「卒業させない」「単位がもらえない」など大学・大学院で理不尽な扱いを受けていませんか。それはアカハラかもしれません。本記事ではアカハラとは何か、具体的に何がアカハラになるのかを解説しています。ご紹介する事例を見ながら、自分の周りでアカハラが起こっていないかチェックしてみてください。
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この記事の監修者
キャリアカウンセラー|秋田 拓也
厚生労働省のキャリア形成事業にキャリアコンサルタントとして参画。
大手警備会社にて人事採用担当として7年間従事の後、現職にて延べ200名以上の企業内労働者へキャリアコンサルティングを実施。
■所持資格
国家資格キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
アカハラ(アカデミック・ハラスメント)が深刻化している
アカハラは全国的に発生しており、苦しんでいる方は多いです。
ここでは、アカハラに関する報道や、Twitterでの発言などから、アカハラの発生状況について見ていきます。
全国の大学でアカハラは発生している
日本におけるアカデミック・ハラスメント研究の動向によると、アカハラが報道されるようになったのは、2000年代初頭からです。2001年を皮切りに、次々と報道されるようになりました。
具体的事例としては、2018年の上智大学の教員が女子大生にアカハラ・セクハラをしていた事件や、2019年の九州大学で大学教員が学生の発表中にスマホを触っていた事件などがあります。これらの事件では、大学教授が学生を恫喝する、学生に不正行為を強要するなどの行為が見られました。
その他の大学でもアカハラが報告されており、各大学の相談窓口には、毎年アカハラに関する相談が寄せられています。
アカハラ被害を訴えるTwitterの声
アカハラ被害はTwitterでも報告されています。
医学部、「一つでも単位落としたら留年」の制度があるせいで一つ一つの教科の講師が強大な権力持ってるから、平気でアカハラが蔓延ってる。マジで理不尽なことされたらアカハラ通報したい。
— じぇりわかんない (@QUIS_QUAD) February 11, 2020
こちらのツイートでは、医学部でアカハラをする教授がいることを報告しています。学生が単位取得のために教授に逆らえない状況を利用して、理不尽な言動をしているようです。
今日から大学だけど行くと過呼吸起きるし鬱病っぽくなるから行きたくない🤔アカハラの巣窟だしさ🤔辞めたい(3月卒業)
— ✻koko✻ (@koko_book_) January 7, 2020
またこちらのツイートからは、アカハラで精神的に追い詰められている学生がいることがわかります。学生が教授の言動のために辞めることを余儀なくされるのは、理不尽と言わざるをえません。
このように、アカハラは一部で見られています。自分は関係ないと思っていても、いつアカハラの被害に遭うのかはわかりません。特にゼミなど、教員と学生の距離が近い授業ではさらに注意が必要です。
アカハラとは
ところで、アカハラとは正確にはどんな意味を持った言葉なのでしょうか。ここでは、アカハラの定義と、想定されるアカハラの被害者をご説明します。
意味
アカハラとはアカデミックハラスメントの略語です。特定非営利活動法人NAAHは、アカハラをなくすための活動をしている組織ですが、アカハラを以下のように定義しています。
当NPOでは、" 研究教育に関わる優位な力関係のもとで行われる理不尽な行為 "と定義しています。例えば、教員の場合では、上司にあたる講座教授からの研究妨害、昇任差別、退職勧奨。院生の場合では、指導教員からの退学・留年勧奨、指導拒否、学位不認定などがあります。
アカハラは研究機関での力関係を利用した、理不尽な行為全般を指しており、幅広い意味を持った言葉だとわかります。
アカハラにはパワハラやセクハラも含まれています。企業で見られるようなパワハラ・セクハラも、大学などの教育機関で行われると「アカハラ」と呼ばれることがあります。
主な被害者
アカハラで想定される被害者は、以下のような方々です。
- 大学生
- 大学院生
- 教員(教授、准教授)
- 職員
学生に対するアカハラが多く報道されているため、「アカハラ=学生が受けるもの」というイメージが定着しています。しかし実際は、教員間にも上下関係があり、上司となる教授から理不尽な命令が下されることがあります。この場合もアカハラに該当します。
アカハラ簡単チェック
以下ではアカハラの11の定義と事例を紹介しますが、まずは簡単に「アカハラに自分があっていないかどうか」をチェックしてみましょう。
もし下記の項目にあてはまるものがあれば、あなたはアカハラの被害者となっているかもしれません。
- 正当な理由なく単位がもらえないことがあった
- 一般企業だとパワハラ・セクハラにあたるようなことをされた
- 教授や先輩が理不尽な発言をする
- アルバイトや就活など大学以外の生活を制限されることがある
これらは、アカハラの細かな定義を大まかにまとめたものです。あくまで簡単なチェック項目なので、詳しくは以下の見出しで解説します。
アカハラの11個の定義と事例
特定非営利活動法人NAAHは、アカハラを以下の11分類にわけて定義しています。それぞれに具体的な事例をあげていますので、自分の身の周りで起きていないかチェックしてみてください。
①学習・研究活動への妨害
研究教育機関における正当な活動を直接的・間接的に妨害することを指します。事例としては、以下のようなものがあります。
事例
具体例として、以下が挙げられます。
- 個人的な理由で、授業・ゼミ・学会等に参加させない
- 個人的な理由で、研究室に入らせない
- 正当な理由なく、他の人と別室で研究をさせる
- 他の人に研究の相談をすることを許さない
- 研究に必要な文献や実験機器を使わせない
- 研究に必要な物品を勝手に廃棄する
- 研究に必要な物品の購入を承認しない
- 研究に必要な出張を承認しない
- 研究費の申請を妨害する
- 研究をさせず、掃除などの雑用を命じる
また、山形大学では、学生が研究室の旅行よりも中間試験を優先したいと申し出た学生に対して助教授が旅行の参加を強要し、ストレスが募って学生が自殺してしまった事件も起こっています。
②卒業、単位、進級の妨害
学生の進級・卒業・修了を正当な理由無く認めないこと、また正当な理由無く単位を与えないことを指します。事例としては、以下のようなものがあります。
事例
- 恣意的な理由で単位を与えない
- 単位を与えない理由を言わない
- 恣意的な理由で留年させる
- 卒業要件を既に満たしているのに、教授の手伝いをしないと卒業させないと脅す
③選択権の侵害
就職・進学の妨害、望まない異動の強要などを指します。事例としては、以下のようなものがあります。
事例
- 正当な理由なく、就職活動を禁止する
- 正当な理由なく、進学や就職に必要な推薦状を書かない
- 就職先に本人の不利な情報を流す
- 正当な理由なく、本人の希望する研究をさせない
- 他の研究機関へ異動するよう圧力をかける
- 気に入らない等の理由で退職・退学させようとする
- 指導教員の変更を願い出ると不利な扱いをされる
④指導義務の放棄、指導上の差別
教員の職務上の義務である研究指導や教育を怠ること、また指導下にある学生・部下を差別的に扱うことを指します。事例としては、以下のようなものがあります。
事例
- 提出された論文原稿を見ない
- 研究成果が出ない責任を学生のみに負わせる
- 嫌いな学生の指導を拒否する
- 授業の質問を受け付けない
- 学生が研究に行き詰まっても、指導やアドバイスをしない
- 作業を命じるが、具体的な手順等を説明しない
- 面談など、学生とのコミュニケーションを拒否する
冒頭に紹介した九州大学の事件では、大学教員が学生の発表中にスマートフォンばかり見ていたり、人前で大声で叱責したり、学生への注意を他の人たちも見ることができる状態にして送信したりしていました。
⑤不当な経済的負担の強制
本来研究費から支出すべきものを、学生・部下に負担させることを指します。事例としては、以下のようなものがあります。
事例
- 研究費から出すべきものを自費で購入させる
- 実験に失敗すると、それまでにかかった費用を弁償させる
- 研究費に余裕があるのに、十分な研究材料を与えない
⑥研究成果の収奪
研究論文の著者を決める国際的なルールを破ること、アイデアの盗用などを指します。事例としては、以下のようなものがあります。
事例
- 未公表の論文を盗用する
- 学生等が出したアイデアを無断で使用する
- 加筆修正しただけなのに、指導教員が第一著者になる
- 研究を中心に立って進めたものを第一著者にしない
- 研究に関わっていないのに、共著者に名前を載せることを強要する
- 第一著者になるべき人に、第一著者にならないと念書を書かせる
- 著者の名前の順番を指導教員が決める
- 学生等の未公開論文を勝手に投稿する
- 自分の名前で進めている研究を、学生等に徹夜で仕上げさせる
⑦暴言、過度の叱責
本人がその場に居るか否かにかかわらず、学生や部下を傷つけるネガティブな言動を行うことを指します。事例としては、以下のようなものがあります。
事例
- 執筆した論文を破り捨てたり、ゴミ箱に捨てたりする
- あえて人前で怒鳴りつけたり、些細なミスを大声で叱責したりする
- 論文の内容を馬鹿にする
- 「馬鹿」「死ね」などの暴言を吐く
- 暴力を振るう
- 無視する
- 「学生にわかるわけがない」などの、学生一般を軽視する発言
2015年には東京芸術大学では、学生が飲み会を断ったことを他の学生の前で激しく非難したとして教授が1ヶ月の停職になる事件が起こっています。
⑧不適切な環境下での指導の強制
研究に不必要な時間を消費させたり、不適切な場所で指導をしたりすることを指します。事例としては、以下のようなものがあります。
事例
- 不必要な深夜実験や、休日の実験を強要する
- 深夜に研究のことで電話をかける
- 他研究室と比べて、異常に拘束時間が長い
- 教員の個人的な話に長時間付き合わせる
- 指導の名目でホテルに呼びつける
- 他人の目がないところに呼び出して、指導をする
2007年には、東北大学の助手が教授からパワーハラスメントを受け、長時間労働を強いられ自殺にまで追い込まれました。
たとえアカデミックな分野であっても、上下関係を利用してパワハラをしようとする人がいるのは残念なことです。
⑨権力の濫用
指導教員としての立場を利用して、職権を超えた命令をすることを指します。事例としては、以下のようなものがあります。
パターン①|不当な規則の強制の事例
- 正当な理由なく、アルバイトを禁止する
- 趣味や家庭のことなど、プライベートなことに規則をつくる
- 夏季休暇中も毎日研究室に来ないと留年にする
- 研究を誰かに手伝ってもらうことを禁止する
- 先輩に研究のやり方を教えてもらうことを禁止する
- 自分の研究よりも、教授の手伝いを優先させる
パターン②|不正・不法行為の強要の事例
- 空バイト(教授のもとでアルバイトをしたという架空の書類を学生に作らせ、研究費を不正に引き出そうとする行為)などの金銭的不正行為を強要する
- 研究データの改竄・捏造を強要する
パターン③|その他の権力の乱用の事例
- 気に入らない学生にだけ必要な情報を与えない
- 虚偽の噂を流したり、怪文書を配ったりする
- 不当な勤務評定をする
- 2人だけの食事やドライブなど、親密な関係を強要する
- 送り迎えをさせる
- 教員同士の確執の鬱憤から、相手が指導する学生に不利な扱いをする
⑩プライバシーの侵害
プライベートを必要以上に知ろうとしたり、プライベートなことに介入しようとしたりすることを指します。事例としては、以下のようなものがあります。
事例
- プライベートな事柄をしつこく聞き出す
- プライベートな事柄に勝手なアドバイスをする
- プライベートな事柄を周囲に言いふらす
- プライベートの時間に何度も連絡する
⑪他大学の学生、留学生、聴講生、ゲストなどへの排斥行為
正当な手続きを踏んで参加している、他大学の学生、留学生、聴講生、ゲストなどに不当な扱いをすることを指します。事例としては、以下のようなものがあります。
事例
- 外部の人間は、研究室や教室から出ていくように言う
- 授業中、外部の人間には発言をさせない
- 外部の人間に対して、差別的な発言をする
- 外部の人間は、授業に参加しないように伝える
アカハラ被害を受けたときの解決方法
アカハラに該当する行為をされた場合は、適切なところに相談・報告しましょう。ここでは、アカハラを受けたときに取るべき行動について解説します。
①大学の相談窓口を利用する
各大学には、アカハラを相談する窓口が存在します。
例えば国立大学だと、一般社団法人国立大学協会 国立大学のハラスメント相談窓口が設けられています。こちらのリンクから飛べば、各大学の相談窓口のホームページが見られます。
私立大学には全国統一のプラットフォーム等はありませんが、各大学にハラスメント対策委員会や防止委員会があるはずなので、そちらのホームページを尋ねてみてください。
②学外の民間相談機関を利用する
自分の大学の相談窓口が見つからなかった場合や、学内の窓口を利用することに抵抗がある場合は、学外の民間相談機関を尋ねましょう。
特定非営利活動法人アカデミック・ハラスメントをなくすネットワークNAAHは、アカハラの相談に応じてくれます。以下に連絡先を記載しています。
メールは携帯キャリアではなく、パソコンから送るようにしてください。また、電話の受付時間は以下の通りです。
- 【月〜金】9:00〜18:00
- 【土】9:00〜13:00
この他にも、ホームページの相談受付フォームからメッセージを送ることもできます。また、匿名での投書も可能です。
③病院にかかる
アカハラで精神的不調をきたしている場合は、病院に行きましょう。理不尽な扱いを長期間受けている場合、単なる気分の落ち込みではなく、適応障害やうつ病に進展している可能性があります。
精神的な不調は、主に病院の精神科や精神神経科で診てもらえます。その他、メンタルヘルス科、メンタルクリニックなどの表記を掲げる医療機関でも受診できます。
いきなり病院に行くのが怖いときは、大学の保健管理センターに行きましょう。精神科の医師が診察に来ていることがあります。治療が必要であれば、適切な医療機関への紹介状を出してもらえるはずです。
④法的手段に訴える
アカハラで重大な被害を被った場合は、裁判を起こす方法もあります。アカハラ被害者による裁判の例はいくつかあり、損害賠償請求が認められた事例もあります。
高等教育局大学振興課説明資料によると、平成2003年の裁判では、他人の名誉を傷つける発言をした教員が起訴されています。教員はセクハラ発言で複数の学生の心情を傷つけ、その他、修学上の不利益な扱いを重ねました。この裁判では、損害賠償請求が認められています。
アカハラをした教員が許せない場合や、不利益を被ったことに対する補償が必要な場合は、一度弁護士に相談してみるのも良いでしょう。
まとめ
この記事では、アカハラについて解説しました。
アカハラは意外と身近に潜んでいます。気づいていないだけで、あなたもアカハラを受けているかもしれません。
本記事でご紹介した事例に当てはまることが周囲で起きていないか、確認してみてください。もし発生していたら、ひとりで悩まず相談機関を頼りましょう。