身につけていくことでキャリア形成をしていくことになります。
個人の営業マンとしてずっとやっていくのであれば③は不要ですが、「プロ」を名乗る以上は配下の営業部隊の成果最大化、すなわちマネジメントスキルもキャリア形成の上では欠かせないものとなるでしょう。
キャリア形成の重要性が増している背景
ITの発達により、企業のグローバル化が加速した現代、旧来のビジネスモデルが通用しなくなっています。その結果、短いスパンでビジネスモデルが変化するようになり、雇用した労働者に対して企業が求めるものも変わりました。
ここでは、キャリア形成の重要性が増している背景について説明します。
AIが人間の仕事の50%を代替する
野村総合研究所は2015年12月に、「日本の労働人口の 49%が人工知能やロボット等で代替可能に~601種の職業ごとに、コンピューター技術による代替確率を試算~」というレポートを発表しました。その結果、技術的には日本の労働人口の約49%が、AI(人工知能)等で代替可能であることがわかりました。
そこで代替するのが難しいとされたのが、創造性や協調性を必要とする、あるいは非定型な業務でした。そうした業務につくためには、キャリア形成が不可欠なのです。
終身雇用の限界
2019年5月13日にトヨタ社長、日本自動車工業会・会長として、以下の発言をしています。
雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、なかなか州心境を守っていくのは難しい局面に入ってきた。
トヨタ自動車は終身雇用が前提なので、会社の出世コースから外れても、年齢に合わせて高収入を得られます。その結果、モチベーションの低いミドル層が増えており、それをカバーできる企業体力が、トヨタ自動車ですらなくなっていることを意味します。
通年採用時代に突入
2018年10月9日に時事通信は、「経団連、就活ルール廃止」をニュースで伝えました。その内容は、2021年春以降の新卒採用から就職協定を廃止するというものです。
そもそも就職協定は、大学生が学業を優先できるように制定されました。しかし近年はインターンシップが盛んとなり、早期から企業が優秀な大学生と接触し、囲い込むことができるようになっています。それも、就職協定廃止の原因の一つです。つまり、就活は通年採用時代に突入したといえます。
キャリア形成をするために必要なスキル
就活生はもちろん、すでに社会人として働いている人においても、キャリア形成は必要です。しかし、キャリア形成はスキルがなければ実現できません。
ここでは、キャリア形成をするために必要なスキルについて説明します。
①コミュニケーション能力
代替がきかない職種に欠かせないスキルの筆頭といえば、コミュニケーション能力です。対話だけでなく、メールやチャットなどコミュニケーションツールは多様化していますが、他者と関わり、信頼関係を築くためには不可欠なスキルです。
相手の話を聞いたうえで理解し、自分の考えをわかりやすく伝えるという、基本的なコミュニケーション能力を、学生時代に磨いておくことをおすすめします。
②自己成長能力
就活での自己分析は、自分の強み・弱みを明確にするだけでなく、自身の志向性や人間性を知ることでもあります。そうした自分の特性を理解したうえで、成長しようとする気持ちと努力する行動力をさす、自己成長応力も不可欠なスキルです。
強みを伸ばすのか、弱みを克服するのかという手段に個人差はありますが、自分で自分を成長させようという姿勢がなければ、スキルもキャリアも身につけることはできません。
③課題発見能力
仕事だけでなく人生においても、誰もが何らかの問題を抱えるものです。そうした課題にいち早く気づける課題発見能力も、キャリア形成において重要なスキルです。
課題が明確になれば、それを解決するための方法を考え、実践することができます。また、その過程で新たな知識やものの見方、解決するための手段を会得すること
④計画実践能力
キャリア形成するためには、計画実践能力も欠かせません。キャリア形成のために具体的に何をするのかを計画し、それを実行しなければ、レベルアップにはつながらないからです。
その際、いつまでにどのレベルに到達するかを、きちんとスケジュールとして落とし込むのがポイントです。これは、学生時代にレポート提出やテスト勉強などで実行することで、早期からスキルを磨けます。
キャリア形成をするときに意識すべきポイント
キャリア形成に必要なスキルがあっても、それが身になるかどうかは本人次第です。ここでは、キャリア形成をするときに意識すべきポイントについて説明します。
①長期的な計画を立てる
キャリア形成の計画を立てる際には、短期的な目標だけでなく、中期的・長期的な計画を立てることをおすすめします。
特に昇進を目指している人は、「何歳で役職に就く」という長期目標を設定してから、そこに到達するためにいつまでに何をすべきかを考えると、中期・短期の計画が立てやすくなります。
長期的な計画を立てておけば、実践してうまくいかなかった時に、目標は変えずに方法を見直すことができるようになるはずです。
②身近にいるロールモデルを探す
キャリア形成は、机上の空論では実現しにくいものです。そのため、身近に自分の理想に近いロールモデルがいないかを探してみましょう。特定の1人ではなく、複数の人の良いところを参考にしてもかまいません。
働き方やワークライフバランスの取り方など、自分が憧れるロールモデルを見つけたら、その人が行っていることを真似してみるのです。そのうえで、自分にあったやり方を模索してみましょう。
③自分の志向性と適職を知る
憧れていた業界や好きなことと直結する職種に、適性がある人ばかりではありません。また、仕事は好きでも職場環境に合わなくて悩む社会人もいます。
そうしたミスマッチを避ける意味でも、自分の働くことに対する志向性を見極めることをおすすめします。それが明確になると、自分にとっての適職や働き心地の良さに気づき、自ら活躍できる環境を探せるようになるはずです。
④決めたことはすぐに実行する
キャリア形成は自分の意思だけでなく、会社に求められることを実現することでもあります。そのため、自分が決めたキャリア形成のためのプロセスは、すぐに実行するのがセオリーです。
また社会人経験が長くなると、スカウトやヘッドハンティングという方法で、自分のキャリア形成につながるチャンスが巡ってくることがあります。そんな時も、自分のキャリア形成にプラスだと思うなら、積極的につかむ気概が必要です。
⑤Will・Can・Mustで考える
最後に、キャリア形成を考える上では
- Will:やりたいこと
- Can:できること
- Must:やるべきこと
のうち、Will、Canを重要視しましょう。日々の仕事や目先のことに忙殺しているとついMustのことばかり考え、自身のキャリア形成について目を向ける機会は減ってしまいます。
現在、できること(Can)から将来、やりたいこと(Will)に補助線を引いた時に、今足りないことやキャリア形成に必要なスキルを列挙していきます。それらを1つずつ身につけていくと、いまできないことWillもできるようになるはずです。
まとめ
今回は、キャリア形成とは何かについて、厚生労働省の概念や考える方法を解説しました。
近年パラレルワークをする人が増えているのも、自分のキャリア形成について真剣に考えている人がいるからに他なりません。将来の自分のためにも、今すぐできるキャリア形成方法を実行してみることをおすすめします。