大学院とは、大学時代に学んだことを生かして、より専門的かつ応用的な研究を行う学術機関をさします。大学院に行くには文系・理系共に入試があり、当然学費もかかります。そして現在は、大学院にも様々な形態があります。そこで今回は、大学院とは何か、進学するメリット・デメリットを解説します。
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この記事の監修者
キャリアカウンセラー|秋田 拓也
厚生労働省のキャリア形成事業にキャリアコンサルタントとして参画。
大手警備会社にて人事採用担当として7年間従事の後、現職にて延べ200名以上の企業内労働者へキャリアコンサルティングを実施。
■所持資格
国家資格キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
大学院への進学率は約10%
文部科学省が発表した「学校基本調査の結果(平成30年度)」によると、大学卒業後に大学院に進学率する割合は約10%でした。
この年の修士課程への入学者は男子5万1,606人、女子2万2,485人の計7万4,091人で、前年より650人増えたといいます。そのうち大学卒業者が占める割合は49.1%で、3万6,412人でした。主な進学理由は文系・理系問わず、専門知識の習得のようです。
大学(学部)と大学院の違い
「大学院は大学の後にいくもの」ということはわかりつつも、大学と大学院の違いを正確に把握できていないかもしれません。まずは、両者の違いを理解しておきましょう。
履修計画が違う
大学と大学院では履修計画が異なります。大学では単位の取得数や履修計画が細かく決められており、カリキュラム通りに履修していかなければ留年の可能性もあります。
一方、大学院は自由度が高く、必修や必要単位数が学部時代よりも大幅に減少します。「学びたい」意欲のある人が大学院に進むとみなされているので、より本人の裁量が大きくなっているからです。
授業形式が違う
大学と大学院では授業の形式が異なります。大学の授業は講義形式のものが多数です。教授の説明を聞き、試験をクリアするのがもっとも一般的だと言えます。
大学院では講義形式の授業が格段に減ります。ゼミ形式の授業が増え、自主性がより求められます。フィールドワークなども大学院の授業では積極的に取り入れられています。
目的が違う
大学と大学院では求められることも違います。大学は基礎的な教養を広く学生に与え、知的応用能力を育む場とされています。実際には就職のための足掛かりになっている部分も大きく、専攻分野を入門程度で終えてしまう学生も少なくありません。
一方、大学院は「研究機関」として、自身の研究や専門性を深めたい人が進学するものです。大学院では、大学のように「なんとなく過ごしていても単位が取れる」ということはありません。論文に終われ、研究の成果を徹底的に追求してく必要があります。
大学院は4種類に分けられる
近年は社会人の大学院入学が増えていることもあり、市場のニーズに合わせて色々な学修スタイルが登場しています。ここでは、4種類の大学院の特徴と実例を紹介します。
①学部を設置している大学院
学部を設置している大学院とは、もともと大学として設立され、配置した学部に応じた大学院をつくったものをいいます。具体例として、以下の大学院があげられます。
- 東京大学大学院
- 京都大学大学院
- 慶應義塾大学大学院
- 早稲田大学大学院
②独立研究科
大学院の独立研究科とは、大学の学部に基礎を置かずに設置されたものをさします。大学院での位置づけは、大学の学部と同様です。具体例としては、以下の大学院があげられます。
- 東京大学大学院新領域創成科学研究科
- 京都大学大学院情報学研究科
- 立命館大学大学院先端総合学術研究科
③大学院大学
大学院大学とは、大学をもたない大学院を意味します。そのため、最新の研究を行っているところが多く、幅広い学部・学科の卒業生を受け入れる傾向があります。具体例として、以下の大学院があります。
- 奈良先端科学技術大学院大学
- 北陸先端科学技術大学院大学
④専門職大学院
専門職大学院とは、 高度かつ専門的な職業能力を持った実務家を養成するために設置されたもので、ジャンルが多岐にわたります。具体例として、以下の大学院があります。
- 一橋大学大学院経営管理研究科国際企業戦略専攻
- 東京工業大学大学院環境・社会理工学院技術経営専門職学位課程
- 長岡技術科学大学大学院技術経営研究科システム安全専攻
大学院に関する3つの知識
大学院に進学するためには、学士の学位が必要です。そして学位を取得するためには通常、4年制の大学または専門学校を卒業しなければなりません。また、進学する課程や文系・理系によっても違いがあります。
ここでは、大学院に関する知識について説明します。
修士課程と博士課程とは何か
大学に学部を持っている大学院は、2つの課程を設置しており、その目的が異なります。ここでは、修士課程と博士課程の違いを説明します。
修士課程|2年間で修了する
修士課程とは修業年限が2年で修了すると「修士」の学位が取得でき、「博士前期課程」というのが正式名称です。設置の目的は、以下の2つです。
- 広い視野に立ち、より詳しく深みのある知識を授ける
- 専門分野の研究スキルを磨き、それを生かせる職場で力を発揮できる人材を育成する
修了するためには、修士論文の審査に合格しなければなりません。
博士課程|修士課程を含めて5年間で修了する
博士課程とは、修士課程修了者がさらに研究を深めるために進学するところです。修業年限は5年で、それを博士課程前期2年と博士課程後期3年に分ける「区分性博士課程」と、分けずに学修する「一貫性博士課程」に大別されます。
前述した通り、博士課程前期は修士課程のことです。そして博士課程後期では単位取得だけでなく、論文の作成が学修の主軸となります。論文が認められれば博士号を取得できますが、かなりの難関なので単位取得のみで退学する人も珍しくありません。
理系と文系の大学院で違いはあるか
大学から大学院に進学する人の大半は、理系学生です。大学院では学修を深めるために研究を行いますが、理系と文系では違いもあるようです。
ここでは、大学院における理系と文系の違いについて説明します。
理系|就職に強い反面、研究の幅が狭い
理系の大学院進学者は、大学で学んだ分野の専門性を深め、研究するために進学しています。そして、研究分野に直結する就職を果たす人がほとんどです。
所属する研究室によっては、自ら積極的に就活をしなくても、教授から企業への推薦枠をもらって、早々に内定を得られるケースも少なくありません。
このように理系の大学院生は就職に強い点はメリットですが、2年間で研究できる幅は狭いというデメリットもあります。
文系|研究の自由度が高い反面、就職先は限られる
文系の大学院の場合、大学の学部か進学するより、社会人入学の割合が高いといわれています。それは、税理士試験や司法試験などの受験に備えて、働きながら通学する院生もいるからです。
文系の大学院は理系ほど専門分野が特化されていないので、研究の自由度が高い点はメリットです。しかし研究職として就職するのは狭き門なので、就職先は限定されがちなところはデメリットといえます。
大学院に進学するメリットとデメリット
大学時代に研究したいテーマを見つけた学生の中には、就職するより大学院に進学したいと考える人もいることでしょう。しかし、大学進学が必ずしもベストな選択とはいえないケースもあります。
ここでは、大学院に進学するメリットとデメリットについて考察します。
大学院に進学して学ぶ6つのメリット
大学院進学には、大学生活とは違うメリットがたくさんあります。ここでは、大学院に進学して学ぶ6つのメリットを、具体的に紹介します。
①専門性を修得できる
大学院では、大学の学部で学んできたこととは違う、専門的な学修・研究をすることができます。より高度な知識を得たうえで、自分の研究テーマについて考えを深めることが可能です。
高い専門性を修得することが、その後の就職に役立つことも多いです。
②学会の活動で人脈が圧倒的に広がる
大学院生になると、学会に参加する機会が圧倒的に増えます。教授にお供するだけでなく、研究室の共同研究に携わることで、ポスター発表などの機会を得ることも少なくありません。
そうした学会活動を行うことで、業界内に人脈が広がります。それが、社会に出てから生かされることも多いといいます。
③英語力・プレゼン力・論理的思考力が向上する
学会は、海外でも行われます。そのため大学院生時代に、英語で論文を書いてプレゼンテーションする人も珍しくありません。
研究を通して論理的思考力が、論文執筆や発表により英語力やプレゼン力が自然に向上していきます。
④卒業後の選択肢が広がる
大学院での学びを通して高度な専門知識を身につけるだけでなく、社会人に不可欠な論理的思考力やプレゼン力がアップすると、就職の選択肢が広がります。
有名企業の研究職を目指す人は特に、就活でアドバンテージをとりやすくなるはずです。
⑤卒業後の初任給が高くなる
厚生労働省が発表した「令和元年賃金構造基本統計調査の結果」によると、大学院卒と大学卒の初任給は以下の通りでした。
- 大学院修士課程修了者の初任給平均:23万8,900円
- 大学卒者の初任給平均:21万200円
つまり就職した時点で、すでに2万8,700円の差があります。そしてこの差は、賞与支給時にはもっと開くのが一般的です。
⑥自分の関心分野の研究に没頭できる
大学院では、自分が関心をもっている分野の研究に没頭することができます。仮説をたてて調査や実験を行い、検証する過程で、望む結果が得られるとは限りません。
しかし、寝食を忘れるほど研究に没頭できる時間があることは、とても貴重です。失敗も含めて、得られることが多いことでしょう。
大学院に進学して学ぶ3つのデメリット
志をもって大学院に進学するのはよいことですが、何となく進もうとしているならデメリットについても考えておく必要があります。ここでは、大学院に進学して学ぶ3つのデメリットについて考察します。
①社会人の同期と比べると焦る
大学院を卒業して就職した頃には、大学の同期生は3年目を迎え、仕事のスキルが格段にアップしているものです。
待遇面では自分の方が上でも、日々の業務は先に就職した同期の方ができるため、焦ったり落ち込んだりする人も珍しくありません。それで自信をなくす人もいるので、注意が必要です。
②学費がかかる
大学院に進学するためには、もちろん学費がかかります。大学院の学費例を、文系・理系共に紹介しておきましょう。
- 一橋大学大学院経営管理研究科国際企業戦略専攻(文系):入学金28万2,000円(初年度のみ)、53万5800円 合計81万7,800円
- 早稲田大学大学院教育学研究科高度教職実践専攻(文系):入学金20万円(初年度のみ)、119万円 合計139万円
- 東京大学大学院新領域創成科学研究科(理系):入学金28万2,000円(初年度のみ)、53万5800円 合計81万7,800円
- 慶應大学大学院理工学研究科(理系):在籍基本料6万円、103万円 合計109万円
上記金額は入学金と授業料のみで、施設使用料といったその他の費用は含まれていません。2年分の学費を考えると、決して安いとはいえないでしょう。
③研究に多大な時間を費やす覚悟が必要
大学院では単位取得より、自分の研究のための調査・実験を行い、修士論文を書く方が大変です。また一度の調査や実験で論文が書けるだけのデータが集まる保証もなく、研究にたくさんの時間を費やす覚悟が必要といえます。
学生時代のようにサークルやアルバイトを楽しむ余裕がない院生が多いことも、心に留めておきましょう。
大学院に進学して後悔する人の特徴
大学院生の中には、進学したことを後悔している人がいるのも現実です。そうした事態に陥らないためには、自分の進学目的をきちんと見極めることが大切でしょう。
ここでは、大学院に進学して後悔する人に共通する特徴について説明します。
①目的がなくとりあえず進学した
大学院生の中には、就活で目標としていた企業に入社できなかった、あるいはまだ社会に出たくないなどの理由で進学した人もいます。しかし、大学院では研究がメインですので、目的がなく進学しても成果につなげるのが難しいのが現実です。
就職浪人するくらいなら、大学院に進学しようと考える人も珍しくありません。しかしその結果、将来の就活で再び苦労する人もいます。以下の記事では、就活に失敗し大学院に進学することの是非について解説しています。きっと参考になるはずです。
②研究が苦手だという自覚がない
大学時代も専門課程に進めば、研究に費やす時間はあったはずです。しかし大学院生の研究は、比較できないほど長時間に及びます。そういう状況に置かれて、初めて研究が苦手だと自覚する人が少なからずいます。
研究が苦手だと修士論文に必要なデータを集めるのもままならず、卒業が危うくなる可能性が高まります。
③人間関係の構築が苦手
大学院生活は、大半を所属する研究室で過ごすことになります。研究を行うためには当然のことですが、自ずと人間関係が閉鎖的になりがちです。そして、教授や研究室の他のメンバーとうまくやれないと、居心地が悪くなります。
人間関係の構築が苦手だと、研究室内で孤立してしまい、研究に支障をきたすこともあることを覚えておく必要があります。
大学院には4つの入試形式がある
大学院入試には4つの種類があり、試験内容に合わせた準備が不可欠です。ここでは、4種類の大学院入試の特徴について説明します。
①一般入試
大学あるいは4年制の専門学校を卒業見込みの人、または大学既卒者が選択できる受験方法です。一般的には専門科目と外国語の筆記試験、成績書類、面接で専攻します。
筆記試験対策には過去の試験問題集が役立ちますので、複数年分を用意することをおすすめします。
②推薦入試
大学の学部生が同じ系列の大学院に進学する場合には、推薦入試を利用することが多いです。成績優秀者が選ばれることが多く、面接のみで選考するところもあります。
学外の学部生であっても、要件を満たすことで推薦入試が受けられる大学院もありますので、志望校の公式サイトなどで確認してみましょう。
③AO入試
AO入試とは、大学院が求める学生増と応募者の人物像がマッチしているかによって、合否を決める受験方法です。近年は大学院でも、取り入れるところが増えています。
選考は書類審査と面接で行われるのが、一般的です。
④社会人入試
社会人入試とは、一度大学を卒業して就職した経験のある人を対象に行うものです。そのため、試験内容は大学によって異なり、筆記試験がないケースもあるようです。
しかし、研究計画書の提出を求めることが多く、熱意や人物も選考のポイントとなるようです。
大学院に行くにはどうすればいいか
大学院にも様々な種類があり、筆記試験が義務付けられているところも少なくありません。そのため、自分の進学時期を見極めて準備をする必要があります。
ここでは、大学院に行くにはどうすればいいかについて説明します。
①出願時期を抑える
試験日程も12月から3月と幅があるので、出願時期を抑えて、試験対策以外もきちんと準備をしておくことが大切です。
また大学院を受験する際には、入学願書や卒業(見込み)証明書、志望理由書に加え、研究計画書を提出しなければなりません。研究計画書とは研究したいテーマや目的、成果、研究方法などを記載するもので、合否に大きく影響します。
②所属大学の系列大学院なら成績次第でそのまま進学できる
自分が所属している大学の系列大学院に進学する場合は、成績に問題なければ推薦入試などでそのまま進学できるのが一般的です。
ただし、専攻したい研究室に関わる講義を取得していないことで、不合格になるケースもあるようです。そうした事態に陥らないためにも、大学の講義を選択する際に配慮しておきましょう。
まとめ
今回は、大学院とは何か、進学するメリット・デメリットを解説しました。
大学で研究したいテーマを見つけた人にとっては、大学院生活は充実したものになるでしょう。しかし学費が必要なうえ、研究や論文執筆に追われることを考えると、安易な気持ちで進学するのはおすすめできません。なぜ大学院に進学したいのか、なぜ研究を続けたいのかを明確に語れるかどうか、自分なりに考えてみることをおすすめします。