内定が取り消しになる理由は、学生と企業どちらにもあります。学生側は、内定承諾書のルールに反すると取り消される可能性がありますし、企業も一方的に内定取消しを断行することはできません。今回は、学生と企業側の双方から、内定取り消しの理由・原因を探っていきましょう。
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この記事の監修者
キャリアカウンセラー|秋田 拓也
厚生労働省のキャリア形成事業にキャリアコンサルタントとして参画。
大手警備会社にて人事採用担当として7年間従事の後、現職にて延べ200名以上の企業内労働者へキャリアコンサルティングを実施。
■所持資格
国家資格キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
内定とは何か
内定の取り消しについて理解するには、まず「内定とは何か」ということから把握していきましょう。ここでは、「内々定との違い」と「内定取り消しの意味」を解説しています。
内々定との違い
内定とは、企業が学生に対して「採用内定通知書」を送り、お互いがその内容に合意することです。この時点で、労働契約が成立したとみなされます。
一方、内々定とは、「採用内定通知書」なしに口約束で内定を伝えることです。採用を通知する予定を伝えるに過ぎず、内々定は労働契約にはあたりません。
労働契約が成立する内定は法的拘束力を持つため、条件によっては内定の取り消しが認められないケースもあります。
内定取り消しは解雇と同じ意味を持つ
内定取り消しは解雇と同じ意味を持ち、基本的に企業からの一方的な取り消しはできません。内定とは、「始期付解約権留保付」という労働契約にあたるため、労働者を一方的に解雇できないのと同じように、内定の一方的な取り消しも不可です。
ただし、取り消しに至る正当な理由があったり、条件によっては内定が取り消されてしまうこともあります。
内定取り消しは企業にもデメリットがある
内定取り消しには、企業にも次のようなデメリットがあります。
- ①社会的なイメージダウンに繋がる
- ②訴訟リスクを抱える
このように、内定を取り消すのは企業側にもリスクがあるため、基本的には安易に取り消しを迫られることは少ないといえます。
ちなみに、内々定は労働契約にあたらないので、学生・企業どちらも自由に取り消すことが可能ですが、内々定の取り消しも上記のデメリットに該当することがあるため、基本的に取り消されることは少ないと考えてよいでしょう。
①社会的なイメージダウンに繋がる
内定を取り消すことで、企業は社会的なイメージダウンに繋がるというデメリットがあります。
内定を取り消して学生が納得すれば良いですが、内容に不服があり、それが裁判に至るケースもあります。裁判の内容は報道されることが多く、それがイメージダウンへと繋がります。
また、最近では企業の口コミサイトも増えました。そのため、内定を取り消された学生のネット書き込みによりイメージが悪化する可能性もあります。
②訴訟リスクを抱える
内定を取り消すことで訴訟リスクを抱えることにもなりかねません。内定は労働契約にあたるため、学生側から不当な取り消し理由と訴えがあれば、裁判によって争う可能性があります。
その結果、企業のイメージダウンはもちろん、賠償金や仮払い賃金の支払いなど、金銭的な負担も大きなデメリットです。
事実、過去には「インフォミックス事件」や「大日本印刷事件」などで、企業側が大きな損失を被ることになりました。
内定取り消しになる原因
内定の取り消しは、企業の一方的な独断によって行われることもありますが、そのほとんどのケースで「学生側に原因がある」ことが分かっています。
企業が学生に「採用内定通知書」を送り、学生が内容に同意すれば「内定承諾書」を取り交わします。この内定承諾書には、万が一の内定取り消し事由が明記されており、学生がこのルールを破るケースが多いのです。
- 原因①学生が単位が取得できずに卒業できなかった
- 原因②学生が期日までに必要書類を提出しなかった
- 原因③学生が入社までに企業の機密情報をSNSなどで公開した
- 原因④学生の経歴詐称・虚偽の申請
- 原因⑤学生が事件を起こした・法に抵触する行動があった
上記の内容が内定取り消しの一般的なケースです。卒業できなければ就職できないのは当たり前ですが、内定承諾書の内容にも注意しておく必要があるでしょう。
以下の記事では、内定取り消しの理由についてより詳しく解説しています。内定取り消しの理由が分からないままでは対策を立てることもできないため、必ず内容をチェックしておくようにしてください。
印象や性格を理由に内定取り消しはできない
内定は法的拘束力を持つ契約でもあるため、取り消しには正当な理由が必要です。仮に、学生に対して企業が印象や性格を理由に内定を取り消そうと思っても、法的に不可能となります。
たとえば、「なんとなく暗い」などの理由は根拠がないため、正当な理由とはいえません。ほかにも、「良い学生がほかにいたから取り消し」という理由も、企業の一方的な自由であることから認められません。
企業側の都合で内定取り消しをするのに満たすべき要件
内定の取り消しを巡って争われた裁判の過去の判例では、内定取り消しの理由は、「内定を出した時点で知ることができないこと」「その事実から客観的で合理的な内定理由であること」という条件があります。
このような観点から、企業側の都合で内定を取り消すには、次の4つの要件が必要になるでしょう(あくまで内定を取り消せる「可能性がある」点にだけ注意)。
①人員削減の必要性
不況や企業の経営不振などの理由により、人員削減の必要性が生じた場合、内定を取り消せる可能性があります。
内定を取り消す場合、厚生労働省の「労働契約の終了に関するルール:3.整理解雇」に従うことが必要です。現在の雇用情勢は、正社員ですら雇用調整の対象になるという観点から、人員削減で内定を取り消すことも認められる可能性があるでしょう。
ただし、内定を出した時点ですでに人員削減の必要性が発生していた場合は、これは認められません。
②解雇回避の努力
整理解雇に則った内定の取り消しを行うには、解雇回避の努力を行わなければなりません。
- 希望転職者の募集
- 労働時間の短縮
- 一時帰休
- 配転 など
業績不振や業務縮小など会社側の事情で整理解雇を行う場合、労働者には責任がないため、できるだけ整理解雇は避けるべきという考え方があります。よって、解雇の必要性が生じたときは、まず次のような手段をとることが必要です。
③人選の合理性
人生の合理性とは、「なぜその労働者が整理解雇されるのか、合理的な理由が必要」ということです。この合理的な理由として、次の3つの基準が設定されています。
- 解雇しても生活への影響の少ない者
- 企業再建、維持のために貢献することの少ない者
- 雇用契約において企業への帰属性の薄い者
内定の取り消しにおいても、上記3つの合理的な理由の基準が適用されます。内定が取り消されることで収入が得られないなど、労働者の負担が大きくなる場合は内定取り消しが認められない可能性もあります。
④解雇手続きの妥当性
企業は人員整理において、労働組合との協約あり・なしにかかわらず、労働者側と整理解雇の必要性とその内容を誠意をもって協議する義務を負います。これが解雇手続きの妥当性です。
内定の取り消しでも、この解雇手続きの妥当性が一つの要件となります。労働者側と十分な協議を行わなかった場合、協約があれば協約違反として無効化されるのです。
内定取り消しになるリスクはどれくらいあるのか
「実際に内定を受け取っても、それが取り消しになる可能性はどれくらいあるのか」、就活生の方にとってみれば大きな問題ですよね。企業側から一方的に取り消されるというケースは少ないので、安心してください。
ただし、学生側に問題があり内定が取り消されることが多いため、以下をよく確認しておきましょう。
内定取り消しの大抵の原因は学生側にある
内定取り消しは、そのほとんどの原因が学生側にあることが多いといえます。単位不足で卒業できない、必要書類を提出しない、経歴をごまかしていたなど、「内定承諾書」に違反するケースが目立ちます。
しかし、学生側がしっかりとルール通りに就活を行っていれば、企業から一方的に内定を取り消されるケースはほとんどありません。これは先に解説した、企業が内定取消しを行うデメリットや、内定取消しのために満たすべき項目などに関係しています。
話し合いで解決することも多い
学生が「内定承諾書」に記載されているルールに違反した場合でも、企業との話し合いで解決することもあります。企業にとっても、時間をかけて採用の判断に至った人材を失うのは、大きな損失となるからです。
たとえば、単位が不足して卒業ができない場合、ごく稀に内定を保持したまま留年を認めてくれる企業などもあります。内定が取り消されたからといって諦めず、誠意をもって交渉することも大切です。
理不尽な内定取り消しも一部存在する
次のように、理不尽な理由で内定を取り消す企業も存在します。
- 内定承諾後に個人の印象や性格といった理由での取り消し
- 過去の出来事など個人のプライバシーを理由にした取り消し
- 長期的な経営不振など企業の一方的な理由での取り消し
中小企業やブラック企業は、このような取り消しを行う可能性があることに注意してください。万が一、理不尽な内定取り消しを受けた場合は、次の章でお伝えする対処法を活用してみてください。
内定が取り消しになった場合の対処法
企業から採用の内定を取り消す旨の連絡を受けた場合「内定が取り消されるようなことは何もしていない」と心当たりがないのであれば、次のような対処法をとりましょう。
- ①文書回答を要求する
- ②大学に相談する
- ③就活エージェントにも相談してみる
- ④弁護士をつけて交渉する
まず、取り消し理由を明確にするため、企業に文書回答を要求します。それと同時に、大学や利用中の就活エージェントにも相談することが大切です。
大学や就活エージェントは、こうした就活でのトラブルの知見やノウハウを持っていることも多く、適切に対処してくれることがあります。弁護士をつけて交渉する方法はお金も時間もかかるため、最終手段にしましょう。
内定の取り消しを受けてどう対処してよいか分からず、精神的に不安定な状態に陥る可能性もあります。このような事態を避けるためにも、以下の記事でしっかりと対処法を理解しておきましょう。
内定取り消し以外に気をつけるべきこと
内定によって企業への入社が確定した後は、内定取り消し以外にも注意すべきポイントがあります。
①入社時期の繰り下げ
内定から入社までの長い期間に、企業が突発的な経営悪化に陥ることもあります。そんなときは、入社時期の繰り下げという形で、入社日がずれることも考えられるでしょう。
しかし、採用内定通知書を受け取っている以上、すでに労働契約を交わしていることになるため、入社時期の繰り下げは「企業の都合による休業」となります。
民法第536条第2項には、「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない」と記載されており、労働者は延期された期間分の賃金を請求することが可能です。
②労働条件の変更
労働条件の変更とは、賃金や賞与の支給額、勤務時間・場所などが変わることです。入社までの間に企業の経営不振が起こり、想定していた初任給が減るなどのケースが考えられます。
労働条件が変更される場合、必ず事前に内定者への通知を行い、その同意を得なければなりません。労働契約はすでに締結されているため、労働者は同意の申し出を拒否することができます。
③内定辞退の強要
内定辞退の強要は「オワハラ(企業が学生に就活を終わらせるよう強要すること)」の一つとされ、「自社の内定をあげるから他社の内々定は断れ」などと脅迫される行為です。
内定辞退の強要に対処するには、そうした申し出があったときに毅然とした態度で断りましょう。そのためにも、事前に志望先の希望順位を整理しておき、オワハラに備えておくことが大切です。
まとめ
内定が取り消しになる理由はさまざまですが、ほとんどの場合は学生側に問題があります。企業から受け取った内定承諾書をしっかりと確認し、ルールに違反しないようにしましょう。
また、企業から一方的に内定が取り消されるケースもあります。その場合、今回お伝えした対処法を活用してみてください。