大学・短大・専門学校に進学するにあたり、日本学生支援機構奨学金を利用する人は数多いです。そして貸与型奨学金を利用する場合には保証をつけるよう義務付けられており、連帯保証人が必要となるケースもあります。そこで今回は、奨学金の連帯保証人と保証人の違いやリスクについて解説します。
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この記事の監修者
キャリアカウンセラー|秋田 拓也
厚生労働省のキャリア形成事業にキャリアコンサルタントとして参画。
大手警備会社にて人事採用担当として7年間従事の後、現職にて延べ200名以上の企業内労働者へキャリアコンサルティングを実施。
■所持資格
国家資格キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
貸与型奨学金の保証制度
2019年3月に日本学生支援機構が発表したデータによると、高等教育機関で学ぶ学生総数の約37.2%である129万人が、日本学生支援機構奨学金を利用しています。そして貸与型奨学金を利用する場合は、保証をつけなければなりません。
ここでは貸与型奨学金の保障制度について、説明します。
機関保証
日本学生支援機構の貸与型奨学金を受けるにあたり、保証機関が連帯保証してくれる制度が「機関保証」です。機関保証を選択した場合、毎月給付される奨学金の中から、一定の保証料を支払います。機関保証にすると、連帯保証人や保証人を用意する必要はありません。
奨学金の返済義務を負う返還者が返済を延滞した場合、保証機関が残額を一括返済します。しかし返還者の債務が消えるわけではなく、その後、保証機関から返済を求められます。
人的保証
日本学生支援機構の貸与型奨学金を受けるにあたり、連帯保証人1名並びに保証人1名による保証を受けるのが「人的保証」です。その際、連帯保証人並びに保証人に対して、一定の条件が求められます。
もし将来、奨学金の返済義務を負う返還者が返済を延滞した場合は連帯保証人もしくは保証人が代わって返還する義務を負います。詳細については、次章で説明します。
人的保証制度とは
日本学生支援機構奨学金を申し込む際には、人的保証か機関保証かを決めなければなりません。これまでは人的保証制度を選択するのが一般的でした。
ここでは日本学生支援機構における、人的保証制度について説明します。
目的|回収を確実にするため
国が実施している日本学生支援機構奨学金は、経済的事情で高等教育機関への進学を断念することがないよう、学びたい学生本人に対し貸与されるものです。そして返還されるお金は、次世代の学生に支給されます。
そのため、貸与した奨学金を確実に回収しなければなりません。しかし、高等教育機関卒業後に奨学金の返還ができない人がいるのも現実です。貸し倒れをなくすために、人定保障制度が設けられています。
連帯保証人と保証人の両方を選任する
日本学生支援機構の貸与型奨学金を申し込む際には、連帯保証人と保証人を1名ずつ選任しなければなりません。
ここでは、連帯保証人と保証人の違いについて説明します。
連帯保証人の定義
連帯保証人は、借主本人と同等の義務を負います。そのため、日本学生支援機構奨学金を利用した学生本人が返還できなかった場合、連帯保証人が全額返済しなければなりません。そのため日本学生支援機構では、連帯保証人の条件を以下のように課しています。
- 連帯保証人の原則は父母
- 貸与型奨学金を受ける本人が未成年の場合は、親権者もしくは未成年後見人
- 貸与型奨学金を受ける本人が成年の場合は、父母もしくは4親等以内の親族
保証人の定義
保証人は、借主本人が返済できないなど、一定の条件が揃った際に肩代わりする義務を負いますが、以下の権利を認められています。
- 催告の抗弁権
- 検索の抗弁権
- 分別の利益
3つの権利については後述しますが、連帯保証人より責任は軽いです。日本学生支援機構では、保証人の条件に以下をあげています。
- 父母以外の者
- 学生及び連帯保証人と生計が別の者
- 連帯保証人の配偶者並びに婚約者ではない者
- 4親等以内の親族
- 貸与型奨学金採用時に65歳未満の者
奨学金の連帯保証人に関する疑問
日本学生支援機構の貸与型奨学金に申し込む際には、連帯保証人も必要書類を提出しなければなりません。また、奨学金の返還が終了しない段階で、連帯保証人が亡くなるなど、変更を余儀なくされるケースもあります。
ここでは、奨学金の連帯保証人に関する疑問について説明します。
連帯保証人が必要な書類
日本学生支援機構では貸与型奨学金を申し込む際、返還誓約書の提出を求めています。その際、連帯保証人は指定された書類を同時に提出しなければなりません。連帯保証人が用意しなけばならない書類は、以下の通りです。
- 保証委託契約書(兼保証依頼書)
- 連帯保証人の収入に関する証明書類
- 連帯保証人の印鑑登録証明書
詳細については、日本学生支援機構の公式サイト「よくある質問」で確認してください。
連帯保証人を変更したい場合
奨学金の連帯保証人が死亡する、あるいは債務整理を行うなどの事情で、変更を余儀なくされることがあります。その場合には、速やかに届け出するのが原則です。
日本学生支援機構の資料「『連帯保証人変更届』・『保証人変更届』について」によると、高等教育機関に在籍しているか否かで、手続き方法が異なります。
- 高等教育機関に在籍している場合は学校の担当者に連絡し、書類を受け取り記入したうえで学校に提出する
- すでに卒業している場合は、インターネット(スカラシップ)または電話で問い合わせのうえ、必要書類を受け取り提出する
手続きの際には、「連帯保証人・保証人等変更届」と新たな連帯保証人の印鑑登録証明書・収入に関する証明書類の提出が必要です。
連帯保証人が死亡し、他に選任できない場合
連帯保証人が死亡した奨学生の中には、新たに連帯保証人を専任できない人もいます。その場合は、機関保証に切り替える必要があります。
高等教育機関に在籍している場合は学校に申し出る、卒業している際は自ら日本学生支援機構に問い合わせをして、変更手続きを行わなければなりません。
機関保証に切り替える際には、遡って保証料を請求されますので、申込時に金額を確認することをおすすめします。
連帯保証人になく保証人にだけ認められる権利
日本学生支援機構の貸与型奨学金に限らず、連帯保証人にはなく、保証人にだけ認められている権利が3つあります。
ここでは、保証人の3つの権利について説明します。
催告の抗弁権
民法第452条には、「催告の抗弁権」について記載されています。
債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない
もし、日本学生支援機構から保証人のところに返還請求がきたとしても、まず奨学金を借りた本人に返還を請求するよう求めることができます。ただし奨学金を借りた本人が自己破産した、あるいは行方不明である場合は、催告の抗弁権は行使できません。
検索の抗弁権
民法第453条には、「検索の抗弁権」について記載されています。
債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない
奨学金を借りた本人が資産を持っているにも関わらず、返還せずに保証人に請求がきた際に、まず借主本人の資産を強制執行するよう主張することができます。しかしそのためには、借主本人に資産があり強制執行できることを、保証人が証明しなければなりません。
分別の利益
民法第456条には、「分別の利益」について記載されています。
数人の保証人がある場合には、それらの保証人が各別の行為により債務を負担したときであっても、第427条の規定を適用する。
「分別の利益」では、複数の保証人がいる場合には返済金額をその人数で割った額が上限となると定めています。日本学生支援機構の貸与型奨学金には、連帯保証人が1名ついているため、保証人は貸与総額の1/2しか返還義務を負いません。
求償権
民法第465条には、「共同保証人間の求償権」について記載されています。
1 第442条から第444条までの規定は、数人の保証人がある場合において、そのうちの一人の保証人が、主たる債務が不可分であるため又は各保証人が全額を弁済すべき旨の特約があるため、その全額又は自己の負担部分を超える額を弁済したときについて準用する。
2 第462条の規定は、前項に規定する場合を除き、互いに連帯しない保証人の一人が全額又は自己の負担部分を超える額を弁済したときについて準用する。
求償権とは、他人の債務を肩代わりした際に、債務者に請求できる権利のことです。日本学生支援機構から奨学金を、保証人が「分別の利益」を申し出ずに全額支払った場合、保証人は奨学金の借主並びに連帯保証人に対し、返還を求めることができます。
奨学金の連帯保証人になるリスク
父母が我が子のために連帯保証人になるのはやむを得ない面もありますが、日本学生支援機構の貸与型奨学金であっても連帯保証人になるリスクがあるのは事実です。
ここでは、連帯保証人になるリスクについて説明します。
本人が返還できない場合、まず連帯保証人が返還義務を負う
日本学生支援機構の貸与型奨学金は、学生本人が借主となります。しかし貸与された金額や年数によっては、返還金額が1,000万円を超えるケースも珍しくありません。
そして借主本人が延滞する、あるいは返還不能に陥った場合、まず連帯保証人のところに請求がきます。そして連帯保証人は、その債務から逃れることはできません。そのリスクを、十分に考慮しておく必要があります。
保証人は半額だが、連帯保証人は全額
前述したように、保証人は「分別の利益」を申し出ることで、日本学生支援機構の貸与型奨学金における返還金額の1/2の支払いで済ませることが可能です。
しかし連帯保証人には保証人のような権利がないので、日本学生支援機構が求める金額を、全額返還しなければなりません。
延滞金が雪だるま式に積もり、共倒れする
2018年2月12日付の朝日新聞に「奨学金800万円重荷『父さんごめん』親子で自己破産」という記事が掲載されました。日本学生支援機構の貸与奨学金を受けて私立大学に通ったものの、卒業後に借主本人が返還できずに自己破産し、連帯保証人である父に請求がきたというものです。
日本学生支援機構の貸与型奨学金も、他の債務と同じように遅延すると延滞金がつきます。延滞金の利息は年5%となっており、それが雪だるま式に膨らんでいくのです。
そのため、息子に代わって返還しようとしたものの、父も結果的に自己破産の道を選んだという記事でした。このようなケースは、今後も起こることが予想されます。
連帯保証をさけるためには機関保証を利用する
日本学生支援機構の貸与型奨学金の保証制度には、人的保証だけでなく機関保証もあります。しかし日本学生支援機構の公式サイトにある「2019年度採用者の保証料の目安(歳に種奨学金・大学院以外」を見ると、月々の保証料が安くないことがわかります。
しかしながら、日本学生支援機構奨学金の連帯保証人になるのを避けたいのであれば、機関保証を勧め、保証料分を実費でわたすと申し出るのも選択肢の一つです。その場合は、借主本人が自己破産することになっても、迷惑をこうむることはありません。検討してみてください。
奨学金制度の連帯保証に関する出来事
近年は、日本学生支援機構奨学金の保証制度について、見直しが始まっています。その背景には、日本学生支援機構の回収手法が問題視されていることがあるようです。
ここでは、奨学金制度の連帯保証に関するニュースを取り上げて説明します。
半額ではなく全額請求していた
2018年11月1日に朝日新聞に「奨学金、保証人の義務「半額」なのに…説明せず全額請求」という記事が掲載されました。前述したように、保証人は「分別の利益」を申し出ることで、返還金額を半額にすることができます。しかし日本学生支援機構がそれを説明せず、全額を回収していた事実が明るみに出ました。
ここで問題視されたのは、その事実を告げなかったことより、返還に応じなければ法的措置を取ると明言し、裁判で全額回収をしていたことです。
民法の見直しもあり、法知識のない保証人に対し、分別の利益を説明せずに全額回収するのは妥当ではなく、公的機関としての姿勢が疑問視されました。
保証人制度の廃止を検討
2019年1月9日に朝日新聞に「国の奨学金、保証人の廃止を検討 返還できない家庭増え」という記事が掲載され、注目を集めています。これは文部科学省と財務省が、日本学生支援機構の人的保証制度をなくすことを検討していることを伝えた記事です。
その背景には、借主が返還不能になった場合に連帯保証人や保証人にかかる負担が大きいだけでなく、自己破産により回収不能となっているケースが増加したことが関係しているようです。
まとめ
今回は日本学生支援機構の貸与型奨学金における人的保証制度を中心に、連帯保証人と保証人の違いや義務、引き受けるリスクについて説明しました。経済的理由で進学を断念する必要はありませんが、奨学金の利用については慎重な判断が求められます。連帯保証人になるリスクも踏まえて、依頼あるいは引き受けるかを検討しましょう。